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偏導関数の表記

\(\displaystyle \frac{\partial f}{\partial x}\) を表す別の書き方のまとめ


いくつかの表記法

テキストによっては,2変数関数 \(z = f(x,y)\) の \(x\)-偏導関数を以下のような記号・表記で表す場合がある。

$$ \frac{\partial z}{\partial x}, \quad \frac{\partial f}{\partial x}, \quad \frac{\partial}{\partial x} f(x, y), \quad f_x(x,y)$$

4つめの表記 \( f_x(x, y) \) もテキストによってはよく使われる。1変数の微分を \( f'(x) \) で書いたように,偏微分も(上下にスペースをとらずに)\(f’ (x, y) \) などと書きたいが,\({}’\) では \(x\) での偏微分か \(y\) での偏微分かわからないので,下添字 \({}_x\) で \(x\) での偏微分ですよ,と表している。

このように,省スペースな \(f_x(x,y)\) という表記であるが,私の授業では以下の理由でこの表記を使わないことにする。

その理由:\(f_x(x,y)\) はベクトル \(\boldsymbol{f} = (f_x, f_y, f_x)\) の\(x\) 成分と混同してしまうでしょ。

一般相対論業界でよく使われている表記法

偏微分を多用する一般相対論業界では,以下のような表記が使われる。

$$ \frac{\partial f}{\partial x} = \partial_x f = f_{,x} $$

これだと,上下にスペースをとる \(\displaystyle \frac{\partial}{\partial x}\) のかわりに1行で省スペースな \(\partial_x\) や,ベクトルの \(x\) 成分と紛らわしい \(f_x\) のかわりに,カンマを先に打って \(x\) 成分ではなく,\(x\) 偏微分だとはっきりする。これだと,たとえばベクトル \(\boldsymbol{E} = (E_x, E_y, E_x)\) の \(x\) 成分である \(E_x\) を \(x\) で偏微分するときにも

$$\frac{\partial E_x}{\partial x} = E_{x,x}$$

と省スペースかつまぎらわしさがない。別に一般相対論を持ち出さなくても,電磁気学などのベクトル解析では,ベクトルの成分の偏微分というのが普通に現れるので,$E_x$ の $x$-偏微分を $E_{xx}$ などと書く方法は破綻するのが明らかであり,偏微分の教科書にしか現れないこの表記法はやめて,一般相対論業界で使われる表記

$$ \frac{\partial E_x}{\partial x} = \partial_x E_x = E_{x, x} $$

をもっと広めるべきである!と思うのですが,どうでしょ?