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常微分方程式

微分方程式とは?微分方程式を解くとは?

次のようなクイズを考える。

ある関数があります。この関数を\(x\)で微分すると,\(\cos x\) になりました。さて,その関数とは一体なんでしょう?

このクイズに答えること,これが微分方程式を解く,ということ。

現実の人生で難しいのは,文章題を解ける形の式にすること。やってみます。

解答例:

求める関数を \(y(x)\) とおく。題意より

\[
\frac{dy}{dx} = \cos x
\]

これが微分方程式。未知関数 \(y \)の1階微分を含むから1階。\(y\) について線形だから(\(y\)の1乗のみを含むから)線形。微分は \(x\) のみについての常微分 \(\frac{d}{dx}\) だから,最終的に1階線形常微分方程式。(「常微分」とは聞きなれない言葉かもしれませんが,今後習うであろう多変数関数の微分である「偏微分」と区別するために使われる用語。)

どうやって解くか

(このような簡単な場合は)両辺を\(x\)で積分します。

\[
\int \frac{dy}{dx} \,dx = \int \cos x\,dx
\]

これはすぐに積分できて,

\[ y = \sin x + C \]

ここで,\(C\)は積分定数。この積分定数を含む解のことを微分方程式の一般解という。

積分定数

積分定数は任意の値をとりうる。(どんな定数の値だって微分したらゼロだから。)この積分定数を一意に決めるのに,初期条件とか境界条件とか言われる条件をつけることができる。

例えば,上の例で,初期条件として \( x = 0\) のときの \(y\) の値が \(y(0) = 0\) であるとすると,\( C = 0\) と決まります。

単に両辺を積分すればよいというものではない

次の微分方程式を解け。

\[ \frac{dy}{dx} = – 2 x\, y \]

悪い例(これだとうまく解けない例):

これも両辺を\(x\)で積分すると…

\[ \int \frac{dy}{dx} \,dx = – 2\int x\,y \, dx \]

左辺は \(y\),右辺は… って未知の(これから求める)関数 \(y\) が入っているので積分できません。つまり,微分方程式は両辺を積分すれば簡単に解ける… というものだけではない,ということ。この微分方程式を解く方法については,以下の「変数分離法」の項を参照のこと。

変数分離法

変数分離形の微分方程式とは,以下のような形の微分方程式。

\[ \frac{dy}{dx} = X(x) \, Y(y) \]

この形の微分方程式は,変数分離法と呼ばれる方法によって解くことができる。

マルサスの人口モデル

微分方程式が出てくる現実世界の一場面:マルサスの人口モデル

人口変化のしかたを明らかにし,将来の変化を予測するモデルを定式化するこ とは実社会において非常に重要な問題である。ここでは,まずマルサスの 「人口論」に書かれたアイデアを紹介する。

ヴェアフルストによる修正人口モデル

微分方程式が出てくる現実世界の一場面:ヴェアフルストによる修正モデル

マルサス・モデルは,\(\gamma > 0\) の場合には人口の際限ない増加を予測する。しかし,実際には食糧資源の供給不足,人口の過密,その他の環境的要因により,このような無制限な増加は続かない。

  • 【参考】 「微分方程式で数学モデルを作ろう バージェス,ボリー著,日本評論社」

 

ヴェアフルストは,人口過密の要因を考慮にいれて,次のような修正を提案した。

1階線形微分方程式と積分因子法

一般的な1階線形微分方程式は,以下のような形。

$$ \frac{dy}{dx} + P(x)\, y = Q(x) $$

定数係数2階線形微分方程式とは

定数係数2階線形「同次」方程式

$$y^{”} + 2 b\, y’ + c\, y = 0$$

定数係数2階線形「非同次」方程式

$$ y^{”} + 2 b\, y’ + c\, y = R(x)$$

最も簡単な定数係数2階微分方程式

最も簡単な定数係数2階線形微分方程式 \(y^{”} + y = 0\) と \(y^{”} -y = 0\) を解く。

最も簡単な定数係数2階微分方程式:続き

\( y^{”} +  K y = 0\) あるいは移項して \(y^{”} = – K y\) を解く。

簡単な1階非線形微分方程式の例

「非線形」といっても,未知関数 $y(x)$ およびその1階微分 $\frac{dy}{dx}$ について二乗の項のみを含む,以下のような1階非線形微分方程式を解く。

$$\left( \frac{dy}{dx}\right)^2  = 1 -y^2$$

この形の微分方程式は,一般相対論において,シュバルツシルト時空中の光の伝播や天体の運動を解くときによく出てくるので,しっかりやっておこう。

定数係数2階線形同次方程式

定数係数2階線形同次方程式 \( y^{”} + 2 b\, y’ + c\, y = 0 \) の一般解を求める。できれば統一的な表記で。

定数係数2階線形非同次方程式

定数係数2階線形非同次方程式とは以下のように右辺に非同次項 \( R(x) \) がある微分方程式のこと。 $$ y^{”} + 2 b y’ + c y = R(x) $$ 特殊解 \( y_s(x) \) を,同次方程式 $$ y^{”}(x) + 2 b y'(x) + c y(x) = 0 $$ の1次独立な基本解 \( y_1(x), \ y_2(x) \) およびそれらからつくられるロンスキアン $$ W(x) \equiv y_1(x) y’_2(x) -y’_1(x) y_2(x) $$ を使って求める公式は,

$$ y_s(x) = y_2(x) \int^x \frac{R(t) y_1 (t)}{W(t)} dt -y_1(x) \int^x \frac{R(t) y_2(t)}{W(t)} dt$$