逆三角関数の微分
逆三角関数 \(y = \sin^{-1} x\) は 三角関数 \(x = \sin y\) の逆関数として定義される。その微分は(学部1年生で以下のように教える)
\begin{eqnarray}
\frac{d}{dx} \sin^{-1} x &=& \frac{dy}{dx} \\
&=& \frac{1}{\frac{dx}{dy}} \\
&=& \frac{1}{\cos y} \\
&=& \frac{1}{\sqrt{1 – \sin^2 y}}\\
&=& \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}\\
\therefore\ \ \frac{d}{dx} \sin^{-1} x &=&\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}
\end{eqnarray}
同様にして,以下もわかる。
\begin{eqnarray}
\frac{d}{dx} \cos^{-1} x &=& – \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}
\end{eqnarray}
逆三角関数があらわれる積分公式
上記の微分結果から,大学1年で習う積分公式(結果が逆三角関数で書けるやつ)は
$$ \int\frac{dx}{\sqrt{1-x^2}} = \sin^{-1} x, \quad -\int\frac{dx}{\sqrt{1-x^2}} = \cos^{-1} x$$
と教わったかもしれない。でもこれだと,同じ積分 \(\displaystyle \int\frac{dx}{\sqrt{1-x^2}}\) の答えが \(\sin^{-1} x\) でもいいし,\( -\cos^{-1} x\) でもいいことになり,一意に決まらないように思えるが,その辺は積分定数で吸収できることを示しておこう。
弱重力場近似:\(r_g\) のゼロ次解のところで出てきた微分方程式の変数分離形
$$\pm\frac{d(b u_0)}{\sqrt{1 – (b u_0)^2}} = d\phi$$
を思い出すと,この解は
$$ \sin^{-1} (bu_0) = \phi + C_1, \quad \therefore\ \ u_0 = \frac{\sin(\phi+C_1)}{b}$$ または
$$ \cos^{-1} (bu_0) = \phi + C_2, \quad \therefore\ \ u_0 = \frac{\cos(\phi+C_2)}{b}$$ のどちらかとなるが,積分定数を適宜とって \(C_2 = C_1 – \frac{\pi}{2} \) としてやれば
$$ \frac{\cos(\phi+C_2)}{b} = \frac{\cos\left(\phi+C_1 – \frac{\pi}{2}\right)}{b} = \frac{\sin(\phi + C_1)}{b}$$ となることから,一般に
$$ u_0 = \frac{\sin(\phi + C)}{b} $$ としてよい。
もっと直接的には,
$$\cos^{-1} x + \sin^{-1} x = \frac{\pi}{2}, \quad \cos^{-1} x = \frac{\pi}{2} – \sin^{-1} x$$
という関係があり,\(\cos^{-1} x\) の微分が \(\sin^{-1} x\) の微分にマイナスがついたものであることは,このことから明らかであろう。
Maxima-Jupyter での確認例
逆三角関数の微分
Maxima では,$\sin^{-1} x$ は asin(x)
,$\cos^{-1} x$ は acos(x)
。
'diff(asin(x), x) = diff(asin(x), x);
'diff(acos(x), x) = diff(acos(x), x);
逆三角関数があらわれる積分公式
'integrate(1/sqrt(1-x**2), x) =
integrate(1/sqrt(1-x**2), x);
また,$$\displaystyle \cos^{-1}x = \frac{\pi}{2}- \sin^{-1}x $$の証明は,両辺の $\cos$ をとって
$$x = \cos\left(\frac{\pi}{2} – \sin^{-1} x \right)$$ となることを示せばよいであろう。
cos(%pi/2 - asin(x));