例題 1
以下の微分方程式を解く。$$ \frac{dy}{dx} + \frac{y}{x} = \frac{\sin x}{x} $$
左辺に \(g(x)\) をかけて
$$ g(x) \left( \frac{dy}{dx} + \frac{y}{x}\right) = \frac{d}{dx}\left(g(x)\,y\right)$$
となるようにするには,
$$ \frac{dg}{dx} = \frac{1}{x} g(x) $$
を満たせばよい。これから \(g(x) = x\) とすればよいことがわかるよね。丁寧にやってみると,変数分離法で
$$\frac{dg}{g} = \frac{dx}{x}$$
$$\int \frac{dg}{g} = \int \frac{dx}{x}$$
厳密には
$$ \ln |g| = \ln |x| $$
なんだろうけど,どちらも正であるとして
$$ \ln g = \ln x $$
つまり,\( g(x) = x \) 。
で,元の微分方程式に積分因子 \(g(x) = x\) をかけると,
$$ \frac{d}{dx}\left(x\, y(x)\right) = \sin x $$
この両辺を積分して,
$$ x\, y(x) = \int \sin x \,dx = -\cos x + C$$
$$\therefore y(x) = \frac{-\cos x + C}{x} $$
補足:積分因子法の型にあてはめて機械的に解く
$$ \frac{dy}{dx} + \frac{y}{x} = \frac{\sin x}{x} $$
より,積分因子法の型にあてはめて機械的に解くには,
$$ P(x) = \frac{1}{x}, \qquad Q(x) = \frac{\sin x}{x} $$
として,積分因子 \(g(x) \) は
$$ g(x) = \exp\left\{ \int^x P(x’) dx’ \right\} = \exp\left\{ \ln |x| \right\} = |x|$$
\( g(x) = x\) または \( g(x) = -x \) となるべきではあるが,積分因子 \(g(x)\) には定数倍の任意性があるので,\( g(x) = x\) としてよい。
すると,
\begin{eqnarray}
y &=& \frac{1}{g(x)} \left\{ \int^x g(x’) Q(x’) dx’ + C\right\} \\
&=& \frac{1}{x} \left\{ \int^x x’ \frac{\sin x’}{x’} dx’ + C \right\}\\
&=& \frac{1}{x} \bigl\{ -\cos x + C\bigr\}
\end{eqnarray}
例題 2
以下の微分方程式を解く。
$$ \frac{dy}{dx} – x\, y = 2x $$
積分因子法で解く。
$$ P(x) = -x, \qquad Q(x) = 2 x$$
積分因子は
$$ g(x) = \exp\left\{ \int^x P(x’) \,dx’ \right\} =
\exp\left(-\frac{x^2}{2}\right) $$
これを使うと
\begin{eqnarray}
y(x) &=& \frac{1}{g(x)} \left\{ \int^x g(x’) Q(x’) dx’ + C \right\} \\ &=&
\exp\left(\frac{x^2}{2}\right) \left\{ \int^x \exp\left(-\frac{x’^2}{2}\right) 2x’ dx’ + C \right\} \\ &=&
-2 + C \exp\left(\frac{x^2}{2}\right)
\end{eqnarray}
ちなみに,
$$\int^x \exp\left(-\frac{x’^2}{2}\right) 2x’ dx’$$
は,\( t \equiv x’^2\) という変数変換をすれば,\( dt = 2 x’ dx’ \) だから,
$$\int^{x^2} \exp\left(-\frac{t}{2}\right) dt$$
となって簡単に積分できるよね。
補足:指数関数を含む積分
以下のような,指数関数を含む積分について少し。
$$ \int e^{ -a x^2}\, 2 x dx $$
変数変換
$$ x^2 \equiv t$$
としてやれば,
$$2x dx = dt$$
となるので,
$$ \int e^{ -a x^2}\, 2 x dx = \int^{x^2} e^{ -a t} dt$$
ここまでやると,積分できそうですよね。
ちなみに,
$$ \int e^{ -a x^2} dx $$
は難しいですよ。この不定積分は解析的には積分できません。しかし,以下のような定積分
$$ \int_0^{\infty} e^{ -a x^2} dx $$
は解析的に解ける,という極めて特殊な例(繰り返します,不定積分はできないが無限大区間の定積分だけは解析的に解ける!)になっています。これはガウス積分と呼ばれる有名な積分で,この授業でもあとで説明します。
例題 3
以下の微分方程式を解く。こんな問題,人生のどこで使うんだ?と思う人,そのうちにシュバルツシルト時空中の天体の運動を調べるときに出てくるんですよ。
$$2 \sin x \frac{dy}{dx} -2 y\, \cos x = \cos x -\cos^3 x $$
積分因子法で解くのだけど,簡単だから以下のように…
\begin{eqnarray}
\sin^2 x \frac{d}{dx} \frac{y}{\sin x} &=& \frac{\cos x -\cos^3 x}{2} \\
\frac{d}{dx} \frac{y}{\sin x} &=&\frac{\cos x -\cos^3 x}{2 \sin^2 x} \\
\frac{y}{\sin x} &=& \frac{1}{2} \int \frac{\cos x -\cos^3 x}{\sin^2 x}\, dx \\
&=& \frac{1}{2} \int \frac{1 – \cos^2 x}{\sin^2 x}\, \cos x\, dx \\
&=& \frac{1}{2} \sin x \\
\therefore\ \ y &=& \dots
\end{eqnarray}