一般的な1階線形微分方程式は,以下のような形。
$$
\frac{dy}{dx} + P(x)\, y = Q(x)
$$
未知関数(これから求める関数)\(y(x)\) を含む項を全て左辺にもっていっても,右辺がゼロとなっていない「非同次方程式」。
特に,右辺,\(Q(x) = 0\) なら「同次方程式」:
$$
\frac{dy}{dx} + P(x)\, y = 0
$$
この形なら,変数分離法で解くことができたよね!
積分因子法
一般的な1階線形微分方程式(非同次方程式の格好しているもの)
$$
\frac{dy}{dx} + P(x)\, y = Q(x)
$$
の両辺に適当な関数 \(g(x)\) をかけると
$$
g(x) \left( \frac{dy}{dx} + P(x)\, y \right) = g(x)\,Q(x)
$$
この \(g(x) \) をうまくとって,左辺が以下のような形(なにかの関数の掛け算でもいいから、ひとかたまりとなった全体を \(x\) で微分した形)になるようにする。
$$
g(x) \left( \frac{dy}{dx} + P(x)\, y \right) = \frac{d}{dx} \bigl(g(x)\, y\bigr)
$$
そうすると,もともとの式は
$$
\frac{d}{dx} \bigl(g(x)\, y\bigr)= g(x)\,Q(x)
$$
となり,これは両辺を積分すれば \(g(x)\, y \) について解け,したがって \(y \) についても簡単に求められるのであった。
さて、\( g(x) \) は以下の式を満たすように決めるのであった。
$$
g(x) \left( \frac{dy}{dx} + P(x)\, y \right) = \frac{d}{dx} \bigl(g(x)\, y\bigr)
$$
この両辺をあらためて計算してみると,
\begin{eqnarray}
g(x) \left( \frac{dy}{dx} + P(x)\, y \right) &=&
g(x) \frac{dy}{dx} + g(x)\,P(x)\, y \\
\frac{d}{dx} \bigl(g(x)\, y\bigr) &=& g(x) \frac{dy}{dx} + \frac{dg}{dx} y
\end{eqnarray}
であるから,両辺をみくらべると,\(g(x)\) は
$$ \frac{dg}{dx} = P(x)\, g(x)
$$
を満たさないといけない。これは \(g(x)\) についての微分方程式であり,変数分離法を使って次のように解くことができる。
$$\frac{dg}{g} = P(x)\, dx$$
$$\int \frac{dg}{g} = \int P(x)\, dx$$
$$ \ln |g| = \int P(x)\, dx$$
$$ |g| = \exp\left\{ \int P(x)\, dx\right\}$$
\(g > 0\) の場合を考えれば十分であるので(なぜかって?以下の補足を参照。)
$$ g(x) = \exp\left\{ \int P(x)\, dx \right\} $$
\(\displaystyle \int P(x)\, dx\) は不定積分であるから,任意の積分定数をつけるべき,と思うかもしれないが,以下の補足からわかるように \(g(x)\) を求める際には積分定数は省略して大丈夫ですよ。
積分因子と呼ばれるこの関数 \(g(x) \) がわかると,もとの1階線形微分方程式は
$$\frac{d}{dx} \bigl(g(x)\, y\bigr) = g(x)\,Q(x) $$
であるから,両辺を \(x\) で積分したのちに \(g(x) \) でわって,
$$ y = \frac{1}{g(x)} \left\{ \int g(x)\,Q(x)\, dx + C \right\} $$
となる。以上が積分因子法による1階線形微分方程式の解法である。不定積分 \(\displaystyle \int g(x)\,Q(x)\, dx\) はこれ自体積分定数を含むであるが,ここでは別途あからさまに積分定数 $C$ を追記しておく。
積分因子法のまとめ
1階線形微分方程式(非同次方程式の格好しているもの)
$$
\frac{dy}{dx} + P(x)\, y = Q(x)
$$
の解は
$$ g(x) = \exp\left\{ \int P(x)\, dx \right\} $$
で与えれらる積分因子 \(g(x)\) を使って
$$ y = \frac{1}{g(x)} \left\{ \int g(x)\,Q(x)\, dx + C \right\} $$
と書ける。$C$ は積分定数(1階微分方程式だから積分定数は1個)。
なお,\(\displaystyle \int P(x)\, dx\) や \( \int g(x)\,Q(x)\, dx\) は不定積分なのでこれ自体に積分定数を含むのであるが,以下の補足に述べるような任意性によって積分定数は省略してよい。このことをあからさまに表すために,
$$ \int P(x)\, dx = \int^x P(x’)\, dx’ + C$$
のように積分定数を省略した部分を \(\displaystyle \int^x P(x’)\, dx’\) のように書き分けてみたが,(なぜ $x$ じゃなくて $x’$ なんですかなどという質問が来たりして)学生には不評だったので,混乱させないように書き方をもとに戻してみた。
補足:積分因子における定数倍の任意性について
積分因子 \(g(x)\) の役割とは,微分方程式
$$\frac{dy}{dx} + P(x) y = Q(x)$$
の両辺に\(g(x)\)をかけて
$$\frac{d}{dx}\bigl( g(x) \,y(x) \bigr) = g(x)\, Q(x) $$
の形にする,ということであった。今,この式の両辺に定数 \( K\) をかけると
$$\frac{d}{dx}\bigl( K g(x) \,y(x) \bigr) = K g(x)\, Q(x) $$
これは,\( \tilde{g}(x) \equiv K g(x) \) で定義される \(\tilde{g}(x)\) もまた積分因子であるということを意味する:
$$\frac{d}{dx}\bigl( \tilde{g}(x)\, y(x) \bigr) = \tilde{g}(x)\, Q(x) $$
つまり,積分因子は唯一無二に決まるのではなく,任意の定数をかけてもよいことになる。これを業界用語で,「積分因子には定数倍の任意性がある」という。