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簡単な1階非線形微分方程式の例

「非線形」といっても,未知関数 $y(x)$ およびその1階微分 $\frac{dy}{dx}$ について二乗の項のみを含む,以下のような1階非線形微分方程式を解く。

$$\left( \frac{dy}{dx}\right)^2  = 1 -y^2$$

この形の微分方程式は,ニュートン力学におけるケプラー問題や,一般相対論においてシュバルツシルト時空中の光の伝播や天体の運動を解くときによく出てくるので,しっかりやっておこう。

変数分離法による解法

\begin{eqnarray}
\left( \frac{dy}{dx}\right)^2  &=& 1 -y^2 \\
\frac{dy}{dx} &=& \pm \sqrt{1 -y^2} \\
\frac{dy}{\sqrt{1 -y^2}} &=& \pm dx \\
\int \frac{dy}{\sqrt{1 -y^2}} &=& \pm \int dx \\
\sin^{-1} y &=& \pm x + C \\
\therefore\ \ y &=& \sin\left(\pm x + C \right)
\end{eqnarray}

逆三角関数の微分 $\displaystyle \left( \sin^{-1} x\right)’ = \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}$ なんて,いったいどこで使うんだとか思っていたでしょ? この微分方程式を解くために使うんですよ!

複号 $+$ の場合はそのまま

$$y = \sin(x + C)$$

複号 $-$ の場合は,$C \rightarrow \pi -C’$ とおいて

\begin{eqnarray}
y &=& \sin(-x + C) \\
&=& \sin \left( -x + \pi  -C’ \right)\\
&=& \sin \left( \pi -\left(x + C’\right) \right)\\
&=& \sin \left(x + C’\right)
\end{eqnarray}

したがって積分定数をあらためて $C$ とおきなおしてみると答えは

$$y = \sin(x + C)$$

としてよいことになる。非線形ではあるが,1階微分方程式なので積分定数は1個。これは初期条件を1つ課して決定することになる。あるいは,$C = \frac{\pi}{2} + C^{\prime\prime}$ として

\begin{eqnarray}
y &=& \sin(x + C) \\
&=& \sin( \frac{\pi}{2} +x +  C^{\prime\prime}) \\
&=& \cos(x +  C^{\prime\prime})
\end{eqnarray}

2階線形微分方程式にして解く例

このままでも上記のように解けたわけだが,この微分方程式の両辺を $x$ で微分すると,見慣れた形になる。

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dx} \left( \frac{dy}{dx}\right)^2  &=& \frac{d}{dx}\left(1 -y^2 \right) \\
2 \frac{dy}{dx} \frac{d^2y}{dx^2} &=& -2 y \frac{dy}{dx} \\
\therefore\ \ \frac{d^2y}{dx^2} &=& -y
\end{eqnarray}

これは大学で最初に習う最も簡単な定数係数2階微分方程式であり,脊髄反射で以下のように解ける。

$$y = C_1 \cos x + C_2 \sin x$$

あるいは,三角関数の加法定理を思い起こせば,以下のように書いてもよいであろう。

$$y = A \sin(x + C)$$

ここで積分定数は $A$ と $C$ の2個になっているが,元々の微分方程式は1階であるのに,両辺をさらに微分して階数をあげたため,積分定数を決める初期条件がもうひとつ必要になってくる。

ここは,もとの微分方程式

$$\left( \frac{dy}{dx}\right)^2  = 1 -y^2$$

に立ち返って,たとえば $y = 0 $ のとき,$\displaystyle \frac{dy}{dx} = 1$ となるという条件を採用すると,$A = 1$ となり,最終的に解は

$$y =\sin(x + C)$$

あるいは,$C = \frac{\pi}{2} + C^{\prime\prime}$ として

$$y =\cos(x + C^{\prime\prime})$$

簡単な応用例

$\displaystyle\left( \frac{dy}{dx}\right)^2  = 1 -y^2$ の解がわかれば,以下のような形の微分方程式の解も簡単にわかるであろう。

$$\left( \frac{dy}{dx}\right)^2  = \frac{1}{b^2}  -\gamma^2 y^2$$

両辺に $b^2$ をかけて,

$$\left( \frac{d(b \gamma y)}{d(\gamma x)}\right)^2  = 1  -\left(b \gamma  y\right)^2$$

$\tilde{y} \equiv b \gamma y, \ \tilde{x} \equiv \gamma x$ とすると

$$\left( \frac{d\tilde{y}}{d\tilde{x}}\right)^2  = 1  -\left(\tilde{y}\right)^2$$

となるので,ただちに解は

\begin{eqnarray}
\tilde{y} &=& \sin(\tilde{x} + C)\\
b \gamma y &=& \sin(\gamma x + C)\\
\therefore\ \ y &=& \frac{\sin(\gamma x + C)}{b \gamma}
\end{eqnarray}

あるいは,$C = \frac{\pi}{2} + C^{\prime\prime}$ として

\begin{eqnarray}
y &=& \frac{\cos(\gamma x + C^{\prime\prime})}{b \gamma}
\end{eqnarray}