微分方程式が出てくる現実世界の一場面:ヴェアフルストによる修正モデル
マルサス・モデルは,\(\gamma > 0\) の場合には人口の際限ない増加を予測する。しかし,実際には食糧資源の供給不足,人口の過密,その他の環境的要因により,このような無制限な増加は続かない。
ヴェアフルストは,人口過密の要因を考慮にいれて,次のような修正を提案した。
人口は継続し続ける限り増加するが,上限 (それを定数 \(N_{\max}\) としよう) があるとする。そして,人口変化は,次の各々に比例すると仮定する:
- 現在の人口 \(N\)
- 未使用の人口資源に対する割合 \((1 – N/N_{\rm max})\)
したがって微分方程式は
$$
\frac{dN}{dt} = \gamma N \left(1 – \frac{N}{N_{\rm max}}\right)
$$
両辺を $N_{\rm max}$ で割り,$\displaystyle y \equiv N/N_{\rm max}$ で表すと
$$ \frac{dy}{dt} = \gamma y (1 – y)$$
これは以下のように変数分離法によって解ける。
\begin{eqnarray}
\frac{dy}{y (1-y)} &=& \gamma dt \\
\int\frac{dy}{y (1-y)} &=& \gamma \int dt \\
\int\left\{\frac{1}{y} – \frac{1}{y-1} \right\} dy &=& \gamma \int dt \\
\ln \left| \frac{y}{y-1}\right| &=& \gamma t + C\\
\therefore\ \ \frac{y}{y-1} &=& e^{\gamma t + C} \\
&\equiv& C’ e^{\gamma t}
\end{eqnarray}
\(t = t_0\) における人口の値を \(N(t_0) \equiv N_0\) とすると,
\begin{eqnarray}
\frac{\frac{N_0}{N_{\rm max}}}{\frac{N_0}{N_{\rm max}}-1} &\equiv& C’ e^{\gamma t_0} \\
\therefore\ \ C’ &=& \frac{N_0}{N_0 – N_{\rm max}} e^{-\gamma t_0}\\ \ \\
\therefore\ \ y = \frac{N}{N_{\rm max}} &=& \frac{C’ e^{\gamma t}}{C’ e^{\gamma t} -1} \\
&=& \frac{\frac{N_0}{N_0 – N_{\rm max}} e^{\gamma(t- t_0)}}{\frac{N_0}{N_0 – N_{\rm max}} e^{\gamma (t-t_0)}-1}\\
\therefore\ \ N(t) &=& N_{\rm max} \frac{N_0 }{N_0 + (N_{\rm max}-N_0)\,e^{-\gamma (t-t_0)}}
\end{eqnarray}
下図をみると,($N_{\rm max}$ と $\gamma$ をうまくあわせることによって)ヴェアフルストモデルのほうが,この年代の米国の人口をよくあらわしていることがわかる。