多重積分として最も簡単な,2重積分 $\displaystyle \iint_D f(x, y) \,dx \,dy $ が表す立体の体積とは…
2重積分の定義
$$ \iint_D f(x, y) \,dx \,dy $$
と書き,これを領域 \(D\) での2重積分と呼ぶことにすると,この2重積分が表しているのは,曲面 \(z = f(x, y)\) と \(z = 0\)(\(xy\) 平面)の間で,領域 \(D\) の上にある部分の体積 $V$ を表していることになる。
特に,\(\displaystyle \iint_D \,dx\, dy \) は(高さ \(1\) の立体の体積であり,体積とは底面積×高さであるから)領域 \(D\) の面積を与える。
面積分,体積積分
… と以上のように説明すると,1変数関数の積分が面積,2変数関数の積分つまり2重積分が体積と短絡的に考えてしまいそうなので,補足。
面積は面積分から
本来は,$xy$ 平面上のある領域 $D$ の面積 $S$ は
$$ S \equiv \iint_D dx\, dy$$
のように(被積分関数が $1$ の)2重積分(面積分)で定義される。さらには一般的に曲面上のある領域 $D$ の場合には,(デカルト座標 $x, y$ 以外も使うだろうから)微小面積要素を $dx\, dy \rightarrow dS$ と書いて
$$ S = \iint_D dS$$
などと書く。
領域 $D$ が特に $D: a \leq x \leq b, \ 0 \leq y \leq f(x)$ と書ける場合には,後で説明する累次積分の要領で
\begin{eqnarray}
S &=& \iint_D dx\, dy \\
&=& \int_a^b dx \int_0^{f(x)} dy \\
&=& \int_a^b dx \,f(x) \\
&=& \int_a^b f(x)\,dx
\end{eqnarray}
となる。本来,面積というものは(被積分関数が $1$ の)2重積分(面積分)であり,領域 $D$ がこのyほうに書ける場合には1変数関数の積分に帰着するんだよ,と理解する。
体積は体積積分から
同様に体積についても,本来は3次元空間内のある領域 $D_3$ の体積 $V$ は
$$ V \equiv \iiint_{D_3} dx\, dy\, dz$$
のように(被積分関数が $1$ の)3重積分(体積積分)で定義される。さらには一般的には(デカルト座標 $x, y, z$ 以外も使うだろうから)微小面積要素を $dx\, dy\,dz \rightarrow dV$ と書いて
$$ V = \iiint_{D_3} dV$$
などと書く。領域 $D_3$ が特に $D_3: D(x, y), \ 0 \leq z \leq f(x, y)$ と書ける場合には,後で説明する累次積分の要領で
\begin{eqnarray}
V &=& \iiint_{D_3} dx\, dy\, dz \\
&=& \iint_D dx\, dy \int_0^{f(x, y)} dz \\
&=& \iint_D dx\, dy \, f(x, y) \\
&=& \iint_D f(x, y)\, dx\, dy
\end{eqnarray}
となる。本来,体積というものは(被積分関数が $1$ の)3重積分(体積積分)であり,領域 $D_3$ がこのように書ける場合には2変数関数の2重積分(面積分)に帰着するんだよ,と理解する。