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陰関数定理の例題

例題 1

\(f(x, y) = x^2 + y^2 -1 = 0\) を満たす陰関数 \(y=y(x)\) の最大値・最小値を求める。

解答例

陰関数定理より
$$ \frac{dy}{dx} = – \frac{ \ \ \frac{\partial f}{\partial x} \ \ }{\frac{\partial f}{\partial y}} = – \frac{2 x}{2 y} = – \frac{x}{y}$$

\(y(x)\) が極値をとるのは \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = 0\) より \(x = 0\)。これを \(f(x, y)\) に代入して

$$f(0, y) = y^2 -1 = 0, \quad \therefore\ \ y = \pm 1$$

したがって極値になりそうな点は \((x, y) = (0, 1), \ (0, -1)\)。

最大値・最小値になるかどうかを調べるには2階微分 \(\displaystyle \frac{d^2 y}{dx^2}\) を計算する必要がある。

\begin{eqnarray}
\frac{d^2 y}{dx^2} &=& \frac{d}{dx}\left( -\frac{x}{y}\right) \\
&=& -\frac{1}{y^2} \left(1\cdot y -x \frac{dy}{dx} \right) \\
&=& -\frac{1}{y^2} \left(y +\frac{x^2}{y} \right)\\
&=& \left\{
\begin{array}{ll}
-1 < 0 & \mbox{for}\ (x, y) = (0, 1)\\
\ \ 1 > 0 & \mbox{for}\ (x, y) = (0, -1)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}

したがって,\((x,y) = (0, 1) \) は最大値 \(y = 1\) となる点であり,\( (x,y) = (0, -1)\) は最小値 \(y=-1\) となる点。

別解

\(f(x, y) = x^2 + y^2 -1 = 0 \) は陽関数として表すことも可能で,
$$x^2 + y^2 -1 = 0 \ \ \Rightarrow\ \ y = \pm \sqrt{1-x^2}$$

\(y = +\sqrt{1-x^2}\) のときは $$\frac{dy}{dx} = \frac{1}{2} (1-x^2)^{-\frac{1}{2}} \cdot(-2 x) = -\frac{x}{y}$$

\(y = -\sqrt{1-x^2}\) のときは $$\frac{dy}{dx} = -\frac{1}{2} (1-x^2)^{-\frac{1}{2}} \cdot(-2 x) = -\frac{x}{y}$$

となり,どちらの場合も $$\frac{dy}{dx} = – \frac{x}{y}$$

\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) が求まれば,あとは同様に…

この例題の幾何学的考察

この例題が陰関数定理の例題であるという側面を離れて,幾何学的に考察してみると,$f(x, y) = x^2 + y^2 -1 = 0$ という拘束条件は,点 $(x, y)$ が $x^2 + y^2 = 1$ つまり原点を中心とした半径 $1$ の円上にあるということ。

この拘束条件のもとで $y$ の最大値・最小値を求めるということは,この円上で $y$ の最大値と最小値を求めるということであるから,図から明らかに $y$ の最大値は $1$,最小値は $-1$  ということになる。

例題 2

\(f(x, y) = x^2 + y^2 -1 = 0\) を満たす陰関数を \(y=y(x)\) とするとき,関数 \(g(x) = x + y(x)\) の最大値・最小値を求めよ。

解答方針

すでに $\displaystyle \frac{dy}{dx} = – \frac{x}{y}$ までは求めているので,あとは $g(x)$ の極値を探すために $\displaystyle \frac{dg}{dx}$ を求めてみればよい。

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dx} g(x) &=& \frac{d}{dx} (x + y) \\
&=& 1 + \frac{dy}{dx} \\
&=& 1 -\frac{x}{y} = \frac{y -x}{y}
\end{eqnarray}

極値となりそうな点は $\displaystyle \frac{dg}{dx} = 0$ より $y = x$ を満たすことになる。あとは…

この例題の幾何学的考察

関数 \(g(x) = x + y(x)\) の値を $d$ とおけば,

$$x + y = d, \quad \therefore\ \ y = -x + d$$

つまり,この練習問題を幾何学的に考察すると,円 $x^2 + y^2 = 1$ と共通点をもつ(つまり,交わるあるいは接する)直線 $y = -x + d$ のうち,切片 $d$ の値が最大・最小になるのは?という問題であることがわかる。これなら,陰関数定理やラグランジュの未定乗数法(まだ教えてないけど)なんか使わなくても,図を書いて求められるよね。

ちなみに,ラグランジュの未定乗数法を使った解答例は,真貝さんの「徹底攻略微分積分」の p.181 に書いてあります。