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拘束条件付きで極値を求める例題

面積一定の長方形で,周長が最小となるのは正方形のときであることを,陽関数でやったり,陰関数定理を使ったり,ラグランジュの未定乗数法を使ったりして示してみる。

例題

横の長さ $x$,縦の長さ $y$ の長方形の面積 $S$ を一定とする拘束条件は

$$f(x, y) = x\,y -S = 0$$

このとき,周長 $L(x, y) = 2 ( x+y)$ が最小となる状況を調べる。

拘束条件を解いて陽関数を使って解く

\begin{eqnarray}
f(x, y) = x\,y -S &=& 0 \ \ \mbox{より} \\
y(x) &=& \frac{S}{x} \\
\therefore\ \ L(x, y(x)) &=& 2 \left( x + \frac{S}{x}\right) \\
\frac{dL}{dx} &=& 2 \left( 1 -\frac{S}{x^2}\right) = 0 \ \ \mbox{より} \\
x &=& \sqrt{S} \\
\therefore\ \ y &=& \frac{S}{x} = \sqrt{S}
\end{eqnarray}

つまり,周長 $L(x, y)$ が極値をとるのは $x = y$,つまり正方形のときである。これが確かに最小値になっていることは

$$\frac{d^2 L}{dx^2} = 4 \frac{S}{x^3} > 0\ \ \mbox{for} \ \ x = \sqrt{S}$$

つまり,$x = \sqrt{S}$ で下に凸であることからわかる。

陰関数定理を使って解く

$f(x, y) = x\,y -S = 0$ を満たす陰関数を $y = y(x)$ とすると,陰関数定理より

$$\frac{dy}{dx} = – \frac{\ \ \frac{\partial f}{\partial x} \ \ }{\frac{\partial f}{\partial y}} = -\frac{y}{x}$$

周長 $L(x, y)$ が極値をとりそうな点は

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dx} L(x, y(x)) &=& \frac{\partial L}{\partial x} + \frac{\partial L}{\partial y} \frac{dy}{dx} \\
&=& 2 + 2\cdot\left( -\frac{y}{x}\right) \\
&=& 2 \frac{x -y}{x} = 0 \ \ \mbox{より} \\
x &=& y
\end{eqnarray}

すなわち正方形の場合。これが確かに最小値になっていることは

\begin{eqnarray}
\frac{d^2}{dx^2} L(x, y(x)) &=& 4 \frac{y}{x^2} > 0
\end{eqnarray}

より $L(x, y)$ は下に凸であることからわかる。

ラグランジュの未定乗数法で解く

$f(x, y) = x\,y -S = 0$ の拘束条件のもとで,$L(x, y) = 2 (x + y)$ の極値を求める問題だから,

\begin{eqnarray}
F(x, y, \lambda) &\equiv& L(x, y) + \lambda\,f(x, y) \\
&=& 2 (x + y) + \lambda\, (x\,y -S) \\ \ \\
\frac{\partial F}{\partial x} &=& 2 + \lambda\, y = 0 \tag{1} \\
\frac{\partial F}{\partial y} &=& 2 + \lambda\, x = 0 \tag{2} \\
\frac{\partial F}{\partial \lambda} &=& x \,y -S = 0 \tag{3}
\end{eqnarray}

(1) 式と (2) 式から $x = y$ となり,正方形のときであることがわかり,(3) 式より $x = y = \sqrt{S}$ であることがわかる。これが確かに最小値であることは…