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偏微分:多変数関数の微分

うちの学科というか学部では,2年次前期開講のこの授業「理工系の数学C」で偏微分を教えることになっているが,実際には,その前,1年次後期の「電磁気学I」で偏微分が必要になるため,「電磁気学I」のなかで時間をさいて偏微分やベクトル解析を教えている。以下の口上は「電磁気学I」の偏微分の項からの抜粋。

人生になぜ「偏微分」が必要か?

高校で習った,そして「理工系の数学B」でもやった「微分」は1変数関数 \(f(x)\) に対する微分:
$$\frac{df}{dx} \equiv \lim_{h\rightarrow 0}\frac{f(x+h) – f(x)}{h}$$

我々の住む世界は3次元空間であり,(デカルト座標系をとると) \(x, y, z\) の3つの空間座標(変数)で記述される。また,一般に物理量は時間とともに変化するから,時間座標 \(t\) にも依存する。つまり,我々が電磁気学などで扱う物理量は \(f(x, y, z, t)\) のように一般的には4つの変数に依存する多変数関数である。多変数関数の微分として「偏微分」がある

ここでは,多変数関数のうち,もっとも簡単な2変数関数 $f(x, y)$ を例に,電磁気学I でやった偏微分についておさらいしておく。

 

偏導関数

2変数関数 \( z = f(x, y) \) の偏微分 \(\displaystyle \frac{\partial f}{\partial x}, \ \frac{\partial f}{\partial y} \) の定義のまとめ。

偏導関数の表記

\(\displaystyle \frac{\partial f}{\partial x}\) を表す別の書き方のまとめ。テキストによっては,2変数関数 \(z = f(x,y)\) の \(x\)-偏導関数を以下のような記号・表記で表す場合がある。

$$ \frac{\partial z}{\partial x}, \quad \frac{\partial f}{\partial x}, \quad \frac{\partial}{\partial x} f(x, y), \quad f_x, \quad f_x(x,y)$$

全微分

$$ dz \equiv f(x + dx, y + dy) – f(x, y) $$ で定義される \( dz\) を関数 \(z\) の全微分という。

高階偏導関数

2変数関数 \( z = f(x,y) \) の2階以上の偏微分について。

テイラー展開(2変数)

2変数関数 \(f(x, y)\) のテイラー展開は,$h, \ k$ を(小さい)変数として, \begin{eqnarray} f(x+h, y+k) = f(x,y) &\,+& \left(h\frac{\partial}{\partial x} + k\frac{\partial}{\partial y}\right) f(x,y) \\ &+& \frac{1}{2!} \left(h\frac{\partial}{\partial x} + k\frac{\partial}{\partial y}\right)^2 f(x,y) + \cdots \\ &+& \frac{1}{n!} \left(h\frac{\partial}{\partial x} + k\frac{\partial}{\partial y}\right)^n f(x,y) + \cdots \end{eqnarray}

合成関数の偏微分法

2変数関数 \(z = f(x, y)\) において,\(x = x(t), \ y = y(t)\) の場合,$ x = x(u, v), \ y = y(u, v)$ の場合,などにおける微分・偏微分について。

陰関数定理

2変数関数の偏微分の応用として,陰関数定理を紹介する。 \(f(x, y) =0\) を満たす陰関数 \(y = y(x)\) の微分は以下のように書ける。 $$ \frac{dy}{dx} = – \frac{\displaystyle \ \ \frac{\partial f}{\partial x}\ \ }{\displaystyle \ \ \frac{\partial f}{\partial y}\ \ }, \quad \frac{\partial f}{\partial y} \neq 0$$

ラグランジュの未定乗数法(2次元)

$f(x, y) = 0$ の条件のもとで,関数 $g(x, y)$ が極値をとる点 $(x, y) = (a, b)$ では,

$$F(x, y, \lambda) \equiv g(x, y) + \lambda\, f(x, y)$$

について

$$\frac{\partial F}{\partial x} = \frac{\partial F}{\partial y} = \frac{\partial F}{\partial \lambda} = 0$$

を満たすような定数 $\lambda$ が存在する。(以下の証明でわかるように,$\displaystyle \frac{\partial f}{\partial x}$ と $\displaystyle \frac{\partial f}{\partial y}$ が同時にゼロになることはない,という条件がある。)