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逆双曲線関数の微分

逆双曲線関数の表記は,
$$ \cosh^{-1} x, \quad \sinh^{-1} x, \quad \tanh^{-1} x$$
または
$$ \mbox{arcosh } x, \quad \mbox{arsinh } x, \quad \mbox{artanh } x$$微分は,

$$(\cosh^{-1} x)’ = \frac{1}{\sqrt{x^2-1}}, \ \ (\sinh^{-1} x)’ =  \frac{1}{\sqrt{x^2 + 1}}, \ \ (\tanh^{-1} x)’ =  \frac{1}{1-x^2}$$

逆三角関数のときには \(\arccos x\) のように \(\bf\mbox{arc}\)「アーク」だったが,逆双曲線関数は\(\bf\mbox{area}\) の略である \(\bf\mbox{ar}\) と書くべきであり,\(\mbox{arc}\)「アーク」と書くべきではない。


逆双曲線関数の定義

\(y = \cosh^{-1} x\) を \(x = \cosh y\) の逆関数として定義する。ちなみに,この逆双曲線関数は対数を使って表すことができる。

$$x = \cosh y = \frac{e^y + e^{-y}}{2}$$ を \(e^y\) についての2次方程式
$$ (e^y)^2 – 2 x e^y + 1 = 0$$
と見做して解くと,
$$ e^y = x \pm \sqrt{x^2-1}, \quad\therefore\ \ y = \log\left(x \pm \sqrt{x^2-1}\right)$$
元の \( x = \cosh y\) が \(x\) 軸について対称な偶関数であったために,その逆関数である \( y = \cosh^{-1} x\) が2価の関数になるのは仕方ないところ。以下のようにすると,
\begin{eqnarray}
y &=& \log\left(x – \sqrt{x^2-1}\right)\\
&=& \log\left(\frac{x^2 – (x^2-1)}{x + \sqrt{x^2-1}} \right)\\
&=& \log\left(\frac{1}{x + \sqrt{x^2-1}} \right)\\
&=& – \log\left(x + \sqrt{x^2-1}\right)
\end{eqnarray} なので,以下のようにも書くことができる。
$$ y = \cosh^{-1} x = \pm \log\left(x + \sqrt{x^2-1}\right)$$主値を \(y>0\)  とすれば,\( y = \cosh^{-1} x =  \log\left(x + \sqrt{x^2-1}\right)\) のみとなる。

\(y = \sinh^{-1} x\) を \(x = \sinh y\) の逆関数として定義する。ちなみに,この逆双曲線関数は対数を使って表すことができる。$$x = \sinh y = \frac{e^y – e^{-y}}{2}$$ を \(e^y\) についての2次方程式
$$ (e^y)^2 – 2 x e^y – 1 = 0$$
と見做して解くと,\( e^y > 0\) であることから
$$ e^y = x + \sqrt{x^2+1}, \quad\therefore\ \ y = \sinh^{-1} x = \log\left(x + \sqrt{x^2+1}\right)$$

\(y = \tanh^{-1} x\) を \(x = \tanh y\) の逆関数として定義する。ちなみに,この逆双曲線関数は対数を使って表すことができる。
$$x = \tanh y = \frac{e^y – e^{-y}}{e^y + e^{-y}}$$ を \(e^y\) について解くと
$$ e^y = \sqrt{\frac{1+x}{1-x}}, \quad \therefore\ \ y = \tanh^{-1} x = \log \sqrt{\frac{1+x}{1-x}} = \frac{1}{2} \log\left(\frac{1+x}{1-x}\right)$$

逆双曲線関数の導関数

$$(\cosh^{-1} x)’ = \frac{d}{dx} \log\left(x + \sqrt{x^2-1}\right)= \frac{1}{\sqrt{x^2-1}}$$

$$(\sinh^{-1} x)’ = \frac{d}{dx}\log\left(x + \sqrt{x^2+1}\right)= \frac{1}{\sqrt{x^2 + 1}}$$

$$(\tanh^{-1} x)’ = \frac{d}{dx} \frac{1}{2} \log\left(\frac{1+x}{1-x}\right)= \frac{1}{1-x^2}$$

証明は,対数関数表記を直接微分してもいいし,また逆関数の微分を使ってもよい。ここでは,\((\cosh^{-1} x)’\) について,逆関数の微分を使って証明してみる。\(\cosh^2 y – \sinh^2 y = 1\) も使います。

まず,\( y = \cosh^{-1} x \) は \( x = \cosh y\) の逆関数であったので,この両辺を \(y\)  で微分して,
$$ \frac{dx}{dy} = \frac{d}{dy} \cosh y = \sinh y = \sqrt{\cosh^2 y -1} = \sqrt{x^2-1}$$
$$ \therefore \ \ \frac{d}{dx} \cosh^{-1} x = \frac{dy}{dx} = \frac{1}{\frac{dx}{dy}} = \frac{1}{\sqrt{x^2-1}}$$

逆双曲線関数の表記

\(\displaystyle  (\cosh x)^{-1} = \frac{1}{\cosh x} \) なので,つい以下のような間違いをしてしまうこともあるかもしれない。

\(\displaystyle  \cosh^{-1} x = \frac{x}{\cosh } \)(大間違い!!)とか,\(\displaystyle  \cosh^{-1} x = \frac{1}{\cosh x} \)(間違い!!)

誤解してしまう恐れがあるので,このようなお茶目な間違いを誘発しないように,逆双曲線関数に対して以下のような表記法を用いることもある。

$$ \cosh^{-1} x = \mbox{arcosh } x, \quad \sinh^{-1} x = \mbox{arsinh } x, \quad \tanh^{-1} x = \mbox{artanh } x$$
逆双曲線関数は\(\bf\mbox{area}\) の略である \(\bf\mbox{ar}\) と書くべきであり,\(\mbox{arc}\)「アーク」と書いたり読んだりすべきではない。

高木貞治「解析概論」には,

「\(\cosh, \sinh\) の逆函数を \(\bf\mbox{area cos hyp}\),   \(\bf\mbox{area sin hyp}\),または略して \(\bf\mbox{ar cosh}\), \(\bf\mbox{ar sinh}\) などで表す。」と書いてある。

また,逆双曲線関数 – Wikipedia には

arcsinharccosh などが本来誤表記であるにも関わらす良く使用される」との記載がある。

逆双曲線関数の読み方

 逆双曲線関数の読み方については,これ!といったものが存在しないようだ。Wikipedia のように,\(\sinh^{-1} x\) を「アーク・ハイパボリック・サイン」と読んだり書いたりするな!とはあるが,ではなんと読めばいいかについては明言しているサイトや教科書が見当たらない。

「エリア・ハイパボリック・サイン」と読むべきなのだろうが聴き慣れないし,「アー・ハイパボリック・サイン」というのも,なんだかため息をついているようなので,ここでは英語表記のカタカナ直訳で「インバース・ハイパボリック・サイン」などと読んでみることとしよう。

\(\sinh^{-1} x\):「インバース・ハイパボリック・サイン・エックス」

\(\cosh^{-1} x\):「インバース・ハイパボリック・コサイン・エックス」

\(\tanh^{-1} x\):「インバース・ハイパボリック・コサイン・エックス」