乳酸菌用培地

乳酸球菌用の培地としてM17培地がありますね。この培地が最初に報告されたとき(Terzachi & Sandine, 1975),対照として用いられた培地の1つにT5培地(Thomas et al., 1974)がありました。T5培地はリン酸塩を含む培地で,M17培地と同等の緩衝能を示し,乳酸を著量生産する乳酸球菌用の培地として優れていましたが,沈殿が生じるため,清澄なM17培地の方が良いと結論づけられました。あれから50年,今ではすっかりM17培地が定着しましたね。

 

沈殿ができるという記述を読んで,「はぁ,そんなものかな」と思ったので,実際にT5培地を調製してみました。すると,できあがった培地は清澄で沈殿などできませんでした。そこでピンときました。彼等は蒸留水ではなくて,水道水を使ったのではないか。外国の水道水は硬水,すなわちミネラルを多く含む水,が多いと聞く。とくにリン酸はカルシウムと沈殿を作りやすいが,培地組成にはカルシウムが入っていない。そもそもの水が硬水だったのでは?と。

 

そこでコントレックス(硬度: 1468 mg/L, Ca: 468 mg/L, Mg: 74.5 mg/L)で培地調製してみました。コントレックスは超硬水として知られるミネラルウォーターです。で,その結果はというと,

はい,真っ白です。

ということで,蒸留水でつくればT5培地は清澄で良い培地だと思います。

今回は水が原因だろうと結論しましたが,当時もきちんと蒸留水を使って培地調製していたものの,ファイトンや酵母エキス中のミネラルが多かったせいで沈殿が生じた可能性もあります。つまり,現代の試薬は精製度が高いため沈殿ができなかっただけのことかもしれません。

とにかく,現代ではT5培地は清澄だということをお伝えしました。