発酵乳製品を科学する
牛乳から分離した乳酸菌を用いて,発酵乳製品の品質や製造法に関する研究に取り組んでいます。特に,乳を凝固させたり,芳香性物質や抗菌物質を生産する能力を持つ乳酸菌に注目し,発酵乳製品への活用を探っています。
1. 乳酸菌の分離・同定
牛乳などから乳酸菌を分離・同定しています。同定は生理学的な諸性質や16S rRNAの遺伝子配列によって行っています。得られた乳酸菌については,乳を凝固させる能力や芳香性物質・抗菌物質の生産能力を持つ乳酸菌の乳製品への応用を検討しています。

上:乳酸球菌,下:乳酸桿菌
2. チーズ製造における成分変化
ゴーダチーズはセミハードチーズの一種です。このチーズは熟成段階によって風味が変化し,若いうちはマイルドな味わいですが,熟成が進むにつれてナッツのような香りが加わり複雑な風味を呈します。ナッツの香りには複数の原因物質があり,ある種の乳酸菌はこの香り成分を生成することができます。私たちは,このような乳酸菌を使用してベビーゴーダチーズを製造し,チーズ内の風味成分の変化を研究しています。


上:熟成初日のベビーゴーダ,下:熟成1ヶ月後
3. 乳酸菌が生産する抗菌物質の応用
当研究室が保有するLactobacillus coryniformisは,抗菌物質ロイテリンを生産します。ロイテリンは真菌に対しても抗菌作用を示し,広い抗菌スペクトルを有しており,食品の保存性向上に貢献します。当研究室では,この乳酸菌をチーズに応用する方法について調べています。

上:ロックフォールチーズ用青カビ,下:カマンベールチーズ用白カビ
