ガウスの法則の積分形にガウスの定理を適用し,\(\boldsymbol{E}\) の垂直成分の面積分が体積内の全電荷で書けることを使って電場を求める。多少の物理的直感(この場合は何何対称だから静電ポテンシャルもこういう形に書けるよね,みたいな)は想定するけど,こちらの方が簡単な積分(ほぼ面積×法線成分)で済む。
つまり,ガウスの法則の積分形
\begin{eqnarray}
\nabla\cdot\boldsymbol{E} &=& \frac{\rho}{\varepsilon_0} \\
\iiint_V (\nabla\cdot\boldsymbol{E}) \,dV &=& \frac{1}{\varepsilon_0} \iiint_V \rho(r)\,dV = \frac{1}{\varepsilon_0}Q_V
\end{eqnarray}
(ここで $Q_V$ は体積 $V$ 内の全電荷)に,ガウスの定理
\begin{eqnarray}
\iiint_V (\nabla\cdot\boldsymbol{E})\,dV &=& \iint_S \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}\,dS
\end{eqnarray}
を適用し,
\begin{eqnarray}
\iint_S \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}\, dS &=&\frac{1}{\varepsilon_0} Q_V
\end{eqnarray}
となることを使って電場を求めるということ。ここで留意すべき点は,ガウスの法則を使って求められるのは体積 $V$ を囲む閉曲面 $S$ に垂直な電場の成分 $E_{\perp} \equiv \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}$ だけであり,それ以外の成分については何も言えないということ。なので,$E_{\perp}$ 以外の成分がないということを,系の対称性に基づいた推論とか,物理的直感とかでわかっていないといけない。
我々初学者は,そのような直感というものを持ち合わせていないので,以下ではポアソン方程式の右辺と左辺を見比べて,静電ポテンシャル $\phi$ は電荷密度 $\rho$ と同じ座標依存性を持つから… という推論で乗り切ろうと試みている。
軸対称な電荷分布による電場
\(z\) 軸を中心とした軸対称な電荷分布を表す電荷密度は $\varrho \equiv \sqrt{x^2 + y^2}$ とすると,
$$\rho(\boldsymbol{r}) \Rightarrow \rho(\sqrt{x^2 + y^2}) = \rho(\varrho)$$
であったから,ポアソン方程式
$$\nabla^2 \phi = -\frac{\rho(\varrho)}{\varepsilon_0}$$
から,静電ポテンシャル $\phi$ もまた $\varrho \equiv \sqrt{x^2 + y^2}$ のみの関数であることがわかる(って言い切ったけど,ちゃんと証明はできていない… )。
$$\phi(\boldsymbol{r}) \Rightarrow \phi(\varrho )$$
すると,電場 $\boldsymbol{E}$ は
\begin{eqnarray}
\boldsymbol{E} &=& -\nabla\phi(\varrho) \\
&=& -\frac{d\phi}{d\varrho} \nabla \varrho \\
&=& -\frac{d\phi}{d\varrho} \frac{\boldsymbol{\varrho}}{\varrho}\\
&\equiv& E(\varrho) \frac{\boldsymbol{\varrho}}{\varrho}
\end{eqnarray}
となり,電場 \(\boldsymbol{E}\) は \(z\) 軸に垂直な方向 \(\boldsymbol{\varrho} = (x, y, 0)\) に平行な成分のみを持つベクトルになり,その大きさ $E(\varrho)$ は \(z\) 軸からの距離 $\varrho=\sqrt{x^2 + y^2}$ のみの関数となる。
次に,マクスウェル方程式 の \((1)\) 式
$$ \nabla\cdot\boldsymbol{E} = \frac{\rho}{\varepsilon_0}$$
の両辺を \(z\) 軸を中心とした底面の半径 \(\varrho\),単位高さの円柱の体積 \(V\) で体積積分する。
$$\iiint_V (\nabla\cdot\boldsymbol{E})\,dV = \frac{1}{\varepsilon_o} \iiint_V \rho(\varrho)\,dV$$
右辺の積分は,以下のようにしてこの円柱内にある全電荷 \(Q_{\varrho}\) で書ける。
$$ \iiint_V \rho(\varrho)\,dV \equiv Q_{\varrho}$$
左辺はガウスの定理により,体積 \(V\) の表面である,円柱の側面 \(S\) での面積積分に帰着して…
\begin{eqnarray}
\iiint_V (\nabla\cdot\boldsymbol{E})\,dV &=& \iint_S \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}\, dS
\qquad\left(\boldsymbol{n} = \frac{\boldsymbol{\varrho}}{\varrho}\right) \\
&=& \iint_S E(\varrho)\,dS \\
&=& 2 \pi \varrho E(\varrho)
\end{eqnarray}
両辺を等しいとおいて
\begin{eqnarray}
2 \pi \varrho E(\varrho) &=& \frac{Q_{\varrho}}{\varepsilon_0} \\
\therefore\ \ E(\varrho) &=& \frac{Q_{\varrho}}{2 \pi \varepsilon_0 \varrho }\\
\therefore\ \ \boldsymbol{E} &=& E(\varrho) \frac{\boldsymbol{\varrho}}{\varrho} = \frac{Q_{\varrho}}{2\pi \varepsilon_0}\frac{\boldsymbol{\varrho}}{\varrho^2}
\end{eqnarray}
球対称な電荷分布による電場
電荷が原点について球対称に分布している場合,電荷密度 $\rho$ は原点からの距離 $r$ のみの関数となる。すると,ポアソン方程式
$$\nabla^2 \phi = -\frac{\rho(r)}{\varepsilon_0}$$
から,静電ポテンシャル $\phi$ もまた $r$ のみの関数であることがわかる(って言い切ったけど,いまのところ証明はできていない… )。
$$\phi(\boldsymbol{r}) \Rightarrow \phi(r) $$
すると,電場 $\boldsymbol{E}$ は
\begin{eqnarray}
\boldsymbol{E} &=& -\nabla\phi(r) \\
&=& -\frac{d\phi}{dr} \nabla r \\
&=& -\frac{d\phi}{dr} \frac{\boldsymbol{r}}{r}\\
&\equiv& E(r) \frac{\boldsymbol{r}}{r}
\end{eqnarray}
となり,電場 \(\boldsymbol{E}\) は動径方向 \(\boldsymbol{r}\) に平行な成分のみを持つベクトルになり,その大きさ $E(r)$ は距離 $r$ のみの関数となる。
次に,マクスウェル方程式 の \((1)\) 式
$$ \nabla\cdot\boldsymbol{E} = \frac{\rho}{\varepsilon_0}$$
の両辺を原点を中心とした半径 \(r\) の球の体積 \(V\) で体積積分する。
$$\iiint_V (\nabla\cdot\boldsymbol{E})\,dV = \frac{1}{\varepsilon_o} \iiint_V \rho(r)\,dV$$
右辺の積分は,以下のようにして半径 \(r\) の球内にある全電荷 \(Q_r\) で書ける。
$$ \iiint_V \rho(r)\,dV = 4\pi \int_0^r \rho(r) r^2\,dr \equiv Q_r$$
左辺はガウスの定理により,体積 \(V\) の表面である,半径 \(r\) の球面 \(S\) での面積積分に帰着して…
\begin{eqnarray}
\iiint_V (\nabla\cdot\boldsymbol{E})\,dV &=& \iint_S \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{n}\, dS
\qquad\left(\boldsymbol{n} = \frac{\boldsymbol{r}}{r}\right) \\
&=& \iint_S E(r)\,dS \\
&=& 4 \pi r^2 E(r)
\end{eqnarray}
両辺を等しいとおいて
\begin{eqnarray}
4 \pi r^2 E(r) &=& \frac{Q_r}{\varepsilon_0} \\
\therefore\ \ E(r) &=& \frac{Q_r}{4 \pi \varepsilon_0 r^2 }\\
\therefore\ \ \boldsymbol{E} &=& E(r) \frac{\boldsymbol{r}}{r} = \frac{Q_{r}}{4\pi \varepsilon_0}\frac{\boldsymbol{r}}{r^3}
\end{eqnarray}
したがって,この場合のクーロンの法則は
$$\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r}) = \frac{Q_r q}{4\pi\varepsilon_0} \frac{\boldsymbol{r}}{r^3}$$
となり,原点に点電荷 \(Q\) をおいた場合のクーロンの法則で \(Q\) を \(Q_r\) に置き換えた形になることに注意。
言い換えると,球対称な電荷分布がつくる電場は,半径 $r$ の全電荷 $Q_r$ が点電荷として原点にある場合の電場と等価である。あるいは,半径 $r$ 内に(球対称でさえあれば)どのような分布をしているかによらず,半径 $r$ の全電荷 $Q_r$ のみによって電場がきまる,といってもよいであろう。
面対称な電荷分布による電場
$x = $ の $yz$ 平面について面対称な電荷分布をあらわす電荷密度は
$$\rho(\boldsymbol{r}) \Rightarrow \rho(|x|)$$
これから,静電ポテンシャルもまた … のような形をしているはずだから… という議論で,ガウスの法則から電場を求めることができる。電場自体はすでに(体積積分を直接計算する方法で)求めているのだから,練習問題として,ガウスの法則からも求めることができることを示してください。