静磁場の基本方程式(アンペールの法則の微分形)
$$\nabla\times \boldsymbol{B} = \mu_0 \boldsymbol{J}$$
の両辺を以下のように面積分する。
\begin{eqnarray}
\iint_S (\nabla\times \boldsymbol{B} )\cdot\boldsymbol{n}\, dS &=& \mu_0 \iint_S \boldsymbol{J}\cdot\boldsymbol{n}\, dS
\end{eqnarray}
$\mu_0$ を除いた右辺は面積 $S$ を垂直に貫く全電流 $I$ になる:
$$\iint_S \boldsymbol{J}\cdot\boldsymbol{n}\, dS = I$$
また,左辺はストークスの定理から,面積 $S$ を囲む閉曲線 $C$ に沿った1周線積分になるのでしたね。
\begin{eqnarray}\iint_S (\nabla\times \boldsymbol{B} )\cdot\boldsymbol{n}\, dS &=& \oint_C \boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{r} \\
&=& \oint_C \boldsymbol{B}\cdot \frac{d\boldsymbol{r} }{d\ell} \, d\ell \\
&=& \oint_C \boldsymbol{B}\cdot \boldsymbol{t} \, d\ell
\end{eqnarray}
ここで,$\displaystyle \boldsymbol{t} \equiv \frac{d\boldsymbol{r} }{d\ell}$ は閉曲線 $C$ に沿った接ベクトル。$\boldsymbol{t}$ は単位ベクトルであり,
\begin{eqnarray}
\boldsymbol{t}\cdot\boldsymbol{t} &=&
\frac{d\boldsymbol{r} }{d\ell}\cdot\frac{d\boldsymbol{r} }{d\ell} = 1 \\
\therefore\ \ d\ell^2 &=& d\boldsymbol{r}\cdot d \boldsymbol{r}
\end{eqnarray}
となるから,$d\ell$ は閉曲線 $C$ に沿った微小長さということになる。
したがって,アンペールの法則の積分形は
$$\oint_C \boldsymbol{B}\cdot \boldsymbol{t} \, d\ell =\mu_0 \,I$$
これを使うと簡単に電流 $I$ がつくる磁場を求めることができそうですが,ここで留意すべき点は,アンペールの法則を使って求められるのは閉曲線 $C$ に沿った磁場ベクトルの成分 $B_t \equiv \boldsymbol{B}\cdot \boldsymbol{t}$ だけであり,それ以外の成分については何も言えないということ。なので,$B_t$ 以外の成分があるのかないのかを,系の対称性に基づいた推論とか,物理的直感とかでわかっていないといけない。