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電磁気学の基礎方程式を理解するために

電磁気学の基礎方程式

電磁気学の基礎方程式とは,クーロンの法則でもなく,オームの法則でもなく,キルヒホッフの法則とか,誰やれの右手の法則とか左手の法則とかでなく,以下のようなマクスウェル方程式である。

\begin{eqnarray}
\nabla\cdot \boldsymbol{D} &=& \rho \tag{1}\\
\nabla\cdot\boldsymbol{B} &=& 0 \tag{2}\\
\nabla\times\boldsymbol{E} + \frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t} &=& 0 \tag{3}\\
\nabla\times\boldsymbol{H} – \frac{\partial \boldsymbol{D}}{\partial t} &=& \boldsymbol{J} \tag{4}
\end{eqnarray}

マクスウェル方程式を理解するためには,微分,偏微分,ベクトル解析,さらには右辺に現れるギリシア文字の読み方… といった数学的道具立てや外国語!の理解が必要である。そこで…

人生になぜベクトルが必要か?

大きさだけでなく,大きさと向き・方向を表す量も人生には必要なのだよという話をします。ベクトルとは大きさと向きをもつ量です。それに対して,大きさだけをもつ量のことをスカラーと呼ぶことにします。

関連して,ベクトルの表記について,高校の数学ではおそらく $$ \vec{E}, \  \vec{B}, …$$ この授業では,ベクトルは数式用斜体フォントの太文字で以下のように書くことにします。$$\boldsymbol{E}, \ \boldsymbol{B}, …$$

問題:

花子さんが A 地点から10分かけて 1km 進み,B 地点に着いた。次にそこから 5 分かけて 500m 進み,C 地点に着いた。

  1. A 地点から C 地点まで行くのにかかった時間は?
  2. A 地点から C 地点までの距離は?
という問題に答えるために,ベクトルが必要!

人生になぜ微分が必要か?

「ファインマン物理学 I 力学」で紹介されている女性ドライバーと白バイ警官とのやりとりを例に,人生における微分の必要性について(「理工系の数学B」でやったことを)復習します。

人生になぜ「偏微分」が必要か?

高校で習った,そして「理工系の数学B」でもやった「微分」は1変数関数 \(f(x)\) に対する微分:
$$\frac{df}{dx} \equiv \lim_{h\rightarrow 0}\frac{f(x+h) – f(x)}{h}$$

我々の住む世界は3次元空間であり,(デカルト座標系をとると) \(x, y, z\) の3つの空間座標(変数)で記述される。また,一般に物理量は時間とともに変化するから,時間座標 \(t\) にも依存する。つまり,我々が電磁気学で扱う量は \(f(x, y, z, t)\) のように一般的には4つの変数に依存する多変数関数である。多変数関数の微分として「偏微分」がある

… などのような数学的道具立ての説明を先にします。全てはマクスウェル方程式を理解し,電磁気学を理解するために必要なことだと言い聞かせて,モチベーションを維持してください。

ベクトルの書き方とギリシア文字の読み方

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