マクスウェル方程式の (1) 式の積分表示
(1) 式の両辺を体積分して,
$$\iiint_V \nabla\cdot \boldsymbol{D} \,dV = \iiint_V \rho \,dV$$
この右辺 \(\displaystyle \iiint_V \rho \,dV\) は,電荷密度 \(\rho\) \( (\mbox{C}/\mbox{m}^3) \) の体積 \(V\) \((\mbox{m}^3)\) での積分なので,体積 \(V\) 内の全電荷 \(Q (\mbox{C})\) となる。
$$\iiint_V \rho \,dV = Q$$
電荷 \((\mbox{C})\) は電気力線のわき出す本数(負の場合は吸い込まれる本数)を表すから,この右辺は体積 \(V\) からわき出す電気力線の総本数を表すことになる。
一方,左辺 \( \iiint_V \nabla\cdot \boldsymbol{D} \,dV\) はガウスの定理を使って,
$$\iiint_V \nabla\cdot \boldsymbol{D} \,dV = \iint_S \boldsymbol{D}\cdot\boldsymbol{n}\, dS$$
となり,これは電束密度 \(\boldsymbol{D}\) \((\mbox{C}/\mbox{m}^2)\) の垂直成分 \( \boldsymbol{D}\cdot\boldsymbol{n}\) を,体積 \(V\) を囲む閉曲面 \(S\) \((\mbox{m}^2)\) 上で積分するのであるから,閉曲面 \(S\) を貫いて外側へ出ていく電気力線の総本数となり,ガウスの定理により,左辺と右辺のつじつまが合うようになっている。
$$ \iint_S \boldsymbol{D}\cdot\boldsymbol{n}\, dS = Q$$
これは,電荷が存在するとそこから電気力線の束がわき出したり(負電荷の場合は吸い込まれたり)する,もっと大雑把に言うと,電荷があるとそのまわりに電場ができるということを表している。この式は「ガウスの法則」と呼ばれている。
マクスウェル方程式の (2) 式の積分表示
(2) 式の両辺を体積分して
$$\iiint_V \nabla\cdot \boldsymbol{B} \,dV = 0$$
左辺 \(\displaystyle \iiint_V \nabla\cdot \boldsymbol{B} \,dV\) はガウスの定理を使って,
$$\iiint_V \nabla\cdot \boldsymbol{B} \,dV = \iint_S \boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}\, dS$$
となり,これは磁束密度 \(\boldsymbol{B}\) \((\mbox{T} = \mbox{Wb}/\mbox{m}^2)\) の垂直成分 \( \boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}\) を,体積 \(V\) を囲む閉曲面 \(S\) \((\mbox{m}^2)\) 上で積分するのであるから,閉曲面 \(S\) を貫いて外側へ出ていく磁力線の総本数となる。まとめると,
$$\iint_S \boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}\, dS =0$$
これがゼロであるということは,ただちに磁力線の本数がゼロということを示すのではなく,一般には,外に出ていく磁力線の本数と,反対に外から内に入ってくる磁力線の本数が等しいことを意味する。
いかなる体積で考えようとも,その体積を囲む閉曲面から出ていく磁力線の本数と閉曲面に入ってくる本数とは等しい。磁力線には,わき出し口も吸い込み口も単独では存在しないのである。その意味で,磁力線のわき出し口に相当する「正の磁荷」(N極)や吸い込み口に相当する「負の磁荷」(S極)は,(単独では)存在しえない。
何度もいうが,マクスウェル方程式の (2) 式である \( \nabla\cdot\boldsymbol{B}=0\) の意味するところは極めて興味深い。形としては「磁場に対するガウスの法則」と呼ぶべきものであるが,右辺が常にゼロであることから,その意味を以下のように標語的に覚えておくといいだろう。
マクスウェル方程式の (2) 式 \( \nabla\cdot\boldsymbol{B} = 0\) は以下のことを意味する:磁気単極子は存在しない。磁力線のわき出し口に相当する「正の磁荷」(N極)や吸い込み口に相当する「負の磁荷」(S極)は,単独では存在しえない。必ず対になって(プラスマイナスゼロのように)現れる。