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双曲線関数の定義とその微分

三角関数と紛らわしい表記の「双曲線関数」の定義とその微分。
$$\cosh x \equiv \frac{e^x + e^{-x}}{2}, \quad \sinh x \equiv \frac{e^x -e^{-x}}{2}, \quad \tanh x \equiv \frac{\sinh x}{\cosh x}$$$$(\cosh x)’ = \sinh x, \quad (\sinh x)’ = \cosh x, \quad (\tanh x)’ = \frac{1}{\cosh^2 x}$$


指数関数および三角関数に関連して,「双曲線関数」の定義とその微分についてまとめる。双曲線関数は三角関数と紛らわしい表記であり,その性質もなんとなく類似性がある。後に「人類の至宝:オイラーの公式」の段で,双曲線関数と三角関数は密接な関係があることがわかるので,そこまではしばらく辛抱してください。双曲線関数はスマホアプリの「計算機」でも使えます。(以下は iPhone の例。横向きにする。)

また,双曲線関数なんて所詮,指数関数から作られるだけだから,指数関数さえ覚えておけばわざわざ双曲線関数などとあらためて覚えておく必要はないだろう… という人もいるかもしれない。しかし,力学の減衰振動問題や,宇宙論においてフリードマン(FLRW)モデルに関わる問題では,双曲線関数を使った統一的理解が不可欠である。だから,宇宙論を勉強したい人(や,少なくとも力学の減衰振動問題をすっきり理解したい人)は,しっかりと双曲線関数を理解しておいたほうが絶対お得!です(たぶん)

たとえば,宇宙膨張をあらわすスケール因子の表記には三角関数や双曲線関数が出てきますよ。以下のページなどを参照:

双曲線関数の定義

ハイパボリックコサイン $\cosh x$

$$y = \cosh x \equiv \frac{e^x + e^{-x}}{2}$$ \(\cosh x\) の読み方は「ハイパボリックコサイン・エックス」。定義域と値域は,

$$ -\infty < x < \infty, \qquad 1 \leq y < \infty$$

ハイパボリックサイン $\sinh x$

$$y = \sinh x \equiv \frac{e^x -e^{-x}}{2}$$ \(\sinh x\) の読み方は「ハイパボリックサイン・エックス」。

定義域と値域は,

$$ -\infty < x < \infty, \qquad -\infty < y < \infty$$

ハイパボリックタンジェント $\tanh x$

$$y = \tanh x \equiv \frac{\sinh x}{\cosh x} = \frac{e^x -e^{-x}}{e^x + e^{-x}}$$ \(\tanh x\) の読み方は「ハイパボリックタンジェント・エックス」。

定義域と値域は,

$$ -\infty < x < \infty, \qquad -1 < y < 1$$

双曲線関数の性質

\( \cosh x\) は偶関数であり,\(x = 0\) での値は \(1\)。(そういえば \(\cos x\) も偶関数であり,\(x = 0\) での値は\(1\) だったなぁ。)

$$ \cosh (-x) = \frac{e^{-x} + e^{x}}{2} = \frac{e^x + e^{-x}}{2} = \cosh x$$
$$ \cosh  0 = \frac{e^0 + e^{-0}}{2} = \frac{1 + 1}{2} = 1$$

\( \sinh x\) は奇関数であり,\(x = 0\) での値は \(0\)。(そういえば \(\sin x\) も奇関数であり,\(x = 0\) での値は\(0\) だったなぁ。)

$$ \sinh (-x) = \frac{e^{-x} -e^{x}}{2} = -\frac{e^x -e^{-x}}{2} = -\sinh x$$

$$ \sinh  0 = \frac{e^0 -e^{-0}}{2} = \frac{ 1 -1}{2} = 0$$

\( (\cosh x)^2\) と \( (\sinh x)^2\) との間の関係。

$$\cosh^2 x -\sinh^2 x = \frac{e^{2x} + 2 + e^{-2x}}{4} -\frac{e^{2x} -2 + e^{-2x}}{4} = 1$$(そういえば,\(\cos^2 x + \sin^2 x = 1\) と符号がちょっと違うけど似てるなぁ。)

さらには,以下のような「加法定理」も成り立つ。

$$\cosh(x + y) = \cosh x \cosh y + \sinh x \sinh y$$
$$\sinh(x + y) = \sinh x \cosh y + \cosh x \sinh y$$
(そういえば,
$$ \cos(x + y) = \cos x \cos y -\sin x \sin y, \ \ \sin(x+y) = \sin x \cos y + \cos x \sin y$$と符号がちょっと違うけど似てるなぁ。)

直接計算して証明してみる。
\begin{eqnarray}
\cosh x \cosh y + \sinh x \sinh y &=& \frac{e^x + e^{-x}}{2} \frac{e^y + e^{-y}}{2} + \frac{e^x -e^{-x}}{2}\frac{e^y -e^{-y}}{2}\\
&=& \frac{e^{x+y} + e^{x-y} +e^{-x+y} +e^{-x-y} }{4} \\
&& \quad  + \frac{e^{x+y} -e^{x-y} -e^{-x+y} +e^{-x-y}}{4} \\
&=& \frac{2e^{x+y} + 2e^{-(x+y)}}{4} = \cosh (x + y)
\end{eqnarray}\(\sinh(x + y)\) についても同様。

双曲線関数の微分

先に答えをまとめておく。

$$(\cosh x)’ = \sinh x, \quad (\sinh x)’ = \cosh x, \quad (\tanh x)’ = \frac{1}{\cosh^2 x}$$

(そういえば,$$ (\cos x)’ = -\sin x, \quad (\sin x)’ = \cos x, \quad (\tan x)’ = \frac{1}{\cos^2 x}$$と符号がちょっと違うけどにてるなぁ。)

\((\cosh x)’, (\sinh x)’ \) については定義から明らか。念のために \( (\cosh x)’ \) について微分してみると,
$$(\cosh x)’ = \left(\frac{e^x + e^{-x}}{2}\right)’ = \frac{e^x -e^{-x}}{2} = \sinh x$$ \( (\sinh x)’ \) についても簡単に導ける。

また,\((\tanh x)’\) については,
\begin{eqnarray}
(\tanh x)’ &=& \left(\frac{\sinh x}{\cosh x}\right)’ \\
&=& \frac{(\sinh x)’ \cosh x -\sinh x (\cosh x)’}{\cosh^2 x} \\
&=& \frac{\cosh x\, \cosh x -\sinh x \, \sinh x}{\cosh^2 x} = \frac{1}{\cosh^2 x}
\end{eqnarray}

双曲線関数のグラフ

3つまとめてグラフにすると…