(あんたの公式ではなく)オイラーの公式とは,
$$e^{i \theta} = \cos \theta + i \sin \theta$$
(大人になって)オイラーの公式がわかるようになると,アイで結ばれた密接な関係もわかるようになります!?
テイラー展開(マクローリン展開)によるオイラーの公式の証明
指数関数の肩が実数だろうが虚数だろうが,テイラー展開(\(x=0\) のまわりの展開なので特にマクローリン展開ともいう)はできるので
$$f(x) = f(0)+ f'(x) x + \frac{1}{2} f^{”}(0) x^2 + \cdots + \frac{1}{n!} f^{(n)}(0) x^n + \cdots$$
の公式に従って,
$$ e^{x} = 1 + x + \frac{1}{2} x^2 + \frac{1}{3!} x^3 + \frac{1}{4!} x^4 + \cdots$$
\( x = i \theta \) を入れると
\begin{eqnarray}
e^{i \theta} &=&1 + i\theta + \frac{1}{2!}(i\theta)^2 + \frac{1}{3!} (i\theta)^3 + \frac{1}{4!}(i\theta)^4 + \frac{1}{5!}(i\theta)^5 + \cdots\\
&=& {\color{red}{1 -\frac{1}{2!} \theta^2 + \frac{1}{4!} \theta^4 -\cdots}} \\
&& + i\,\left\{ {\color{blue}{ \theta -\frac{1}{3!} \theta^3 + \frac{1}{5!} \theta^5 -\cdots}}\right\}
\end{eqnarray}
一方,\(\cos \theta, \sin \theta\) のテイラー展開が
$${\color{red}{\cos \theta}} = \color{red}{1 -\frac{1}{2!} \theta^2 + \frac{1}{4!} \theta^4 -\cdots}$$
$${\color{blue}{\sin \theta}} = \color{blue}{\theta -\frac{1}{3!} \theta^3 + \frac{1}{5!} \theta^5 -\cdots}$$
であることを使うと,以下のように書けることがわかる。
$$e^{i \theta} = {\color{red}{\cos \theta}} + i\, {\color{blue}{\sin\theta}}$$
これこそが,人類の至宝!オイラーの公式である!
- ファインマン物理学 Ⅰ 力学,p.307,「これは我々の至宝である。」
オイラーの等式
\( \theta = \pi \) のときのオイラーの公式は,以下のようになり,
$$ e^{i \pi} = \cos \pi + i \sin \pi = -1$$$$\therefore\ \ e^{i \pi} + 1 = 0$$
特にこの式をオイラーの等式と呼んでいる。オイラーの等式の何がすごいかというと
- ゼロ \(0\),単位元 \(1\) という整数のもっとも基本となる数
- 無理数の代表選手,円周率 \(\pi\),自然対数の底 \(e\)
- そして虚数単位 \(i\)
といういずれ劣らぬスーパースター達が,加法,乗法,指数関数によって見事に結び付けられているということ!
オイラーの公式からみた三角関数と双曲線関数の関係
オイラーの公式$$e^{i\theta} = \cos\theta + i \sin\theta$$ と, \(\theta\) を\( – \theta\) にした
\begin{eqnarray}
e^{ – i\theta} &=& \cos( – \theta) + i\sin( – \theta) \\
&=& \cos\theta -i \sin\theta
\end{eqnarray}
の辺々(左辺同士,右辺同士)を足すと…
\begin{eqnarray}
\ & e^{i\theta} &= \cos\theta + i \sin\theta \\
+)& e^{ – i \theta} &= \cos\theta -i \sin\theta \\
\hline
&e^{i\theta} + e^{ – i\theta} &= 2 \cos\theta \\ \ \\
\therefore\ \ &\frac{e^{i\theta} + e^{ – i\theta}}{2} &= \cos\theta
\end{eqnarray}
あるいは辺々引くと…
\begin{eqnarray}
\ & e^{i\theta} &= \cos\theta + i \sin\theta \\
-)&e^{ – i\theta} &= \cos\theta -i \sin\theta \\
\hline
&e^{i\theta} -e^{ – i\theta} &= 2 i \sin\theta \\ \ \\
\therefore\ \ &\frac{e^{i\theta} -e^{ – i\theta}}{2 i} &= \sin\theta
\end{eqnarray}
つまり,以下のように書けることがわかる。
\begin{eqnarray}
\cos\theta &=& \frac{e^{i\theta} + e^{ – i\theta}}{2} \\
\sin\theta &=& \frac{e^{i\theta} -e^{ – i\theta}}{2 i}
\end{eqnarray}
一方,双曲線関数は以下のように定義されていた。
\begin{eqnarray}
\cosh x &=& \frac{e^x + e^{ – x}}{2}\\
\sinh x &=& \frac{e^x -e^{ – x}}{2}
\end{eqnarray}
三角関数や双曲線関数の変数が虚数でもいいのだと拡張すると,
\begin{eqnarray}
\cosh (i\theta) &=& \frac{e^{i\theta} + e^{ – i\theta}}{2} = \cos\theta\\
\sinh (i\theta) &=& \frac{e^{i\theta} -e^{ – i\theta}}{2} = i \sin\theta\\
\cos(i x) &=& \frac{e^{i\cdot i x} + e^{ – i\cdot i x}}{2} = \frac{e^{x} + e^{ – x}}{2} = \cosh x\\
\sin(i x) &=&\frac{e^{i\cdot i x} -e^{ – i\cdot i x}}{2 i} = i \frac{e^x -e^{ – x}}{2} = i \sinh x
\end{eqnarray}
これらが,三角関数と双曲線関数のアイで結ばれた関係である。
三角関数と双曲線関数は,ただまぎらわしいほどに似た表記なだけでなく,実に密接な(アイで結ばれた)関係なのだということがわかると思う。
ありがとう! オイラーの公式!!
逆三角関数と逆双曲線関数の関係
ついでに,宇宙論のところで実際に使うので,逆三角関数と逆双曲線関数のアイで結ばれた関係についてもまとめておく。
まず,$\cos$ 系については
$$\cosh (i\theta) = \cos\theta \equiv x$$
とおくと,$x = \cosh (i\theta), \ x = \cos\theta$ より
$$\cosh^{ – 1} x = i\theta, \quad \cos^{ – 1} x = \theta$$
$$\therefore\ \ \cos^{ – 1} x = -i \cosh^{ – 1} x$$
$\sin$ 系については
$$\sinh (i\theta) = i \sin\theta \equiv x$$
とおくと,$x = \sinh (i\theta), \ -i x = \sin\theta$ より
$$\sinh^{ – 1} x = i\theta, \quad \sin^{ – 1} (i x) = -\theta$$
$$\therefore\ \ \sin^{ – 1} (i x) = i \sinh^{ – 1} x$$
同様にして,以下もわかるだろう。
$$\sinh^{ – 1} (i x) = i \sin^{ – 1} x$$
$\tan$ 系については
$$\tanh (i\theta) = i \tan\theta \equiv x$$
とおくと,$x = \tanh (i\theta), \ -i x = \tan\theta$ より
$$\tanh^{ – 1} x = i\theta, \quad \tan^{ – 1} (i x) = -\theta$$
$$\therefore\ \ \tan^{ – 1} (i x) = i \tanh^{ – 1} x$$
また,以下もわかるであろう。
$$\tanh^{ – 1} (i x) = i \tan^{ – 1} x$$
… 以上,数学の授業で愛(アイ)を語る教員,葛西でした…