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べき関数の微分

正の整数 \(n\) に対して,$$(x^n)’ = n\, x^{n-1}$$ は知っているとして,正にかぎらず,任意の整数についても同じ微分の公式が成り立つこと,さらには整数でなくても,有理数(整数分の整数)乗のべき関数でも,最終的には任意の実数 \(r\) について
$$(x^r)’ = r\,x^{r-1}$$
となることもわかると思う。(\(r\) が任意の「実数」の場合は,後で証明する。)

証明

念のために,証明。ここでは「べき指数」\(n\) が正の整数の場合,負の整数の場合,有理数(2つの整数の分数で表される数)の場合に証明する。

べき指数が正の整数の場合

$$(x^n)’ = n\, x^{n-1} \quad (n = 1, 2, 3, \dots) $$ を数学的帰納法で証明。

まず,\(n = 1\) のときは,
$$x’ = 1 = 1 \cdot x^0$$ であるから,成り立っている。
次に,\( n = k\) のとき成り立つと仮定すると,
$$ (x^k)’ = k\, x^{k-1}$$
ライプニッツルールを使うと,
\begin{eqnarray}
(x^{k+1})’ &=& (x\cdot x^{k})’ \\
&=& x’ \cdot x^k + x\cdot (x^k)’ \\
&=& 1\cdot x^k + x\cdot k \,x^{k-1} \\
&=& (k+1)\,x^k
\end{eqnarray}

したがって,\(n = k+1\) のときにも成立する。したがって,全ての \(n = 1, 2, 3, \dots\) について成り立つことが証明された。

べき指数が負の整数の場合

次に,負の整数 \(n = -1, -2, -3, \cdots\) についての証明は,\(n = -m, \ m = 1, 2, 3, \cdots\) とおいて
$$ (x^{-m})’ = (-m)\,x^{-m-1} \quad (m = 1, 2, 3, \cdots)$$ を示せばよい。
これは,微分法の公式 4. を使って,
\begin{eqnarray}
(x^{-m})’ &=& \left\{\frac{1}{x^m}\right\}’ \\
&=& -\frac{(x^m)’}{x^{2m}} \\
&=& -m\,x^{(m-1)-2m} \\
&=& -m\,x^{-m-1}
\end{eqnarray}

また,\( n=0\) のときは,
$$(x^0)’ = (1)’ = 0$$ なので,\(n=0\) とした公式が成り立っている。ここまでをまとめると,全ての整数 \(n\) に対して以下が成り立つ。
$$(x^n)’ = n\, x^{n-1} \quad (n = 0, \pm 1, \pm 2, \pm 3, \dots)$$

べき指数が有理数の場合

最後に,べき指数が一般に有理数 \(r\) の場合にも
$$(x^r)’ = r\, x^{r-1}$$ が成り立つことは,有理数 \(r\) が整数 \(m, n\) 同士の割り算で書けることから,\(\displaystyle r = \frac{m}{n}, n > 0\) として
\begin{eqnarray}
y &=& x^r = x^{\frac{m}{n}} \\
\therefore \ y^n &=& x^m \\
\frac{d y^n}{dx}&=& \frac{d x^m}{dx} \\
\frac{d y^n}{dy} \frac{dy}{dx}&=&m\,x^{m-1}\\
n\,y^{n-1} \frac{dy}{dx}&=& m\,x^{m-1}
\end{eqnarray}
したがって,
\begin{eqnarray}
\frac{dy}{dx} &=& \frac{m\, x^{m-1}}{n\,y^{n-1}} \\
&=& \frac{m}{n} \frac{x^{m-1}}{x^{\frac{m}{n}(n-1)}} \\
&=& \frac{m}{n} \frac{x^{m-1}}{x^{m-\frac{m}{n}}} \\
&=& \frac{m}{n} x^{\frac{m}{n} -1}\\
&=& r\, x^{r-1}
\end{eqnarray}

べき関数のグラフ

多項式等の微分

すると,正の整数 \(n\) によるべき関数 \( x^n\) の線形結合からつくられる以下のような「多項式」と呼ばれる関数
$$f(x) = a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \cdots + a_1 x + a_0 $$
について,その微分 \(f'(x)\) を求めることも簡単にできるし,「多項式分の多項式」で表される「有理関数」の微分も簡単ですね。多項式の平方根などで表される無理式の積分も「無理です」なんて言わないで,多項式のべき乗なので,ちゃんと微分できますよね。

多項式の微分は,具体的には,微分法の公式 1. と 2. を使って,
\begin{eqnarray}
f'(x) &=& (a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \cdots + a_1 x + a_0 )’ \\
&=& a_n (x^n)’ + a_{n-1} (x^{n-1})’  + \cdots + a_1 (x)’  \\
&=& a_n n x^{n-1} + a_{n-1} (n-1) x^{n-2} + \cdots + a_1
\end{eqnarray}