マクスウェル方程式の (3) 式の積分表示
(3) 式の両辺を一定の曲面 \(S\) で面積分して(第2項を右辺に移項してやると),
$$\iint_S (\nabla\times \boldsymbol{E})\cdot\boldsymbol{n}\, dS = \iint_S \left(-\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t} \right) \cdot\boldsymbol{n}\, dS$$
左辺はストークスの定理を使って,
$$\iint_S (\nabla\times \boldsymbol{E})\cdot\boldsymbol{n}\, dS = \oint_C \boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{r}$$
となり,これは電場 \(\boldsymbol{E}\) の「閉曲線 \(C\) に沿った成分の1周線積分」となる。一般に,「閉曲線 \(C\) に沿った成分の1周線積分」のことを「閉曲線 \(C\) に沿った循環」というので,\(\displaystyle \oint_C \boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{r} \) は「電場 \(\boldsymbol{E}\) の閉曲線 \(C\) にそった循環」であり,特にこの電場 \(\boldsymbol{E}\) の循環のことを「誘導起電力」と呼ぶ。(なぜ「力」が生じるのかは,後で。)
また右辺は,曲面 \(S\) およびそれを囲む閉曲線 \(C\) が一定で時間変化しないとしたから,
$$\iint_S \left(-\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t} \right) \cdot\boldsymbol{n}\, dS = – \frac{d}{dt} \iint_S \boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}\, dS$$
となり,これは磁束密度 \(\boldsymbol{B}\) の「曲面 \(S\) に垂直な成分の面積積分」となる。一般に,「曲面 \(S\) に垂直な成分の面積積分」のことを「曲面 \(S\) を貫く流束」というので,\(\displaystyle \iint_S \boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}\, dS \) は「磁束密度 \(\boldsymbol{B}\) の曲面 \(S\) を貫く流束」であり,特にこの場合は「磁束」そのものになる。
したがって,(3) 式の積分表示をあたらめてみると
$$\oint_C \boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{r} = – \frac{d}{dt} \iint_S \boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{n}\, dS$$
となり,曲面 \(S\) を貫く磁束が時間変化すると誘導起電力が生じることを表しており,これは「ファラデーの法則」である。
誘導起電力とはつまり電場が生じることであるから,そこに荷電粒子があると(後述するようにローレンツ力という)力がはたらき,荷電粒子はじっとしていられず閉曲線にそって動きだす,つまり電流が流れるということになる。
マクスウェル方程式の (4) 式の積分表示
マクスウェル方程式の (4) 式は「アンペール-マクスウェルの法則」と呼ばれるが,簡単のために電束密度が時間変化しない \(\displaystyle \frac{\partial \boldsymbol{D}}{\partial t} = \boldsymbol{0}\) として,両辺を曲面 \(S\) で面積分すると,
$$\iint_S (\nabla\times \boldsymbol{H})\cdot\boldsymbol{n}\, dS =\frac{1}{\mu_0}\iint_S (\nabla\times\boldsymbol{B})\cdot\boldsymbol{n}\, dS = \iint_S \boldsymbol{J} \cdot\boldsymbol{n}\, dS$$
左辺はストークスの定理を使って,
$$\frac{1}{\mu_0}\iint_S (\nabla\times \boldsymbol{B})\cdot\boldsymbol{n}\, dS =\frac{1}{\mu_0} \oint_C \boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{r}$$
となり,積分部分は閉曲線 \(C\) に沿った磁束密度 \(\boldsymbol{B}\) の循環である。
また,右辺 \(\displaystyle \iint_S \boldsymbol{J} \cdot\boldsymbol{n}\, dS \) は,曲面 \(S\) を貫く電流 \(I\) をあらわす。
$$ \iint_S \boldsymbol{J} \cdot\boldsymbol{n}\, dS = I$$
まとめると,
$$\oint_C \boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{r} = \mu_0 I$$
となり,電流が流れるとその周りに磁束密度の循環ができること,もっと大雑把に言うならば,電流が流れると磁場ができることを表している。これが「アンペールの法則」である。
マクスウェルは,電場(電束密度)が時間的に変化することによっても磁場が生じることを見出し,\(\displaystyle \frac{\partial \boldsymbol{D}}{\partial t}\) の項を付け加えたため,(4) 式は「アンペール-マクスウェルの法則」と呼ばれることになった。