7T選抜系統を学生実験により変異体調査を進めてきました.得られた変異体候補を2023年に水田においてM2個体として栽培しました.そのうちの1系統はsugary変異体と類似する特徴を示しました.

 

 

デンプン合成系は胚乳デンプンの蓄積のために非常に重要な遺伝子群の発現によります.講義でもお話していますがAGPaseから始まる遺伝子は枝切り酵素であるPULL,ISAにより結晶構造の形成にいたります.

その最後のISAの機能喪失がsugary変異として報告されています(Kubo et al. 2005).表現型からも同遺伝子の機能喪失であると推定される変異体が固定できました.劣性変異であり,乾燥するとしわになります.このアミロペクチンの構造が長鎖であることから難消化性デンプンとしても機能するようです.糖分接種が問題となるインシュリンが機能しないI型変異の糖尿病の方には利用しやすいコメとなることが報告されています.当研究室では多収,大粒型からの変異体ですので収量もある程度見込まれます.今後,卒論課題として機能検証をすすめることで遺伝子の品種への利用を検証していきます.

既に当学部濱田先生がsugaryにおける収量性を向上した系統を育成しており,今後の活用も期待されています.同系統同様に今回の系統は多収系統から独立に得られた変異体です.今後の活用が望まれます.

 

 

引用:

Kubo et al. Plant Physiol. 2005 Jan; 137(1): 43–56. doi: 10.1104/pp.104.051359

弘前大学農学生命科学部 分子生命科学部 濱田准教授 Kagaku to Seibutsu 57(9): 520-521 (2019)​

農研機構: あゆのひかりにおけるfiとグリコーゲンの簡易検討と品種の特性https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/nics/2013/nics13_s01.html

https://www.naro.go.jp/english/laboratory/carc/files/Bull_NARC_09_1.pdf