有望系統の品種化へ
奥(沖縄県国頭村奥地区)のシークヮーサー
奥には多様なシークヮーサーがあり,これまでもDNA多様性解析をすすめてきました.
その中でも一般的なものは皮が厚く香りの高いものやクガニーと呼ばれるジューシーなものなどが栽培されています.これらと最も異なるものは熟期が異なる系統があることです.
開花と塾した実がともになっている四季成り
通常,4月に花をさかせます.2016年には4月3日には奥の谷間にかぐわしいフレッシュなシークヮーサーの花の香りが満ちていました.
青い果実は9月から青切りとして利用され始めます.まだ青く酸っぱいことが特徴です.そのため,泡盛にいれたり,刺身にかけることもあります.1月になると完熟して甘くなり酸度は低くなります.この時期には本州では温州ミカンの最盛期です.そのため,輸送も必要な完熟シークヮーサーは本州では一般的に知られていません.一方で,多様な系統の中には1月にも花を咲かせながら熟した実もつける系統があります.この系統は,10月にも黄金色の甘味のある果実をつけていることから年に数回は開花していることになります.今回も特定の樹だけには開花しているものと完熟のもの,そして果実がつき始めたばかりのものなどが混在していました.2年間の特性検定を行って品種登録を目指すとともに開花の遺伝的メカニズムを明らかにすることに取り組みます.
今回の調査時には奥ではすでに寒緋桜が開花はじめていました(1月20日).これから定期的に材料のサンプリングにいって様子をお知らせします.学生もつれていけるときは大がかりな調査を行うことになるでしょう.
これまでの調査:地球研の大西プロジェクトでは様々な社会ストレスを抱える地域においてそれを支えられる文化多様性を検証することを目指していました.その1つの調査地域が沖縄でした.PNGならびにタイの東北部も検証のための地域に設定していました.沖縄では最も多くの研究がすすめられており,わたしは沖縄の在来カンキツであるシークヮーサーの多様性評価を行いました.実際の現地調査ではGPSを記録しながら果実の遺伝子型,酸度,糖度を計測していました.また,在来種からゲノムを取得して,マーカー開発や葉緑体ゲノム完全長の解析と登録を行いました.これらのデータをもとに野生種と栽培種を比較して,野生種>栽培種での多様性,栽培種(奥)>栽培種(大宜見など)の多様性の違いから,優良品種を選抜した集約的な栽培をすすめる大宜味村や,まだ多様なシークヮーサーを残している奥地区の栽培状況がわかってきました.これらは論文にして発表しています.
シークヮーサーの多様性についてはこちら
Dinh Thi Lam and Ryuji Ishikawa (2018)Molecular discrimination of landraces of Citrus species in the Okinawa,Japan. Genet. Resour. Crop Evol. 66:321−333.(Published online: 21 Nov 2018) https://doi.org/10.1007/s10722-018-0710-x()
DOI 10.1007/s10722-018-0710-x(査読有)
shikawa, R., N. Badenoch, K. Miyagi, K. Medoruma, T. Osada, M. Oonishi. (2016) Multi-lineages of of Shiikuwasha (Citrus depressa Hayata) evaluated by using whole chloroplast genome sequences and its bio-diversity in Okinawa, Japan. Breed. Sci. 66:490-498. (査読有)
環境人間学と地域 シークヮーサーの知恵 やんばるの「コトバ-暮らし-生きもの環」 大西正幸・宮城邦昌 編著
石川隆二 (2016) 第1章 奥で保存活用されるシークヮーサーの知恵(大西正幸・宮城邦昌 編著)環境人間学と地域 シークヮーサーの知恵 やんばるの「コトバ-暮らし-生きもの. pp.33-66,京大出版会,京都,日本.ISBN: 9784814000258 発行年月: 2016/03
大西正幸・石川隆二・ネイサン・バデノック (2016) 終章 「コトバ-暮らし-生きもの環」の未来 ー奥・やんばるモデルを共有する.(大西正幸・宮城邦昌 編著)環境人間学と地域 22シークヮーサーの知恵 やんばるの「コトバ-暮らし-生きもの. pp.465-501,京大出版会,京都,日本.ISBN: 9784814000258 発行年月: 2016/03