7T選抜系統から得られた低アミロース変異

(左が正常,右がにごった胚乳で低アミロース候補)

 

当研究室では多収系統であり,かつ温暖化耐性の胴割れ耐性品種を開発しています.そのうち大粒の系統を利用して化学変異原により新たな形質を作出しています.そのうちの有望な変異が低アミロースです.一般にデンプンはその構造からアミロースとアミロペクチンにわけられます.アミロースが高いとぱさぱさとなり,野生イネでは25〜30%程度,栽培種でもインド型品種では25%程度,日本の品種は良食味品種では18%程度,もち品種で0%となります.残りの70〜100%がアミロペクチンで構成されます.結晶構造をとり,葉緑体が分化したアミロプラストに蓄積されます.低アミロースはお弁当などにも利用される冷めても美味しいお米として知られています.

下に示したのは当研究室が単離したM1個体(変異原処理当代)で分離した低アミロース変異です.やや1/4より少なめです.おそらくキメラ性による変異細胞の分化により穂まで形成された組織において完全なヘテロ型になっていなかったかもしれません.優性は透き通った通常のうるち米,やや白い玄米(Dullともいわれます)が低アミロース候補個体です.2023年にはこの優性型から分離する系統を選抜,さらに劣性系統からホモ型での固定をすすめて遺伝解析を行います.NGSによる全ゲノムからこれまで知られている低アミロース遺伝子群との構造比較を行ったところ,1つの既知の遺伝子のプロモーターに1bpの欠失が見られました.このINDELが原因であれば,この変異と完全連鎖示すはずです.これは学生実験にも使えますね.さて,原因遺伝子を確認してアミロースを測定したら論文にしましょうか.また,このまま品種として,多収,香り米,胴割れ耐性,大粒系統の低アミロースとして申請することも検討しています.香りをぬくための交雑による新たな品種開発も必要です.

 

 

よく知られている低アミロース系統は以下に示したものが有名です.

北海309号:彩.「ニホンマサリ」にγ線(60Ca)を照射してWx変異を作出した低アミロース突然変異系統 「NM391」に「イシカリ」を交配した組合せから,永系74271

キタアケと交配して,「彩」:「永系84271(道北43号) × キタアケ」の雑種第一代(F1)を葯培養して育成

 

MNU:

du1~du5,From Hwacheong, du6a,du6b, dominant Du7

アミロース 5.9~9%,duEM47 アミロース1.9%

 

EMS:

ササニシキからDul2(du2120, du2035,アミロースそれぞれ4.9,4.6%)

 

Gamma ray:

Wx-mq (ミルキークイーン,SNP in Wx, アミロース

9〜12%),ニホンマサリから60COにてdu2(彩,あやひめ アミロース8〜10% ,LGC soft),

 

培養:

おぼろづきとゆめぴりか(きらら397の培養変異,Wxイントロンの37bp欠失,14%アミロース)