作:ヘレン・ダンモア、絵:レベッカ・コッブ、訳:三辺律子『ふたりだけのとっておきのいちにち』文溪堂

作:ヘレン・ダンモア、絵:レベッカ・コッブ、訳:三辺律子『ふたりだけのとっておきのいちにち』文溪堂

毎年夏になると、リンの住む海辺の町にロビーがやってきます。二人は仲良しです。
 今年もロビーがやってきました。二人は砂浜でひみつの島を作ることにしました。ダムをつくり、小屋を建てて、その奥には海藻のジャングルを作って…だんだんと島は出来上がっていきます。

6日後、ロビーの出発の前日になってしまいました。まだ一緒にいたい二人は、いいことを思いついてー

夏の日がずっと続いたらいいのに、と思ってしまうキュートな絵本です。色鮮やかな海辺の様子や、細やかな輪郭線で描かれたモチーフと二人のキャラクターが目に楽しい一冊。

※この投稿の画像は、出版社の許可を得て掲載しているものです。無断転載はご遠慮ください。

 

作:マリア・テルリコフスカ、絵:ボフダン・ブテンコ、訳:うちだ りさこ『しずくのぼうけん』福音館書店

作:マリア・テルリコフスカ、絵:ボフダン・ブテンコ、訳:うちだ りさこ、『しずくのぼうけん』福音館書店

 

おばさんのバケツから、ぴしゃんと飛び出したひとしずく。しずくが落ちたのはホコリだらけの裏庭でした。きれいになりたいしずくは、クリーニング屋さんに向かいます。ところがー

ひょんなことからはじまったしずくのぼうけん。おひさまの熱で水蒸気になったり、雨になったり、冬の寒さで氷になったり。いろいろな旅を経て、春になるのを待つことに。お話を楽しみながら、いつの間にか、水の性質や水道の仕組みまで学んでいる・・・とても秀逸な一冊です!

単純なしずく💧に、かわいらしい目、鼻、口が加わって、一度見たら忘れられないキャラクターです。
本当に楽しいポーランドの絵本。

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作:アネット=チゾンとタラス=テイラー、訳:やましたはるお『おばけのバーバパパ』偕成社

作:アネット=チゾンとタラス=テイラー、訳:
やましたはるお『おばけのバーバパパ』偕成社

 

フランソワの家の庭で生まれたバーバパパ。フランソワはすぐに仲良しになったけれど、バーバパパは大きすぎて家には置いておけないと言われてしまいます。そうして、動物園に連れて行かれたバーバパパは、檻の中に入れられてしまいます。バーバパパは、ちっとも楽しくありません。

でもその時、バーバパパは気付くのです。自分の姿をいろいろな形に変化させることができることに。檻を出て、動物園を抜けて、町に出たバーバパパ。

 

この後の展開は?ー

おなじみのバーバパパシリーズの一作目。いつ読んでも最後まで楽しい一冊です。

 

 

実在しないバーバパパというキャラクター。いろいろな形に変幻自在に変化することができるという発想に脱帽です!

バーバパパの様々な形、やさしく、ときにかわいらしい表情ー線が生み出す単純でいながら計算された形と構図は、何度見ても飽きることがありません。独特の木や葉、水の表現は、クレーによる実験的な造形表現を彷彿とさせますが、明るくポップな一枚一枚のページでは、チゾンとテイラーによる独特の世界観があますところなく展開していきます。

細くてもくっきりと印象的な黒い輪郭線がモチーフの形を際立たせています。

 

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作:ヨンナ・ビョルンシェーナ、訳:ヘレンハルメ美穂『おばけイカにきをつけろ おとうとうさぎ!』クレヨンハウス

作:ヨンナ・ビョルンシェーナ、訳:ヘレンハルメ美穂『おばけイカにきをつけろ おとうとうさぎ!』クレヨンハウス

 

「おとうとうさぎ」シリーズの一冊。スウェーデンの絵本です。

 

水遊びが苦手なおとうとうさぎ。それでも、にいさんとねえさんと一緒に「不思議の海」にやってきました。二人は魚とりに夢中です。おとうとうさぎにも「ねえ、いっしょにやらない?」と声をかけますが、「うーん、やめとく。みずにはいるの、すきじゃないから」とおとうとうさぎは断ります。すると、にいさんうさぎは、「こわいんだろ?よわむしだな!」とからかいました。怒ったおとうとうさぎは、わざと海に飛び込んで、怖がりではないことを見せようとしました。これをみたにいさんうさぎは、「おばけイカに、きをつけろ!」とからかって、おとうとうさぎを怖がらせては大笑い。

ところが、このあと、にいさんうさぎとねえさんうさぎは本物の「おばけイカ」に連れ去られてしますのです。こうして、水が怖いおとうとうさぎの、海の中の冒険がはじまります。そこにはこわい魚がいっぱい!おとうとうさぎは、おばけイカから無事ににいさんとねえさんを助けることができるのでしょうか?―

 

まるでマンガの構割りを見ているかのようなページ、絵本特有の大きな大画面を活かした構図のページ・・・と、ページをめくるたびにさまざまな楽しい画面が飛び出してきます。デフォルメされたうさぎや魚たち、そしておばけイカの表情や動きが、いきいきとしていて、コミカルで、テンポよくわくわくしながら読み進められます!ペン描きのはっきりとした黒い輪郭線が、特有のアクセントなっていて、ポップな印象を強めています。とにかく楽しい絵本!

 

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文:エドアルド・ペチシカ、絵:ズデネック・ミレル、訳:うちだりさこ『もぐらとずぼん』福音館書店

文:エドアルド・ペチシカ、絵:ズデネック・ミレル、訳:うちだりさこ『もぐらとずぼん』福音館書店

 

もっこりもりあがった小さな土の山から、「やあ、こんにちは」ともぐらがでてきました。

土の中で見つけた宝物(釘とまり、それに鏡)を持ちだして得意そうにあたりを見回した時、青いずぼんが目に入りました。何でも入ってしまいそうな大きなポケット付きのズボンです!もぐらはずぼんがほしくてほしくてたまらなくなってしまいました。

 

「ぽけっとのついたずぼん、どこへいったらみつかるかしりませんか?」

 

もぐらは聞いてまわります。

すると、川の中からエビガニが出てきました。

「わたしのところへきれをもっておいで。ずぼんのかたちに、きってあげるよ。」

でも、誰が縫ってくれるのでしょう?もぐらは考えます。

 

「そうだ!よしきりならすをぬえるんだから、ずぼんだってぬえるはずだ。」

もぐらはさっそくヨシキリ(鳥)に頼みました。「もちろんぬってあげるとも。」ヨシキリは答えました。

 

では、きれはどこにあるのでしょう?途方に暮れたもぐらは、土の山に座って泣き出しました。

 

すると、そばに咲いていた花がもぐらに話しかけました。「・・・わたしは、あまっていうはななの。・・・」あまは、自分の言うことを聞いてくれたらきれを作る方法を教えてあげると言いました。それからもぐらくんは、あまの花にたくさんの水をやって、あまが十分に大きくなるお手伝いをしました。そしてとうとう、あまは自らの茎から糸をとる方法と、その糸を染めてきれにしていく方法を教えてくれたのです!

 

もぐらのずぼんはできあがるでしょうか?―

 

可愛らしいお話です。

チェコを代表するアニメーション作家としても著名なズデネック・ミレルの挿絵がほのぼのとしていて、どこかなつかしさを感じさせます。秀逸な線と巧妙なデフォルメで見事に描かれている今にも動き出しそうなキャラクターたち。リアルさをともないつつもやわらかく、やさしく描かれた野原の花々との表現の差異が際立っています。

 

※この投稿の画像は、出版社が一般に掲載を許可している範囲内のものです。無断転載はご遠慮ください。

作:村山籌子、絵:村山知義、再話:村山亜土『なくなったあかいようふく』福音館書店

作:村山籌子、絵:村山知義、再話:村山亜土『なくなったあかいようふく』福音館書店

 

ある日、にわとりの娘さんが歩いていると、洋服屋のあひるさんが一枚のビラをくれました。

「かわいい こどもの ようふく やすい、やすい、とっても やすいよ」

にわとりの娘さんがお母さんにビラを渡すと、お母さんはさっそく娘さんと一緒に洋服屋さんに向かました。そして、「ねえ、あしたの あたんじょうびに これを きたら どうかしら」と言って、袖なしの赤いワンピースを娘さんに買いました。娘さんはとても気に入って、大喜び!夜になってベッドに入る時も、ワンピースを窓のところに吊るしてじっと眺めていました。

 

ところが!朝起きるとワンピースがありません。

お父さんの一案で、犬さんにワンピース探しをおまかせすることにしました。

ここから犬さんの面白おかしいワンピース探索がはじまります―

 

戦前から前衛美術団体「MAVO」を率いて活躍していた美術家の村山知義が、1929年に描いていた「ナクナッタ アカイヨウフク」の原画をもとに、妻である村山籌子が書いていたはずのストーリーを推測しながら、ご子息の村山亜土が絵本にしたものだそうです。女の子の「なくなったあかいようふく」を軸に、ユーモラスでのびやかなお話が展開していきます。

ニワトリをはじめとする動物たちの姿、表情、動作がどれも生き生きとしています。洗練されたペン画と彩色で彩られたページは、簡潔でありながらスタイリッシュなモダンアートそのもののように感じられます。

 

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作:ブリッタ・テッケントラップ、訳:三原 泉『ブルーがはばたくとき』BL出版

作:ブリッタ・テッケントラップ、訳:三原 泉『ブルーがはばたくとき』BL出版

 

森のおくの大きな木の下のほうにある枝でひっそりと時をすごしていたブルー。

空を飛ぶことも、歌をうたうことも忘れてしまっていました。

 

そこに現れたのがイエローです。

イエローが歌うと周りのものが明るく輝きだします。木々の枝も芽吹きだします。

 

ある時イエローは、森の奥の木の下のほうにひそむブルーの姿に気づきました。

一日一日と下のほうにある枝に移りながら、だんだんとブルーに近づいていくイエロー。

イエローの歌は、ブルーのまわりの世界を、そしてブルー自身を変えていきます。

・・・やがて、『ブルーがはばたくとき』が来ました!

 

 

ページをめくる毎に美しい森の情景が広がります。

黒いシルエットで描かれていた森の木々が、イエローの魔法のような歌声でだんだんと色づいていきます。イエローから広がる金色の光りがだんだんと森を照らし始めます。まるで、ブリッタ・テッケントラップの魔法にかかったかのように、森は美しく輝きだします。版画などのさまざまな技法を駆使して重層的な情景を暖かく生みだした魅力的な挿絵です。あざやかなブルーとイエローの小鳥の色が目に鮮やかな印象を残します。

 

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作:きくちちき『ぼくだよ ぼくだよ』理論社

作:きくちちき『ぼくだよ ぼくだよ』理論社

 

ライオンとひょう、二人は友達。でも―

 

「ぼくのつめのほうがするどいよ」

「ぼくのきんにくのほうがつよいよ」

 

二人は自分のほうがすぐれているところを主張しあうライバルでもあります。

 

でも―

「そしたら ぼくはおおあらし。きみなんてあっというまにふきとばしちゃうよ」

「そしたら ぼくはたいよう。あらしなんてなくなってきみはくもになっちゃうよ」

 

「そしたら そしたら きもちいいね」

 

やっぱり二人は仲良しなのです。

 

こんな友達がいたらいいな、と思える楽しい絵本です。

 

きくちちきの筆と色彩が画面いっぱいに広がって、みずみずしく、気持ちの良い作品です。

 

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作:つるたようこ『やさいのおにたいじ』福音館書店

作:つるたようこ『やさいのおにたいじ』福音館書店

 

あの『酒呑童子』の物語の登場人物が野菜になりました!

京都の町に鬼が出没、娘たちをさらっていきます。娘たちを取り返そうと、屈強な武士たちが大江山に鬼退治に出かけることになりましたー

昔から語り伝えられてきた『酒呑童子』のおとぎ話。江戸時代の絵巻物などを見ると、かなり残酷な場面が描かれていたりもするのですが・・・、この絵本はまったくそんなことはありません!活躍するのは、金時人参や堀川ごぼうといった大きくて強そうな野菜たち。鬼はというと、なんと頭に角があるようにも見えるコンニャク芋です!そしてその描写の可愛らしくコミカルなこと!!同じ物語が、まったく違った新鮮なものに思えてきます。少し長いお話かな~と思いきや、あっという間に読み終えてしまいました。

 

とはいえ、昔の京の町並みや大江山に向かう道中の風景など、まるで狩野永徳の《洛中洛外図屏風》や鎌倉時代の絵巻物を見ているかのようで、古典的な日本美術の描法が目をひきます。横に長い絵本の見開きの特性がよく調和しています。可愛らしいだけではない、お話も挿絵もどちらも古典を下敷きにしつつ、説得力のある新しい絵本に昇華されています。

 

おはなし会では、京野菜の印象をより分かりやすく伝えるために、本物の野菜を用意しました。

 

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「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」vol. 3、できあがった作品です。(午後)

午後のワークショップでできあがった作品です。

午前から参加してくれていたお子さんです。午後はまず、絵巻を手に取って書きはじめです。画面が長い特性をいかした構図で、自然に目が行きます。

だんだん色が加わっていきます。

構想、構図、色、どこをとっても力強い力作!

 

絵巻のあとは、絵本にもふたたび挑戦してくれました!

 

こちらは夜の風景です。画面いっぱいに迫力のある絵ができあがりました!

 

お姉さんが挑戦していた絵本(二冊目)。大胆な空の色の下に展開する町の様子が細やかで、とてもおもしろい挿絵です。

2ページ目

 

妹さんはお母さまと一緒に絵巻を描きはじめました。海の中の様子。いろいろな海の生き物が、おおらかな筆のタッチで描かれていきます。

途中から参加したお父さまの挿絵です。

ご家族で参加していただきました。ありがとうございます!

 

こちらも絵巻に挑戦してくれました。『うさぎとかめ』の絵本を参考に、やわらかく繊細なたっちで描かれていきます。

画面いっぱいのうさぎが迫力があって目をひきます。構図の作り方が絶妙です。

長ーい力作ができあがりました!

一緒に参加してくれていたお姉さんは、細やかな絵本挿絵です。読むのが楽しそう!

向かいに座っていたお母さまは、お姉さんの肖像を描いていました!素敵です。

 

かわいらしい海の魚からはじまって・・・

明るく楽しい色使いのわくわくすような海の絵本ができました。どんなお話なのか、興味がわきます。

お母さまも海の中の様子を描いておられました。繊細で美しい情景です。

お父さまは『さるかに合戦』(?)の挿絵です。ユーモラスな表情が忘れられなくなります!

 

こまやかな楽しい絵本になりました!読むことを前提に、よく構想した挿絵になっています。エスメラルダちゃんが可愛らしいキャラクターで、とても読んでみたくなりました。

お母さまは絵巻に挑戦されていました。幻想的でもあり、可愛らしくもある絵柄になっています。昼から夜への時間の移り変わりが、絵巻物の横長の特性をいかして自然に表現されています。

 

 

かわいらしいトマトが主人公の絵本になりました。赤色がみずみずしく、トマトの表情もいきいきとして見えます。こちらもぜひ読んでみたい作品です。

お母さまは、『やさいのおにたいじ』を参考に描かれていました。雰囲気がよく出ています!

二枚目。ゆるやかな筆のはこびに魅かれます。

 

ご夫婦で描かれていました。ライオンの顔をしているのは、ヨーロッパに伝わる空想上の生き物です。狩野永徳の《唐獅子図屏風》から連想されたそうです。

きつねのユキオの物語。動物たちがページの中でいきいきと動いています。森の描写も美しい色彩感覚にあふれています。まるで本物の絵本のようです!

 

 

かわいらしいお化けのお話の絵巻。だんだんお友達が増えていきます。

 

神先生の作品です。午後は絵巻を描いておられました。さすがの筆遣いです!登場人物たちもいきいきとしています。

 

午後もたくさんの力作がそろいました!

参加してくださったみなさん、そして協力してくれた方々、本当にありがとうございました!