文:エドアルド・ペチシカ、絵:ズデネック・ミレル、訳:うちだりさこ『もぐらとずぼん』福音館書店
もっこりもりあがった小さな土の山から、「やあ、こんにちは」ともぐらがでてきました。
土の中で見つけた宝物(釘とまり、それに鏡)を持ちだして得意そうにあたりを見回した時、青いずぼんが目に入りました。何でも入ってしまいそうな大きなポケット付きのズボンです!もぐらはずぼんがほしくてほしくてたまらなくなってしまいました。
「ぽけっとのついたずぼん、どこへいったらみつかるかしりませんか?」
もぐらは聞いてまわります。
すると、川の中からエビガニが出てきました。
「わたしのところへきれをもっておいで。ずぼんのかたちに、きってあげるよ。」
でも、誰が縫ってくれるのでしょう?もぐらは考えます。
「そうだ!よしきりならすをぬえるんだから、ずぼんだってぬえるはずだ。」
もぐらはさっそくヨシキリ(鳥)に頼みました。「もちろんぬってあげるとも。」ヨシキリは答えました。
では、きれはどこにあるのでしょう?途方に暮れたもぐらは、土の山に座って泣き出しました。
すると、そばに咲いていた花がもぐらに話しかけました。「・・・わたしは、あまっていうはななの。・・・」あまは、自分の言うことを聞いてくれたらきれを作る方法を教えてあげると言いました。それからもぐらくんは、あまの花にたくさんの水をやって、あまが十分に大きくなるお手伝いをしました。そしてとうとう、あまは自らの茎から糸をとる方法と、その糸を染めてきれにしていく方法を教えてくれたのです!
もぐらのずぼんはできあがるでしょうか?―
可愛らしいお話です。
チェコを代表するアニメーション作家としても著名なズデネック・ミレルの挿絵がほのぼのとしていて、どこかなつかしさを感じさせます。秀逸な線と巧妙なデフォルメで見事に描かれている今にも動き出しそうなキャラクターたち。リアルさをともないつつもやわらかく、やさしく描かれた野原の花々との表現の差異が際立っています。
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