文:萱野茂、絵:どいかや『アイヌのむかしばなし ひまなこなべ』あすなろ書房

文:萱野茂、絵:どいかや『アイヌのむかしばなし ひまなこなべ』あすなろ書房

 

 

アイヌの昔話「ひまなこなべ」の絵本です。

アイヌの人々は、山や川や星や太陽、動物、植物、そして人間が作った道具など、あらゆるものには魂がやどっており、それらはみな「カムイ」と呼ばれる神さまだと信じていたそうです。なかでも、熊は彼らにとって特別でした。なぜなら熊は、おいしい肉やあたたかい毛皮、そして大事な薬などを与えてくれる存在だったからです。大切なものを人々に与える熊は、だからこそ同時にカムイだったのです。この神の命をいただく時、アイヌの人々はこれ以上にないほどのお礼をし、心ずくしのおもてなしをします。そうして天に帰っていく熊のカムイは、また再びアイヌの世界にもどりたくなるものと信じられていました。この物語は、天からアイヌの世界へと降りてきた熊神と、熊神をもてなす宴席で素晴らしい踊りを披露する若者にまつわるお話です。

 

ある日、天にいた熊神は、石狩川の上流に住む心と魂の美しさで評判のアイヌのお客になろうと思い、熊の姿となって山を下っていきました。評判のアイヌを目にした神は、彼の矢に射られようと、わざとその目の前に姿をあらわします。とたん、バシッという弓の音がして熊神の体の矢がささりました。熊神が何がどうなったのかまったく分からなくなりますが、しばらくすると、熊である自分の体と頭ば別々になって、魂だけが耳と耳の間に座っていることに気づきます。こうして仕留められた熊神は、アイヌによって村へと運ばれていきました。

 

夕暮れちかく、熊神が訪れたことを伝えられた村人は、宴席をもうけておもてなしをはじめました。歌い踊る人々のなかに、ひときわ踊りの上手な体の小さな若者がいました。この若者の踊りを飽かず眺めていた熊神は、どうやらこの若者も何かの神らしいと思うようになりました。さて、この若者のことが忘れられなくなってしまった熊神は、このあとどうやって若者の本当の正体を知ることになるのでしょうか――。

 

自然や道具に神の存在を認め敬うアイヌの人々の習慣と、それにまつわる物語が、熊神の口から軽快に語られていきます。どいかやのあたたかく可愛らしい挿絵が花を添えます。カラフルで華やかなページが次々にあらわれて、最初から最後まで目の離せない絵本となっています。

 

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演奏者紹介:関脩之介さん(ピアニスト)

「0歳から大人まで みんなのミニコンサート」出演のピアニストを紹介いたします。

 

関脩之介(せき・ゆうのすけ)

3歳からピアノを始め、加福誠子氏、木村美奈子氏、庄子みどり氏、矢野吉晴氏に師事。青森県ジュニアピアノコンクール上級部門最優秀賞・審査員特別賞(2010)、日本ピアノコンクール全国大会中級第1位(2010)、青森県こどもピアノコンクール中高生B部門第1位(2014)、東北青少年音楽コンクールピアノAコース金賞(2017)、東京ピアノコンクール一般A部門審査員奨励賞(2020)。

好きな演奏家は、庄子みどり、ウラディーミル・アシュケナージ、フジ子・ヘミング。好きな作曲家は、ベートーヴェン、リスト。好きな曲は、シャコンヌ(バッハ)、ラ・カンパネッラ(リスト)。

現在、弘前大学教育学部数学専修第2学年。

 

繊細さと力強さを合わせ持つピアニスト。バッハ作曲ブゾーニ編曲《シャコンヌ》は「弘前大学ピアノの会」の2019年のサマーコンサートで披露され、細部まで作り込まれた奥行きのある演奏でした。

今回の「みんなのミニコンサート」では、リスト《ラ・マルセイエーズ》を新たにレパートリーとして開拓してくれました。電子鍵盤でのコンサートですが、名手が扱えば電子ピアノもこれほど応えてくれるのか、と驚くような素晴らしい演奏になるはずです。ぜひご期待下さい!

作・絵:きくちちき『ゆき』ほるぷ出版

作・絵:きくちちき『ゆき』ほるぷ出版

 

動物たちの住む森に雪が降ってきました。

だんだんと白くなっていく世界ーー動物たちはどうするのでしょうか。

そして人間の子どもたちは?

 

みずみずしく色鮮やかな水彩の世界が広がります。

 

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再話:瀬田貞二、画:赤羽末吉『かさじぞう』福音館書店

再話:瀬田貞二、画:赤羽末吉『かさじぞう』福音館書店

 

年越しを前にしたおじいさんとおばあさん。おじいさんはあみがさを五つこしらえて町へ売りに行きます。年越し市は大賑わい。誰もおじいさんのあみがさには見向きもしません。

帰り道、おじいさんは、ふかふかと降る雪の中で鼻からつららを垂らす六体の地蔵さまに出会います。すかさず五つのあみがさがそして自分のあみがさをお地蔵さまにかぶせるおじいさん。

 

家に帰って眠りについたあとの正月の明け方、「よういさ、よういさ、よういさな」というそりひきのかけ声でおじいさんとおばあさんは目を覚まします。さてそのあとの展開はーー

 

おなじみの『かさじぞう』の民話。

白い雪の風景が暖かみのある墨のおおらかな線で描かれています。薄い墨の滲みと濃い墨の線、ところどころに差し込まれた青や緑や赤や黄色。

瀬田貞二のよどみのない口調を、赤羽末吉の挿絵がゆったりと包み込んでいます。

1961年初版。

 

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絵と文:音の台所(茂木淳子)、音のモティーフ:春畑セロリ『ゼツメツキグシュノオト』らんか社

絵と文:音の台所(茂木淳子)、音のモティーフ:春畑セロリ『ゼツメツキグシュノオト』らんか社

リュウキュウコノハズク、アオウミガメ、イリオモテヤマネコ、クマゲラ、ホッキョクグマなどなどー絶滅危惧種の動物たち―それぞれの動物にすてきなメロディと詩がつけられています。ー動物たちの音楽が静かに流れていくようです。動物たちには、一つずつ音楽用語が当てられていて、そこから詩が始まります。

黒地に浮かぶ色彩が美しい挿絵です。

 

小さな絵本とともにメロディをのせたCD(日本アコースティックレコーズ)と楽譜(音楽之友社)も発売されています。

ささやきかけてくるような、小さな宝石箱のような音と絵と詩のコラボレーション。

 

poco a poco アートのたまごの「ポコ・ア・ポコ」も音楽のための言葉。

「すこしずつ すこしずつ」、一枚一枚木の葉を運ぶエゾナキウサギのように、ゆっくりとではありますが、活動を続けていきたいと思います。

 

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「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」、明日参加受付開始です!→午前・午後とも定員に達しました。

 

2月8日については午前・午後、双方とも定員に達しました。

たくさんのお申し込み、ありがとうございました!

※2月29日(土)の「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」(@ヒロロ3階「多世代交流室1」)については、2月9日(日)12:00から受付開始です。

 

 

とき

令和2年2月8日(土)

午前:10:00‐12:00(墨絵に挑戦!)

午後:13:30‐16:00(日本画の画材に挑戦!)

 

ばしょ

弘前文化センター3階 工作実習室

 

対象

午前・午後とも、幼稚園/保育園から小学校高学年までのお子さまと保護者の方々。

ワークショップには保護者の方も参加できます!

前半は「雪」と「動物」をテーマにした絵本のおはなし会と関連する絵画の鑑賞会、後半はワークショップを行います。

普段はあまり使う機会がないかもしれない墨や日本画の顔料で絵を描いてみませんか?

 

※午前・午後とも先着16名様まで。

当ウェブサイト、申込専用フォームで受付いたします。

日本画の顔料

作:新美南吉、絵:どいかや『手ぶくろを買いに』あすなろ書房

作:新美南吉、絵:どいかや『手ぶくろを買いに』あすなろ書房

 

 

はじめて雪を目にしたきつねの子は、朝目をさますと「あっ」とさけんで母さんぎつねに駆け寄ります。「かあちゃん、目になにかささった、ぬいてちょうだい、早く早く。」母さんぎつねはびっくりしますが、外の出て分かりました。夜のうちに雪がどっさり降って、その上からおひさまがキラキラしていたので、雪がまぶしく反射していたのです。

 

はじめての雪に喜ぶ子ぎつね。早速遊びに出かけます。ところが帰ってくると、手が冷たいことに気づきました。「おかあちゃん、おててがつめたい、おててがちんちんする。」母さんぎつねは、夜になったら町に行って、ぼうやに似合うような毛糸の手ぶくろを買ってやろうと思いました。

ところが、母さんぎつねは以前お百姓の家のあひるを盗もうとして、見つかって、命からがら逃げてきたことを思い出し、どうしても町の方に足を進めることができません。しかたなく、子ぎつねを1人で町まで行かせることになりました。

 

心配する母さんぎつね、町で人のやさしさに触れた子ぎつね――

 

新美南吉の『手ぶくろを買いに』が、どいかやによるあたたかな挿絵で素敵な絵本になりました。

白と黒のモノクロームを基調とした夜の雪景色に、淡くやさしい色が温かみを添えています。

いつ読んでも切なくなる冬の絵本。

 

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きくちちき『とらのことらこ』小学館

作・絵:きくちちき『とらのことらこ』小学館

 

 

とらの子のとらこが成長していく様子がとにかくかわいい!

はじめはおかあさんのうしろでおそるおそるまわりを見ていたとらこ。

ちょうちょをつかまえることもできなかったとらこ。

それでもあるとき、ようやく・・・!!!

でもやっぱり最後につかまえるのは——

 

きくちちきの筆が自由奔放なようでいてコントロールされています。少し薄い墨で描かれた輪郭線とみずみずしく広がる水彩絵具の色・色・色。黄色の装丁も効果的です。

とらこの姿は、かわいらしい一方で、長沢蘆雪の《虎図》をも彷彿とさせます。

 

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作:安房直子、絵:降矢なな『ひめねずみとガラスのストーブ』小学館

作:安房直子、絵:降矢なな『ひめねずみとガラスのストーブ』小学館

 

 

遅ればせながら、今年は子年ということで――

 

風の子フーとひめねずみのお話です。

暗い冬の空のもと、風の子フーは「さむさむさむ・・・・・・」と震えています。なにかあたたかくなるものはないかな、と探していたところ、目にとまったのは家の窓からチラッとのぞいたオレンジ色の炎でした。ストーブです。次の日、「くまストーブ店」にやってきたフーは、たくさんのストーブの中から、ガラスでできた美しいストーブを選んで買いました。そのストーブは、もようのついたあついガラスでできていて、ともされた火が外がわからわずかに見えるようになっています。

フーはストーブをぶらさげて、暗い森の中に入ると、黄色い油をストーブに入れて、マッチをすりました。その火はストーブにぼあっとうつりました。フーはしずかに燃えるストーブにあたりながら眠ってしまいます。

 

すると、カサリ!という音がして、風の子ははっと目をさましました。ストーブの向こうにいたのは、小さくて足の短いひめねずみでした。ひめねずみも寒かったのです。「さむいんなら、少しあたっていってもいいよ」とフーはひめねずみにすすめます。二人は話し出しました。するとひめねずみは、ストーブにやかんをかければお茶がのめること、そしておなべをかければごちそうが作れることを提案します。やっと友達ができたフー。それから、フーとひめねずみはいっしょに暮らしはじめました。

 

いく日かすぎた頃、お客さんが空からやってきます。それはオーロラという名前の風の子でした。彼女は遠い日のくれない国からやってきたと言います。オーロラの話を聞きながら、「日のくれない国」に好奇心を抱いていくフー。

フーとひめねずみの暮らしに変化の時がやってきます。

 

フーは長い旅の果てにふたたび森に戻ります。すっかり大人になったフー。森のストーブとひめねずみはどのようになっていたのでしょうか。――大人になることが少し切なくなる、静かに染みていくお話です。

 

降矢ななによる挿絵が、物語の包み込むようなあたたかさと、そして一抹の寂しさとを、美しく繊細に描き出しています。はっとするような美しい色彩が、ページ毎に目の前に広がります。

 

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文:松居直、画:赤羽末吉『ももたろう』福音館書店

文:松居直、画:赤羽末吉『ももたろう』福音館書店

 

日本の昔話と言えば『ももたろう』を真っ先に思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

桃から生まれた桃太郎が、元気に大きくなって、犬と猿と雉をお供に、お姫様をさらった鬼を退治しに鬼が島へーいつから知っていたのか覚えていないくらいよく知っているはずの物語。改めて読んでみてもやはり面白いと思います。

つんぶく かんぶく つんぶく かんぶく 流れてくる桃、
あっちゃむらで 米をとり、こっちゃむらで 塩をとった鬼、
言葉のひびきやリズミカルな並びも心地よく、楽しく感じます。

 

どのページにも美しい挿絵が付されています。赤羽末吉の挿絵の中でも際立って色彩が鮮やかな絵本です!キラキラとまぶしい黄色、深く赤味がかった紺色、じんわりとさしこんでくる朱赤、ページの上下にひかれた淡くやわらかい曙色や緑色。昔話絵本の色彩のイメージが覆されるようです。

 

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