Return to 一般相対論的時空の表し方

4次元時空のベクトル・線素・計量テンソル

4次元時空では, \(x^{\mu} = (x^0, x^1, x^2, x^3) \) のように,ギリシャ文字の添字で4つの座標を一挙に表す。

まず,近接した2点 \(P(x^{\mu})\) と \(Q(x^{\mu} +dx^{\mu})\) 間の

  • 微小変位ベクトル \(d\boldsymbol{x}\) を
  • その成分 \(dx^{\mu}\) と
  • 基本ベクトル座標基底あるいは単に基底)\(\boldsymbol{e}_{\mu}\) を使って

\begin{equation}
d\boldsymbol{x} = \sum_{\mu=0}^3 dx^{\mu}\,\boldsymbol{e}_{\mu}
\equiv dx^{\mu}\,\boldsymbol{e}_{\mu}
\end{equation}
と書く。上添字と下添字に同じギリシャ文字がある場合,アインシュタインの規約ではたとえ \(\displaystyle \sum\) が書いていなくても自動的に 0 から 3 まで足しあげる。

線素

微小変位ベクトル \(\boldsymbol{dx}\) の「大きさ」の2乗 (自分自身との内積)線素 \(ds^2\) と呼び,以下のように書く。
\begin{eqnarray}
ds^2 &=& d\boldsymbol{x}\cdot d\boldsymbol{x}=
\left(dx^{\mu}\,\boldsymbol{e}_{\mu}\right)\cdot
\left(dx^{\nu}\,\boldsymbol{e}_{\nu}\right) \nonumber\\
&=&\boldsymbol{e}_{\mu}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu}\,dx^{\mu}dx^{\nu}
\nonumber\\
&\equiv& g_{\mu\nu}\,dx^{\mu}dx^{\nu}.
\end{eqnarray}

計量テンソル

ここで,

計量テンソルの成分$$g_{\mu\nu} \equiv\boldsymbol{e}_{\mu}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu}$$ は基本ベクトル同士の内積を表す

ことをあらためて言明しておく。

ミンコフスキー計量

特殊相対論では,いわゆるミンコフスキー座標系(空間座標として直交直線座標系であるデカルト座標系をとり,それに第ゼロ成分として \(ct\) を加えた4次元座標系) $$x^{\mu} = (x^0, x^i) = (ct, x, y, z)$$ で4次元時空を大域的に張ることが可能であり,その場合に(その場合にのみ)

\begin{eqnarray}
\boldsymbol{e}_{\mu}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu} &=& \eta_{\mu\nu} \\
&=& \mbox{diag}(-1, 1, 1, 1)
\end{eqnarray}
と書くことができる。\(\mbox{diag}\) とは対角成分をあらわす。丁寧に書くと

\begin{eqnarray}
\eta_{\mu\nu} &\equiv&
\left(  \begin{array}{cccc}
\eta_{00} & \eta_{01} & \eta_{02} & \eta_{03} \\
\eta_{10} & \eta_{11} & \eta_{12} & \eta_{13} \\
\eta_{20} & \eta_{21} & \eta_{22} & \eta_{23} \\
\eta_{30} & \eta_{31} & \eta_{32} & \eta_{33}
\end{array} \right) \\ \ \\
&=&
\left(\begin{array}{cccc}
-1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 &0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{array}\right)
\end{eqnarray}

この \(\eta_{\mu\nu}\) をミンコフスキー時空の計量テンソル,または短くしてミンコフスキー計量の成分と呼ぶ。

一般の曲がった時空では,大域的に直交直線座標系を張ることはできないため,計量テンソルの成分は定数のままとはいかず,一般に座標依存性をもつことになる。

\(\eta_{00} = -1\) という負号が気になるかもしれないが,線素がこのような形であるのは,光速不変性(光の速さは座標系によらず一定である)から来ているので,そこは慣れていただくことにしよう。

幾何学の基本は距離の測定であるから,この線素に現れる計量テンソルこそが,時空を記述する基本量であり,そしてこの計量テンソルを決めるのがアインシュタイン方程式である。