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アインシュタインの規約とベクトルの内積

表示の簡単化のため,
\begin{equation}
x^1 \equiv x,\quad x^2\equiv y,\quad x^3 \equiv z
\end{equation}
のように,上添え字で1番目,2番目,3番目の空間座標を表す。基本ベクトルも同様に,
\begin{equation}
\vec{e}_1\equiv\vec{e}_x,\quad
\vec{e}_2\equiv\vec{e}_y,\quad
\vec{e}_3 \equiv \vec{e}_z
\end{equation}
とすると,位置ベクトル \(\vec{r}\) は
\begin{equation}
\vec{r} = \sum_{i=1}^3 x^i \,\vec{e}_i \equiv x^i
\,\vec{e}_i
\end{equation}
と書ける。最後の表記がアインシュタインの規約と呼ばれ,上添字と下添字に同じ文字 \(i\) があったら,たとえ \(\displaystyle\sum\) がなくても \(1\) から \(3\) まで足しあげるという約束である。

3次元のアインシュタインの規約を表す格言
人生には \(i\) (アイ)が必要だ。それもペアでね。

アインシュタインの規約を使ってベクトルの大きさを書くとき,思いあまって
\begin{equation}
r^2 = \vec{r}\cdot\vec{r}
= \left(x^i\,\vec{e}_i \right)
\cdot\left(x^i\,\vec{e}_i \right)\quad \mbox{(不適切)}
\end{equation}
と書きそうになるが,これにも格言を用意してある。

人生に \(i\) (アイ)は必要だ。しかし多すぎる \(i\) (アイ)はトラブルの元。

アインシュタインの規約の相手がわかるように,片方のダミーの添字を \(j\) に変えて
\begin{eqnarray}
r^2 &=& \left(x^i\,\vec{e}_i \right)
\cdot\left(x^j\,\vec{e}_j \right) \\
&=&\vec{e}_i\cdot\vec{e}_j \,x^i x^j \\
&\equiv&
\delta_{ij}\,x^i x^j
\end{eqnarray}
と書くのが適切である。\(\delta_{ij}\) はクロネッカーのデルタであり,3次元デカルト座標系での計量テンソルの成分に相当する。

\begin{equation} \delta_{ij} = \left \{ \begin{array}{cc} 1 & (i=j) \\  0 & (i \ne j) \end{array} \right.\end{equation}

次節で改めて述べるが,一般に

計量テンソルの成分とは,基本ベクトル同士の内積を表す

ということだけを覚えて,いよいよ4次元時空へ進もう。