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3次元ベクトルの微分

3次元ベクトルは \(\vec{k} =  k^i \vec{e}_i, \  k^i = (k_x, k_y, k_z)\) あるいは \(\vec{k} = (k_x, k_y, k_z)\)
4元ベクトルは \(\boldsymbol{k} = k^{\mu} \boldsymbol{e}_{\mu}, \ k^{\mu} =  (k^0, k^i) = (k^0, \vec{k})\) などのように表す。


まずは3次元ベクトルを例に,ベクトルの微分についてまとめる。

3次元デカルト座標系 \(S\) では,位置ベクトル \(\vec{r}\) は,成分 \(x, y, z\) と基本ベクトル \(\vec{e}_x,\, \vec{e}_y,\, \vec{e}_z\) を使って
\begin{equation}
\vec{r}=x\, \vec{e}_x +y\, \vec{e}_y + z\, \vec{e}_z
\end{equation}
と表される。このベクトルの時間微分は,
\begin{equation}
\dot{\vec{r}}=\dot{x}\, \vec{e}_x
+ \dot{y}\, \vec{e}_y
+ \dot{z}\, \vec{e}_z \equiv \vec{v}
\end{equation}
であり,

ベクトルの微分とは成分を微分すること

と教わったかと思う。しかし,そうとばかりは限らない。

慣性系 \(S\) に対して,一定の角速度ベクトル  \(\vec{\omega}\)  で回転している系 \(S’\) での位置ベクトル  \(\vec{r}’\)  は,系 \(S’\) の基本ベクトル  \(\vec{e}’_x, \vec{e}’_y, \vec{e}’_z\)  を使って
\begin{equation}
\vec{r}’=x’ \vec{e}’_x +y’ \vec{e}’_y
+z’ \vec{e}’_z
\end{equation}
と書けるが,系 \(S’\) は回転しているため,基本ベクトルも時間変化する。
(\(\dot{\vec{e}}’_x =\vec{\omega}\times\vec{e}’_x\)  等。) (補足参照。)

従って,
\begin{eqnarray}
\dot{\vec{r}}’ &=& \dot{x}’\, \vec{e}’_x
+ \dot{y}’\, \vec{e}’_y
+ \dot{z}’\, \vec{e}’_z % \nonumber\\
+ x’\, \dot{\vec{e}}’_x + y’\, \dot{\vec{e}}’_y
+ z’\, \dot{\vec{e}}’_z \nonumber \\
&=& \vec{v}’ + \vec{\omega}\times \vec{r}’.
\end{eqnarray}
さらに2階微分は
\begin{eqnarray}
\ddot{\vec{r}}’ &=& \vec{a}’
+ 2 \vec{\omega}\times\vec{v}’
+\vec{\omega}\times (\vec{\omega}\times\vec{r}’)
\end{eqnarray}
となり,第2項,第3項は運動方程式の右辺へ移行して符号を変え,それぞれコリオリ力と遠心力と呼ばれることになる。(補足を参照。)

この回転系の例で明らかなように,

一般にベクトルを微分するときは,
成分だけでなく基本ベクトルも微分する必要がある

ということだけを覚えておいていただきたい。

時間微分だけでなく,
空間座標による偏微分の場合も,成分だけでなく,
基本ベクトルも微分する必要があるのは同様である

補足を参照。)

基本ベクトルが一定であるのは,直交直線座標系(デカルト座標系)のみであり,一般に曲線座標系では基本ベクトルは一定ではなく,座標依存性をもつことに留意されたい。