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補足:測地線偏差方程式の導出(別解)と注意事項

2本の近接測地線から,直接測地線偏差方程式を導く。

2本の近接測地線

まず,「まっすぐな線」である測地線を2本用意する。

それぞれの世界線xμ(v), x~μ(v) と表すと,それぞれの接ベクトル

u(x)=uμ(x)eμ(x)=dxμdveμ(x)u~(x~)=u~μ(x~)eμ(x~)=dx~μdveμ(x~)

測地線方程式
dudv=d2xμdv2eμ(x)+dxμdveμ,ν(x)dxνdv=0du~dv=d2x~μdv2eμ(x~)+dx~μdveμ,ν(x~)dx~νdv=0
である。

特にこれら2本の測地線が近接しているとして,
x~μ(v)=xμ(v)+ϵξμ,|ϵ|1
とおき,微小量 ϵ の1次までとると,

du~dv=d2x~μdv2eμ(x~)+dx~μdveμ,ν(x~)dx~νdv=(d2xμdv2+ϵd2ξμdv2)(eμ(x)+ϵeμ,νξν)+(dxμdv+ϵdξμdv)(eμ,ν(x)+ϵeμ,νρξρ)(dxνdv+ϵdξνdv)dudv+ϵ{d2ξμdv2eμ+2eμ,νdxμdvdξνdv+d2xμdv2eμ,νξν+eμ,νρdxμdvdxνdvξρ}

(A)  d2ξμdv2eμ+2eμ,νdxμdvdξνdv+d2xμdv2eμ,νξν+eμ,νρdxμdvdxνdvξρ=0

一方,

d2ξdv2=d2dv2(ξμeμ)=d2ξμdv2eμ+2eμ,νdxμdvdξνdv+ξρddv(eρ,μdxμdv)=d2ξμdv2eμ+2eμ,νdxμdvdξνdv+d2xμdv2eν,μξν+eρ,μνdxμdvdxνdvξρ=d2ξμdv2eμ+2eμ,νdxμdvdξνdv+d2xμdv2eμ,νξν+eμ,ρνdxμdvdxνdvξρ

(B)  d2ξμdv2eμ+2eμ,νdxμdvdξνdv+d2xμdv2eμ,νξν=d2ξdv2eμ,ρνdxμdvdxνdvξρ

(B) 式を (A) 式に代入して

d2ξdv2eμ,ρνdxμdvdxνdvξρ+eμ,νρdxμdvdxνdvξρ=0
  d2ξdv2=(eμ,ρνeμ,νρ)dxμdvdxνdvξρ

このように,2本の近接した測地線方程式の引き算から,直接測地線偏差方程式が得られるわけだが,偏差ベクトル ξ=ξμeμ の2階微分の形に書き換えるのに手間がかかる。

注意事項

偏差ベクトル ξ=ξμeμ の2階微分の形に書き換えるのに手間がかかるので,あらかじめ ξ の1階微分で書かれている以下の式を使おう,と思うとちょっと失敗する場合があるのでメモ。

平行線の公理の破れとリーマンテンソル」で導いたように,近接した2本の測地線の接ベクトルは,偏差ベクトルを使って以下のように書かれるのであった。

u~u+ϵdξdv

手っ取り早く,この両辺をアフィンパラメータ v で微分すると,

du~dvdudv+ϵd2ξdv2

どちらも測地線だから,

du~dv=0,dudv=0,  d2ξdv2=0 !?

となり,測地線偏差式が出てこない!ということになる。この論理展開はどこが悪いのであろうか?

こういう落とし穴にハマらないためには,上記のように2本の近接した測地線方程式の引き算から直接求めればモヤモヤしなくてスッキリとしてよいのであるが,一応この問題にも以下のようにして自分に納得させておいている。

まず,近接した2本の測地線の接ベクトルと偏差ベクトルとの関係(既出)を,どこの座標点におけるベクトルであるかを明らかにして書くと,

u~(x~)u(x)+ϵdξdv(x)

このままでは,左辺は x~μ におけるベクトル,右辺は xμ におけるベクトルの和,異なる地点でのベクトルを等しいとしているのであるから,この形のままでは,この等式に不変的な意味は無いし,このまま使うのは危険。

以下のようにして…

ϵdξdvu~(x~)u(x)=u~(x+ϵξ)u(x)ϵu,μξμ  dξdv=u,μξμ

… とすれば,この式は左辺も右辺も同じ地点 xμ でのベクトル式なので,これなら引き続き両辺を v でさらに微分して計算を続けられる。… というわけで「補足:測地線偏差方程式の導出」でやってみたということになる。