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Return to アインシュタイン方程式と人生最大の過ち?

補足:アインシュタインテンソルの性質

アインシュタインテンソルの成分 G  γμ を以下の定義すると,
G  γμR  γμ12δ  γμR
縮約されたビアンキ恒等式から,(1,1)-型のテンソル,つまり上添字1つ下添字1つのテンソルの成分の共変微分を使って以下のように簡潔に書けることを示す。(ここでは極力「共変微分」を使ってこなかったので,定義については別途。)
G  γ;μμ=0


リーマンテンソルの成分

リーマンレンソルの成分 R   ναβμは,以下の式によって定義されていた。
eν,βαeν,αβR   ναβμeμ

ここで以下のような交換子を定義すると,
[α,β]xαxβxβxα
[α,β]eν=R   ναβμeμ と書ける。

この交換子は,テンソルの成分などの関数に作用すると(偏微分は交換可能であるから)ただちにゼロになる。したがって,基底(基本ベクトル)への作用だけを考えればよい。

ヤコビ恒等式

ヤコビ恒等式とは,以下のような式である。いかなる対象に作用するかに関係なく,演算子のままで恒等的に成り立つ。
[γ,[α,β]]+[α,[β,γ]]+[β,[γ,α]]=0 これは直接書き出して証明できる。同じ色の項がキャンセルしあってゼロになる。

[γ,[α,β]]=γ(αββα)(αββα)γ=γαβγβααβγ+βαγ[α,[β,γ]]=αβγαγββγα+γβα[β,[γ,α]]=βγαβαγγαβ+αγβ

ヤコビ恒等式からビアンキ恒等式へ

[γ,[α,β]]eν=([α,β]eν),γ[α,β]eν,γ=(R   ναβμeμ),γ[α,β](Γ  νγλeλ)=R   ναβ,γμeμ+R   ναβμeμ,γΓ  νγλ[α,β]eλ=(R   ναβ,γμ+R   ναβλΓ  λγμR   λαβμΓ  νγλ)eμ

したがって,

([γ,[α,β]]+[α,[β,γ]]+[β,[γ,α]])eν=0 より

R   ναβ,γμ+R   ναβλΓ  λγμR   λαβμΓ  νγλ+R   νβγ,αμ+R   νβγλΓ  λαμR   λβγμΓ  ναλ+R   νγα,βμ+R   νγαλΓ  λβμR   λγαμΓ  νβλ  =  0 これがリーマンテンソルの成分に対する「ビアンキ恒等式」である。

αμ にかえて縮約をとり,さらに gβν もかけて縮約すると,リッチテンソルの成分とリッチスカラーに対する以下の式になる。

2(R   γ,μμ+Γ  μλμR   γλΓ  μγλR   λμ)+R,γ=0

ここで,アインシュタインテンソルの成分 G  γμ を以下の定義すると,
G  γμR  γμ12δ  γμR
縮約されたビアンキ恒等式は,(1,1)-型のテンソル,つまり上添字1つ下添字1つのテンソルの成分の共変微分をつかって以下のように簡潔に書ける。
G  γ;μμ=0
添字の上げ下げと共変微分は可換であるので(ここを参照),GμνgνγG  γμ に対して
G   ;νμν=0とも書ける。

この結果が,アインシュタイン方程式の左辺におくべきテンソルリーマンテンソルそのものでもなく,リッチテンソルそのものでもなく,アインシュタインテンソルであるべきだという,一つの指導原理になっている。

というのも,アインシュタイン方程式の右辺には,物質のエネルギー運動量テンソル Tμν がくることが想定されるが, Tμν は以下の関係を満たすからである。
T    ;νμν=0

この形の何がうれしいかというと,あるベクトルの成分 Jμ に対する(共変微分的)連続の式
J   ;μμ=0
に形が似ていること,そして連続の式は「保存則」を表していることによる。

もっとも,ベクトルの成分 Jμ に対する(共変微分的)連続の式は
J   ;μμ=1g(gJμ),μ=0,  (gJμ),μ=0
となって,確かに「連続の式」となって「保存則」を表すが,テンソルの場合は一般には(キリングベクトルが存在しない限り)「保存則」を表すわけではない。つまり, T    ;νμν=0 だからといって,物質のエネルギーや運動量が(単体で)保存するわけではない。(一瞬,これは一大事!と思ってしまうが,そのこころは,物質単体ではなく,物質と重力場の分もあわせた全体のエネルギーと運動量が保存するはずだ,ということになる。)

参考までに,縮約する前のビアンキ恒等式を(1, 3)-型テンソル,つまり上添字が1つ,下添字が3つのテンソルに対する共変微分を使って書くと以下のようになる。
R  ναβ;γμ+R  νβγ;αμ+R  νγα;βμ=0

さて,偏微分は , であらわすのに対して,共変微分を ; で表しているが,定義についてはここを参照。