Return to 一般相対論的時空の表し方

測地線と接続係数・クリストッフェル記号

時空の曲がり具合を記述するためには,まず曲がっていない「まっすぐなもの」を定義する必要がある。それが測地線である。

世界線の接ベクトル

まず,4次元時空内の曲線である世界線 \(x^{\mu}(v)\) を考える。ここで \(v\) は世界線に目盛をつけるパラメータであり,後述する測地線方程式が成り立つ時にはアフィンパラメータと呼ばれる。この世界線の接ベクトル \(\boldsymbol{u}\) を,成分 \(u^{\mu}\) と基本ベクトル \(\boldsymbol{e}_{\mu}\) を使って以下のようにあらわす。
\begin{equation}
\boldsymbol{u} = u^{\mu} \boldsymbol{e}_{\mu}
\equiv \frac{dx^{\mu}}{dv} \boldsymbol{e}_{\mu}
\end{equation}

測地線方程式

測地線とは接ベクトル世界線にそって一定であるような「まっすぐな」線として定義される。つまり
\begin{equation}
\frac{d\boldsymbol{u}}{dv} = \boldsymbol{0}
\end{equation}
であるような線であり,この式を(アフィンパラメータ \(v\) でパラメトライズされた)測地線方程式と呼ぶ。前節で述べたように

一般にベクトルを微分するときは,
成分だけでなく基本ベクトルも微分する必要がある

から,上式は
\begin{eqnarray}\label{eq:geo1}
\frac{d\boldsymbol{u}}{dv} &=&
\left( \frac{\partial u^{\mu}}{\partial x^{\nu}}\boldsymbol{e}_{\mu}
+ u^{\mu} \frac{\partial \boldsymbol{e}_{\mu}}{\partial x^{\nu}}\right)
\frac{d x^{\nu}}{dv} \\
&=&\frac{d u^{\mu}}{dv}\boldsymbol{e}_{\mu}
+ \boldsymbol{e}_{\mu, \nu}u^{\mu} u^{\nu} = \boldsymbol{0}
\end{eqnarray}
となる。

偏微分の簡略表記法

\(x^{\nu}\)での偏微分を下添字にカンマ \({}_{, \nu}\) で $$\displaystyle\frac{\partial \boldsymbol{e}_{\mu}}{\partial x^{\nu}} \equiv \boldsymbol{e}_{\mu, \nu}$$などと書くのは表示簡略化のための表記法である。本サイトの他のセクションでも,断りなく使っている場合がある。

相対論業界では極めて一般的に広く使われているこの表記法であるが,学部初学年向けの数学のテキストでは,関数 \(f\) の変数 \(x\) に関する偏微分を
$$\frac{\partial f}{\partial x}, \ \  \partial_x f, \ \ f_x$$
などと書くとされている。Wikipedia の「偏微分」の項も参照。

\(\partial_x f\) は我々もよく使うが,変数 \(x\) に関する偏微分を \(f_x\) と書くのはいかがなものかと常々思っている。ベクトル \(\vec{f} = (f_x, f_y, f_z)\) の \(x\) 成分と区別がつかないでしょ!

接続係数・クリストッフェル記号

さて,すべからくベクトルは基本ベクトルの線形結合で書かれるのであるから,基本ベクトルの微分 \(\boldsymbol{e}_{\mu, \nu}\) もまた,基本ベクトルの線形結合で書かれるはずである。そこで,
\begin{equation}\label{eq:chr1}
\boldsymbol{e}_{\mu, \nu} =
\varGamma^{\rho}_{\ \ \mu\nu} \boldsymbol{e}_{\rho}
\end{equation}
と書き,基本ベクトルの一階偏微分から定義される \(\varGamma^{\rho}_{\ \ \mu\nu}\) を一般に接続係数と呼ぶ。一般相対論で使われる接続係数は,
\begin{equation}
\varGamma^{\rho}_{\ \ \mu\nu} = \varGamma^{\rho}_{\ \ \nu\mu}
\end{equation}
すなわち
$$\boldsymbol{e}_{\mu, \nu} = \boldsymbol{e}_{\nu, \mu}$$
のように下添字について対称という性質をもつ接続係数を特にクリストッフェル記号と呼ぶ。

この対称性を使うと,クリストッフェル記号を計量テンソルの1階微分を使って書き直すことができる。

計量テンソル \(g_{\mu\nu} =
\boldsymbol{e}_{\mu}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu}\) を \(x^{\sigma}\) で偏微分すると,
\begin{eqnarray}
g_{\mu\nu, \sigma} &=&
\boldsymbol{e}_{\mu, \sigma}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu}
+ \boldsymbol{e}_{\mu}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu,\sigma} \nonumber \\
&=& \varGamma^{\rho}_{\ \ \mu\sigma}\boldsymbol{e}_{\rho}
\cdot\boldsymbol{e}_{\nu}
+ \varGamma^{\rho}_{\
\nu\sigma}\boldsymbol{e}_{\rho}\cdot\boldsymbol{e}_{\mu}\nonumber\\
&=& g_{\rho\nu} \varGamma^{\rho}_{\ \ \mu\sigma} + g_{\rho\mu} \varGamma^{\rho}_{\ \ \nu\sigma}
\end{eqnarray}
であり,これに\(g_{\sigma\mu, \nu}\)や\(g_{\sigma\nu, \mu}\)も計算して足したり引いたりすると以下の式が得られる。(補足を参照。)
\begin{equation}\label{eq:chr2}
\varGamma^{\lambda}_{\ \ \mu\nu} = \frac{1}{2} g^{\lambda\sigma}
\left(g_{\sigma\mu,\nu} + g_{\sigma\nu,\mu} – g_{\mu\nu,\sigma}
\right).
\end{equation}
ここで \(g^{\lambda\sigma}\) は,計量テンソル \(g_{\sigma\nu}\) の逆行列である。$$g^{\lambda\sigma} g_{\sigma\nu} = \delta^{\lambda}_{\ \ \nu} = \left \{ \begin{array}{cc} 1 & (\lambda=\nu) \\ 0 & (\lambda\ne\nu) \end{array} \right.$$

念のため,上の式は,\(4\times 4\) の正方行列 \(g\) とその逆行列 \(g^{-1}\) をかけると単位行列 \(I\) になる$$g^{-1}\,g = I = \left(\begin{array}{cccc}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 &0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{array}\right)$$ことを成分表示で示している。

成分で書いた測地線方程式

クリストッフェル記号を使うと,測地線方程式の成分は以下のように表される。
\begin{eqnarray}
\frac{du^{\lambda}}{dv} + \varGamma^{\lambda}_{\ \ \mu\nu} u^{\mu}u^{\nu}
= 0
\end{eqnarray}

保存量がわかりやすい形にした測地線方程式

実際の計算の際には,以下のようにして,保存量がわかりやすいように変形した測地線方程式を使うことが便利な場合がある。

測地線方程式基本ベクトル \(\boldsymbol{e}_{\nu} \) との内積をとって

\begin{eqnarray}
0 = \boldsymbol{e}_{\nu}\cdot \frac{d\boldsymbol{u}}{dv} &=&
\frac{d}{dv} \left( \boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu} \right) –
\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu, \lambda}\frac{dx^{\lambda}}{dv} \\
&=& \frac{d}{dv} \left( u^{\mu} \boldsymbol{e}_{\mu}\cdot\boldsymbol{e}_{\nu} \right) – \boldsymbol{e}_{\mu}\cdot \boldsymbol{e}_{\lambda, \nu} u^{\mu} u^{\lambda} \\
&=& \frac{d}{dv} \left( g_{\nu\mu} u^{\mu}  \right) – \frac{1}{2} g_{\mu\lambda, \nu} u^{\mu} u^{\lambda}
\end{eqnarray}

\( u_{\nu} \equiv g_{\nu\mu} u^{\mu} \) とすると, \(u_{\nu} \) に対する測地線方程式は

$$\frac{d u_{\nu}}{dv} = \frac{1}{2} g_{\lambda\mu, \nu} u^{\lambda} u^{\mu}$$ となる。

このことから,計量テンソル  \(g_{\lambda\mu} \) が \(x^{\nu} \) 依存性をもたない場合は,
$$\displaystyle g_{\lambda\mu, \nu} = 0\quad\Rightarrow\quad \frac{d u_{\nu}}{dv} = 0 \quad\Rightarrow\quad u_{\nu} = \mbox{const.} $$
となり,ただちに \(u_{\nu} \) 成分が保存量となることがわかる。