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曲がった時空における幾何光学近似

角径距離や光度距離の定義に必要な,曲がった時空における幾何光学近似についておさらしておく。

電磁場のエネルギー運動量テンソル

電磁場のエネルギー運動量テンソルは,SI 単位系では以下のように書ける。(c=1

Tμν=ε0{FμαFν  α14gμνFαβFαβ}

ここで,ε0 は真空の誘電率。昔の単位系(CGS-ガウス単位系)を使っているテキストでは,前の定数部分が ε014π となっている。

電磁テンソル Fμν は電磁ポテンシャル Aμ を使って
Fμν=Aν,μAμ,ν=Aν;μAμ;ν

ここで, ,νxν による偏微分, ;ν は共変微分をあらわす。

電荷密度 ρ や電流密度 J がない場合のマクスウェル方程式は
F    ;νμν=0であり,電磁ポテンシャル Aμ に対してはローレンツゲージ条件を採用することにしよう。
A  ;μμ=0

曲がった時空における幾何光学近似

曲がった時空における幾何光学では,電磁ポテンシャル Aν が電磁波の波長のスケールですばやく変化する部分 S(φ)φ は電磁波の位相)と,時空の曲率半径のスケールできわめてゆっくりと変化する部分 Aν を使って,以下のように書けるとする。

Aν=S(φ)Aν

幾何光学「近似」では以下のように近似する。
Aν,μ=(S(φ)Aν),μ=S,μAν+SAν,μS,μAν=Sφ,μAν

S(φ)の変化のスケールに比べれば Aν はきわめてゆっくりと変化するので,Aν,μ の項は無視しようという近似である。

 

位相一定面 φ=const. の法線ベクトルが光の伝播を表す4元ベクトル kμ となるので,

φ,μkμ,  kμ,νkν,μ=kμ;νkν;μ=0

4元ベクトル kμ を使って書くと

Aν;μ=SkμAν

Fμν=S(kμAνkνAμ)

 

ローレンツゲージ条件から

A  ;μμ=SkμAμ=0,  kμAμ=0

また,

0=F   ;νμν={S(kμAνkνAμ)};ν=Skν(kμAνkνAμ)+S(kμAνkνAμ);ν=S(0kνkνAμ)+S(kμAνkνAμ);ν

S の係数は独立にゼロにならないといけないので,
kνkν=0
というヌル条件が出てくる。

このヌル条件と “curl-free” (「うずなし」の気取った表現)条件 kμ;νkν;μ=0 を使うと,kν が測地線方程式に従うことが導かれる。

0=(kμkμ);ν=2kμ;νkμ=2kν;μkμ  k  ;μνkμ=0

幾何光学近似でのエネルギー運動量テンソル

最終的にエネルギー運動量テンソルは (kμkμ=0  と kμAμ=0 から FαβFαβ=0はすぐわかるので)

1ε0Tμν=FμαFν  α14gμνFαβFαβ=(S)2(kμAαkαAμ)(kνAαkαAν)=(S)2AαAαkμkν

A2ε0(S)2AαAα とおくと

Tμν=A2kμkν

これが4元ベクトル kμ で表される「単色光」の光源天体から放出される,電磁場のエネルギー運動量テンソルである。

T   ;νμν={(A2),νkν+A2k  ;νν}kμ+A2k  ;νμkν=0

より,既出の測地線方程式 k  ;νμkν=0
(A2),νkν+A2k  ;νν=0あるいは少し書き整えて
A,νkν+12Ak  ;νν=0が得られる。光の世界線をパラメトライズするアフィンパラメータ v を使えば,kν=dxνdv であるから

A,νkν=dxνdvAxν=dAdvを使うと

dAdv+12Ak  ;νν=0と書いてもよい。

まとめ

4元ベクトル kμ で表される「単色光」の光源天体から放出される,電磁場のエネルギー運動量テンソルは以下のように書ける。

Tμν=A2kμkν

T   ;νμν=0 より
A,νkν+12Ak  ;νν=0

kμ はうずなしのヌル測地線である。

kμ,νkν,μ=kμ;νkν;μ=0
kμkμ=0,k  ;νμkν=0

 

参考文献

G. F. R. Ellis – Relativistic Cosmology, in “General Relativity and Cosmology” ed. B. K. Sachs (Academic Press, New York, 1971) の P.144 あたり。