アインシュタイン方程式をうずなしのダスト流体の場合について解き,膨張宇宙の解であるフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー計量(FLRW 計量)を導出する。また,宇宙膨張をあらわすスケール因子を決めるフリードマン方程式について解説する。さらに,膨張宇宙における光の伝播と,宇宙論的距離の定義についても語る。
このセクションの構成
アインシュタイン方程式をうずなしのダスト流体の場合について解き,膨張宇宙の解であるフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー計量(FLRW 計量)を導出する。また,宇宙膨張をあらわすスケール因子を決めるフリードマン方程式について解説する。さらに,膨張宇宙における光の伝播と,宇宙論的距離の定義についても語る。
アインシュタイン方程式をうずなしのダスト流体の場合について解き,膨張宇宙の解であるフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー計量(以下,FLRW 計量)を導出する。(以下,\(c = 1\) とする。)
はなから一様等方性を決め打ちで仮定するのも芸がないので,少しだけ一般的状況設定からはじめて,最終的に一様等方な3次元空間であることが導かれるような書き振りにしてみる。
ハッブルパラメータ $H_0$ や密度パラメータ $\Omega_{\rm m}, \ \Omega_{\Lambda}$ の導入と,フリードマン方程式から求める宇宙年齢 \(t_0\)(スケール因子が \(a=0\) から \(a_0 = a(t_0)\) になるまでの時間)。
特に,$\Omega_{\Lambda} = 0$ の場合の宇宙年齢 \(t_0\) は,
\begin{eqnarray} H_0 t_0 &=& -\frac{1}{\Omega_{\rm m} -1}+\frac{\Omega_{\rm m}}{(\Omega_{\rm m}-1)^{\frac{3}{2}} } \tan^{-1}\sqrt{\Omega_{\rm m}-1} \quad \mbox{for}\ \ \Omega_{\rm m} > 1\\ H_0 t_0 &=& \frac{1}{1-\Omega_{\rm m}}-\frac{\Omega_{\rm m}}{(1-\Omega_{\rm m})^{\frac{3}{2}} } \tanh^{-1}\sqrt{1-\Omega_{\rm m}} \quad \mbox{for}\ \ \Omega_{\rm m} < 1 \end{eqnarray}
また,\(\Omega_{\rm m} + \Omega_{\Lambda} = 1\) すなわち \(k = 0\) の場合は,
\begin{eqnarray} H_0 t_0 &=& \frac{2}{3(\sqrt{\Omega_{\rm m} -1})}\tan^{-1} \sqrt{\Omega_{\rm m} -1} \quad \mbox{for}\ \ \Omega_{\rm m} > 1\\ H_0 t_0 &=& \frac{2}{3(\sqrt{1-\Omega_{\rm m} })}\tanh^{-1} \sqrt{1-\Omega_{\rm m} } \quad \mbox{for}\ \ \Omega_{\rm m} < 1\end{eqnarray}
となることを示す。
FLRW の3次元空間は定曲率空間であった。定曲率空間を表す計量テンソルについてまとめる。
FLRW 時空における光の伝播を測地線方程式から解く。
FLRW 時空であっても,光が伝播する経路はヌル測地線で与えられる。別ページで述べたように,
膨張宇宙におけるヌル測地線である光線の束,つまり光線束(ray bundle)の伝播から定義される角径距離 angular diameter distance について。
見かけの光度が距離の2乗に反比例することから定義される光度距離について,一般的な定義から説き起こす。
角径距離や光度距離の定義に必要な,曲がった時空における幾何光学近似についておさらしておく。
多数の光線の束(多数の近接ヌル測地線が束になってるイメージ)を光線束という。この光線束の断面(2次元面)の形の変化を決めるのが expansion $\theta$ や shear $\sigma$ などの光学スカラーである。なんで以下のような式が必要になるかというと,角径距離や光度距離などの宇宙論的距離は,光線束の断面の変化から定義されるからである。