文:日野十成、絵:斎藤隆夫『かえるの天神さん』福音館書店

文:日野十成、絵:斎藤隆夫『かえるの天神さん』福音館書店

 

学問の神様として有名な菅原道真の生涯とその死後の怨霊譚を、カエルの「ミチザネさん」の絵物語として語る絵本!

挿絵は平安時代以来の日本の絵巻物に特徴的な「吹き抜き屋台」の構図で俯瞰的に室内を描いたり、雲のような「すやり霞」を導入して時間と空間の隔たりを示したりするなど、まさしく伝統的な手法で描かれています。鎌倉時代に遡ると考えられる《北野天神縁起絵巻》の世界が目の前に広がります。

とはいえ、人をカエルに置き換えることで、本来は都から筑紫の国に流された悲しい生涯や、死の直前に天神となった道真の怨霊に引き起こした恐ろしい祟りの顚末が、なんともコミカルな様相を呈しているさまは、「さすがに21世紀の絵本!」と、思わず笑いがこみあげてきます。

 

昔ながらの絵巻物の描写法に触れつつ、道真の生涯を楽しく追うことのできる絵本です。

最後、北野天満宮に咲き誇る梅の花の描写が美しく、春に向かうこの季節の華やぎを伝えます。

 

※この投稿の画像は、出版社が一般に掲載を許可している範囲内のものです。無断転載はご遠慮ください。

「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」vol. 3の参加受付、2月9日12:00開始です!

午前・午後とも定員に達しましたので、お申込みを締め切らせていただきます。

たくさんのお申込み、ありがとうございました!

 

ワークショップには保護者の方も参加できます。

また、ワークショップの途中退出もできます。

 

ぜひ、お気軽にご参加ください!

文:萱野茂、絵:どいかや『アイヌのむかしばなし ひまなこなべ』あすなろ書房

文:萱野茂、絵:どいかや『アイヌのむかしばなし ひまなこなべ』あすなろ書房

 

 

アイヌの昔話「ひまなこなべ」の絵本です。

アイヌの人々は、山や川や星や太陽、動物、植物、そして人間が作った道具など、あらゆるものには魂がやどっており、それらはみな「カムイ」と呼ばれる神さまだと信じていたそうです。なかでも、熊は彼らにとって特別でした。なぜなら熊は、おいしい肉やあたたかい毛皮、そして大事な薬などを与えてくれる存在だったからです。大切なものを人々に与える熊は、だからこそ同時にカムイだったのです。この神の命をいただく時、アイヌの人々はこれ以上にないほどのお礼をし、心ずくしのおもてなしをします。そうして天に帰っていく熊のカムイは、また再びアイヌの世界にもどりたくなるものと信じられていました。この物語は、天からアイヌの世界へと降りてきた熊神と、熊神をもてなす宴席で素晴らしい踊りを披露する若者にまつわるお話です。

 

ある日、天にいた熊神は、石狩川の上流に住む心と魂の美しさで評判のアイヌのお客になろうと思い、熊の姿となって山を下っていきました。評判のアイヌを目にした神は、彼の矢に射られようと、わざとその目の前に姿をあらわします。とたん、バシッという弓の音がして熊神の体の矢がささりました。熊神が何がどうなったのかまったく分からなくなりますが、しばらくすると、熊である自分の体と頭ば別々になって、魂だけが耳と耳の間に座っていることに気づきます。こうして仕留められた熊神は、アイヌによって村へと運ばれていきました。

 

夕暮れちかく、熊神が訪れたことを伝えられた村人は、宴席をもうけておもてなしをはじめました。歌い踊る人々のなかに、ひときわ踊りの上手な体の小さな若者がいました。この若者の踊りを飽かず眺めていた熊神は、どうやらこの若者も何かの神らしいと思うようになりました。さて、この若者のことが忘れられなくなってしまった熊神は、このあとどうやって若者の本当の正体を知ることになるのでしょうか――。

 

自然や道具に神の存在を認め敬うアイヌの人々の習慣と、それにまつわる物語が、熊神の口から軽快に語られていきます。どいかやのあたたかく可愛らしい挿絵が花を添えます。カラフルで華やかなページが次々にあらわれて、最初から最後まで目の離せない絵本となっています。

 

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演奏者紹介:関脩之介さん(ピアニスト)

「0歳から大人まで みんなのミニコンサート」出演のピアニストを紹介いたします。

 

関脩之介(せき・ゆうのすけ)

3歳からピアノを始め、加福誠子氏、木村美奈子氏、庄子みどり氏、矢野吉晴氏に師事。青森県ジュニアピアノコンクール上級部門最優秀賞・審査員特別賞(2010)、日本ピアノコンクール全国大会中級第1位(2010)、青森県こどもピアノコンクール中高生B部門第1位(2014)、東北青少年音楽コンクールピアノAコース金賞(2017)、東京ピアノコンクール一般A部門審査員奨励賞(2020)。

好きな演奏家は、庄子みどり、ウラディーミル・アシュケナージ、フジ子・ヘミング。好きな作曲家は、ベートーヴェン、リスト。好きな曲は、シャコンヌ(バッハ)、ラ・カンパネッラ(リスト)。

現在、弘前大学教育学部数学専修第2学年。

 

繊細さと力強さを合わせ持つピアニスト。バッハ作曲ブゾーニ編曲《シャコンヌ》は「弘前大学ピアノの会」の2019年のサマーコンサートで披露され、細部まで作り込まれた奥行きのある演奏でした。

今回の「みんなのミニコンサート」では、リスト《ラ・マルセイエーズ》を新たにレパートリーとして開拓してくれました。電子鍵盤でのコンサートですが、名手が扱えば電子ピアノもこれほど応えてくれるのか、と驚くような素晴らしい演奏になるはずです。ぜひご期待下さい!

作・絵:きくちちき『ゆき』ほるぷ出版

作・絵:きくちちき『ゆき』ほるぷ出版

 

動物たちの住む森に雪が降ってきました。

だんだんと白くなっていく世界ーー動物たちはどうするのでしょうか。

そして人間の子どもたちは?

 

みずみずしく色鮮やかな水彩の世界が広がります。

 

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再話:瀬田貞二、画:赤羽末吉『かさじぞう』福音館書店

再話:瀬田貞二、画:赤羽末吉『かさじぞう』福音館書店

 

年越しを前にしたおじいさんとおばあさん。おじいさんはあみがさを五つこしらえて町へ売りに行きます。年越し市は大賑わい。誰もおじいさんのあみがさには見向きもしません。

帰り道、おじいさんは、ふかふかと降る雪の中で鼻からつららを垂らす六体の地蔵さまに出会います。すかさず五つのあみがさがそして自分のあみがさをお地蔵さまにかぶせるおじいさん。

 

家に帰って眠りについたあとの正月の明け方、「よういさ、よういさ、よういさな」というそりひきのかけ声でおじいさんとおばあさんは目を覚まします。さてそのあとの展開はーー

 

おなじみの『かさじぞう』の民話。

白い雪の風景が暖かみのある墨のおおらかな線で描かれています。薄い墨の滲みと濃い墨の線、ところどころに差し込まれた青や緑や赤や黄色。

瀬田貞二のよどみのない口調を、赤羽末吉の挿絵がゆったりと包み込んでいます。

1961年初版。

 

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絵と文:音の台所(茂木淳子)、音のモティーフ:春畑セロリ『ゼツメツキグシュノオト』らんか社

絵と文:音の台所(茂木淳子)、音のモティーフ:春畑セロリ『ゼツメツキグシュノオト』らんか社

リュウキュウコノハズク、アオウミガメ、イリオモテヤマネコ、クマゲラ、ホッキョクグマなどなどー絶滅危惧種の動物たち―それぞれの動物にすてきなメロディと詩がつけられています。ー動物たちの音楽が静かに流れていくようです。動物たちには、一つずつ音楽用語が当てられていて、そこから詩が始まります。

黒地に浮かぶ色彩が美しい挿絵です。

 

小さな絵本とともにメロディをのせたCD(日本アコースティックレコーズ)と楽譜(音楽之友社)も発売されています。

ささやきかけてくるような、小さな宝石箱のような音と絵と詩のコラボレーション。

 

poco a poco アートのたまごの「ポコ・ア・ポコ」も音楽のための言葉。

「すこしずつ すこしずつ」、一枚一枚木の葉を運ぶエゾナキウサギのように、ゆっくりとではありますが、活動を続けていきたいと思います。

 

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「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」、明日参加受付開始です!→午前・午後とも定員に達しました。

 

2月8日については午前・午後、双方とも定員に達しました。

たくさんのお申し込み、ありがとうございました!

※2月29日(土)の「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」(@ヒロロ3階「多世代交流室1」)については、2月9日(日)12:00から受付開始です。

 

 

とき

令和2年2月8日(土)

午前:10:00‐12:00(墨絵に挑戦!)

午後:13:30‐16:00(日本画の画材に挑戦!)

 

ばしょ

弘前文化センター3階 工作実習室

 

対象

午前・午後とも、幼稚園/保育園から小学校高学年までのお子さまと保護者の方々。

ワークショップには保護者の方も参加できます!

前半は「雪」と「動物」をテーマにした絵本のおはなし会と関連する絵画の鑑賞会、後半はワークショップを行います。

普段はあまり使う機会がないかもしれない墨や日本画の顔料で絵を描いてみませんか?

 

※午前・午後とも先着16名様まで。

当ウェブサイト、申込専用フォームで受付いたします。

日本画の顔料

作:新美南吉、絵:どいかや『手ぶくろを買いに』あすなろ書房

作:新美南吉、絵:どいかや『手ぶくろを買いに』あすなろ書房

 

 

はじめて雪を目にしたきつねの子は、朝目をさますと「あっ」とさけんで母さんぎつねに駆け寄ります。「かあちゃん、目になにかささった、ぬいてちょうだい、早く早く。」母さんぎつねはびっくりしますが、外の出て分かりました。夜のうちに雪がどっさり降って、その上からおひさまがキラキラしていたので、雪がまぶしく反射していたのです。

 

はじめての雪に喜ぶ子ぎつね。早速遊びに出かけます。ところが帰ってくると、手が冷たいことに気づきました。「おかあちゃん、おててがつめたい、おててがちんちんする。」母さんぎつねは、夜になったら町に行って、ぼうやに似合うような毛糸の手ぶくろを買ってやろうと思いました。

ところが、母さんぎつねは以前お百姓の家のあひるを盗もうとして、見つかって、命からがら逃げてきたことを思い出し、どうしても町の方に足を進めることができません。しかたなく、子ぎつねを1人で町まで行かせることになりました。

 

心配する母さんぎつね、町で人のやさしさに触れた子ぎつね――

 

新美南吉の『手ぶくろを買いに』が、どいかやによるあたたかな挿絵で素敵な絵本になりました。

白と黒のモノクロームを基調とした夜の雪景色に、淡くやさしい色が温かみを添えています。

いつ読んでも切なくなる冬の絵本。

 

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きくちちき『とらのことらこ』小学館

作・絵:きくちちき『とらのことらこ』小学館

 

 

とらの子のとらこが成長していく様子がとにかくかわいい!

はじめはおかあさんのうしろでおそるおそるまわりを見ていたとらこ。

ちょうちょをつかまえることもできなかったとらこ。

それでもあるとき、ようやく・・・!!!

でもやっぱり最後につかまえるのは——

 

きくちちきの筆が自由奔放なようでいてコントロールされています。少し薄い墨で描かれた輪郭線とみずみずしく広がる水彩絵具の色・色・色。黄色の装丁も効果的です。

とらこの姿は、かわいらしい一方で、長沢蘆雪の《虎図》をも彷彿とさせます。

 

※この投稿の図版は出版社の許可を得て掲載しているものです。無断転載はご遠慮ください。