文:石井睦美、絵:せなけいこ、原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン『もみの木』株式会社KADOKAWA

文:石井睦美、絵:せなけいこ、原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン『もみの木』株式会社KADOKAWA

 

 

はやく大きくなりたかった「もみの木」は、次々ときりたおされては持って行かれる仲間のもみの木たちがうらやましくてたまりません。もう大分大きくなった頃、「もみの木」は仲間たちの行方をすずめに尋ねます。するとすずめは、部屋の中で金のリンゴやおもちゃやろうそくで飾られているもみの木の様子を教えてくれました。それを聞いた「もみの木」は、広い森のなかにいる幸せを説いて聞かせるおひさまの言うことも耳に入らず、自分にもそんなことが起きないかなぁ、とうらやましがります。

 

その年の冬、「もみの木」はついに切られることになりました。

そうして、りっぱなクリスマスツリーになった「もみの木」ですが・・・。

 

「もみの木」の立場からとらえた本当の幸せとは何か――クリスマスの賑わいをよそに、他者の存在について問いかける、重厚な物語です。

 

せなけいこのあたたかな色調の切り絵と紙のやわらかな質感が、切なくもやさしい余韻を伝えます。

 

 

文:石井睦美、絵:せなけいこ、原作:サカリアス・トペリウス『星のひとみ』株式会社KADOKAWA

文:石井睦美、絵:せなけいこ、原作:サカリアス・トペリウス『星のひとみ』株式会社KADOKAWA

 

 

遠いフィンランドのお話です。

 

クリスマスの前の晩、トナカイのひく二つのそりが雪原を走っていきます。

そりにはサーミ人の家族が乗っていました。きれいでしずかな夜でした。

 

――そんな彼らをオオカミの群れが追いかけてきました。

急いで逃げていくなか、母親の腕に抱かれていた女の子の赤ちゃんが雪の上に放り出されてしまいます。オオカミたちが赤ちゃんを囲みます。ところが、赤ちゃんに見つめられたオオカミたちは、何もしようとはせず、ふたたびトナカイのひくそりを追いかけていくのでした。

 

その後赤ちゃんは通りかかったフィンランド人の農夫に拾われます。農夫の家族が赤ちゃんを教会に連れて行くと、ぼくしさんはこの子に「星のひとみ」という名前をつけました。

実際、この子のひとみには不思議な力があったのです。――

 

「おばけシリーズ」や「めがねうさぎシリーズ」で人気のせなけいこによる切り絵が繊細な絵本。

静かな雪原、暖かく賑やかな家族の様子、見る者を惹きつけてやまない「星のひとみ」の印象的なまなざし。切り絵という手法がこんなにも表情豊かであることに驚きます。時に冷たく、残酷にも見える彼女の視線は、この物語の底流に垣間見える人間の愚かさや非情さ、そして非力さをうったえる力を持っています。

文:ケイト・メスナー、絵:クリストファー・サイラス・ニール、訳:小梨直『ゆきのうえゆきのした』福音館書店

文:ケイト・メスナー、絵:クリストファー・サイラス・ニール、訳:小梨直『ゆきのうえゆきのした』福音館書店

 

 

雪が積もった森をスキーで進んで行くとき、雪の下では動物たちがそれぞれの冬を過ごしいる――

お父さんが女の子に教えます。

 

「ゆきのうえ」の森の景色と「ゆきのした」の動物たちの世界が、単純ながらも洗練されたフォルムでいきいきと描き出されています。

 

冬が楽しみになる一冊。

作:マリオン・デーン・バウアー、絵:リチャード・ジョーンズ、訳:横山和江『キツネのはじめてのふゆ』すずき出版

作:マリオン・デーン・バウアー作、絵:リチャード・ジョーンズ、訳:横山和江 『キツネのはじめてのふゆ』すずき出版

 

 

 

雪がひとひら降ってきました。

森ではじめての冬をむかえた子ぎつねに、仲間たちはこの季節の過ごし方を教えます。

ところがどの過ごし方も子ぎつねにはあまり合っていないようです。

そうして、はらはらと落ちる雪の上に寝そべって考える子ぎつねの前に現れたのは――

 

静かに雪が積もっていく森の様子とそこに暮らす動物たちがやさしい。

そして子ぎつねの表情が愛らしく微笑ましい。ほっとする絵本です。

 

コラージュではありませんが、樹々や草葉、動物たちの描写には切り絵のヒントがたくさん詰まっています。

 

文・絵:レオ=レオニ、訳:谷川俊太郎『アレクサンダとぜんまいねずみ』好学社

文・絵:レオ=レオニ、訳:谷川俊太郎『アレクサンダとぜんまいねずみ』好学社

 

 

ある日、ねずみのアレクサンダは、人間にかわいがられて過ごすぜんまいねずみに出会います。「自分はいつも追いはらわれてばかりなのに」と落ち込むアレクサンダに、ぜんまいねずみは、庭のこみちのはしのしげみに生き物をほかの生き物に変えることのできる魔法のとかげが住んでいることを伝えます。アレクサンダはさっそくとかげに会いにでかけていきます。一方、ぜんまいねずみの運命は、新しいおもちゃのせいで大きく変わろうとしていました。・・・

 

レオ・レオニがさまざまな色、柄、素材の紙を用いて描いたページの一枚一枚は、ときに明るく活気にあふれ、ときに繊細で美しく、またときにキュビスムのパピエ・コレの手法を思わせる大胆さを併せ持っています。――コラージュ表現のさまざまな魅力が詰まった絵本です。

 

作:方軼羣、画:村山知義『しんせつなともだち』福音館書店

作:方軼羣、訳:君島久子、画:村山知義『しんせつなともだち』福音館書店

 

あたり一面が雪でまっ白な中、食べ物を探して外にでたこうさぎは、かぶを二つみつけます。

こうさぎはかぶを一つ食べ、もう一つはお腹を空かせているにちがいないろばさんにあげようと、友達のろばさんのもとに向かいます。ところがろばさんは外出中。こうさぎはろばさんの家にかぶを置いて帰りました。さてこのかぶは、友達から友達へと贈られていき・・・「しんせつなともだち」たちの思いやりが、暖かい読後感をもたらしてくれます。

 

挿絵はコラージュによるものではありませんが、この挿絵を担当した村山知義は1922年にドイツに滞在し、当時ヨーロッパ美術を牽引していたさまざまな運動の一つであるドイツ表現主義に接触しました。その折に、廃物などによるコラージュ作品(「メルツ絵画」)を手がけていた美術家クルト・シュヴィッタースに出会い、自身もいくつかのコラージュ作品を残しています。帰国後は前衛芸術家としてとくに演劇方面で活躍したほか、子供向け冊子の挿絵を手がけたりもしました。繊細なタッチで仕上げられた水彩による挿絵ながら、雪をかぶった野原や木々、そしてこうさぎのコートなどに見られるやや単純化されたフォルムの扱いのうちに、あるいはまた鮮やかな色調の対比のうちに、20世紀前半のモダニズムアートの雰囲気が漂います。

エリック・カール『はらぺこあおむし』偕成社

文・絵:エリック・カール、訳:もり ひさし『はらぺこあおむし』偕成社

 

 

おなじみの『はらぺこあおむし』。

小さなあおむしがたくさん食べて、さなぎになって、そうして・・・!

エリック・カールのカラフルで楽しいコラージュによって描かれたご馳走は

いつ見てもおいしそうで、小さなあおむしに共感してしまう。

 

 

1970年アメリカ・グラフィックアート協会賞受賞

エズラ・ジャック・キーツ『ゆきのひ』偕成社

文・絵:エズラ・ジャック・キーツ、訳:木島 始『ゆきのひ』偕成社

 

 

町に雪が降った日――

ピーターは地面の雪に線を引いてみたり、木に積もった雪をつついてみたり。

少年の目に映る「ゆきのひ」の光景が、エズラ・ジャック・キーツの詩情豊かなコラージュによって、楽しく、温かく、みずみずしく広がります。

 

1963年コルデコット賞受賞

「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」vol. 1 ポスターデザイン出来上がりました。

「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」vol. 1 のポスターデザインが出来ました。

 

「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」vol.1 ポスター

 

「雪」をテーマにしたおはなし会といろいろな紙を切り貼りして作るコラージュのワークショップに合わせたデザインにしてみました。

 

只今、コラージュのためのさまざまな紙素材を用意しているところです。

これから、おはなし会やワークショップに関連する絵本など、紹介していきたいと思います。

 

参加申し込みの開始は11月17日(日)12時です。

その他、イベントに関するご質問等は随時受け付けております。

 

ぜひ、お気軽にご参加ください!

 

 

「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」の開催日時が決定しました!

開催日時:2019年12月15日(日) 

 午前 10:00〜12:00(幼稚園・保育園から小学校低学年のお子さまと保護者の方々)

 午後 13:30〜16:00(小学生と保護者の方々)

開催場所:ヒロロ3階「多世代交流室1」

参加無料

午前・午後とも先着24名様までの受付となります。お申し込みは当ウェブサイトの専用フォームをご利用ください。(申込受付:2019年11月17日〈日〉12:00~)
 

※参加時間帯とお子さまの年齢の組合せについてはご相談に応じます。お気軽にお問い合わせください。

※お申し込み1件につき、お子さま3名+保護者(大人)の方2名を最大人数とさせていただいております。

このイベントは「弘前市市民参加型まちづくり1%システム」対象事業です。

 

12月の「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」のテーマは、紙を使ったコラージュによる雪の表現です。

 

雪をテーマにした絵本はたくさんありますが、そのなかでも、挿絵にコラージュの手法を用いたものを中心にとりあげます。『はらぺこあおむし』のエリック・カールや『スイミー』のレオ・レオーニなどは、紙を切り貼りしたコラージュで色とりどりの楽しいページを作り出していった代表的な絵本作家です。今回は、さまざまな色や素材の紙を使ってつくられた挿絵や美術作品を見て、その面白さや美しさ、奥深さを味わいたいと思います。

おはなし会&鑑賞会のあとは、絵本を読んだり挿絵を見たりしても、あるいは、ワークショップに参加してコラージュによる作品作りに挑戦しても、どちらの楽しみ方でもかまいません。ぜひ、お気軽にご参加ください。また、保護者の方のワークショップへの参加も大歓迎です。鑑賞会とワークショップでは、弘前大学美術教育学部の教員と学生たちが解説、また補助・アドバイスをいたします。(ワークショップに参加される場合は、汚れてもよい服装でいらしてください。)

 

クリスマスが近づいてくる12月なかば、弘前ではちょうど雪が積もりはじめます。これからやってくるにぎやかな冬の行事を連想しながら、カラフルでポップな雪の表現をお楽しみください。

 

とりあげる予定のアーティスト

挿絵作家:エズラ・ジャック・キーツ、エリック・カール、レオ・レオーニ、村山知義、tupera tuperaなど

画家:アンリ・マティス、パブロ・ピカソなど