再話:松居直、画:赤羽末吉『だいくとおにろく』福音館書店

再話:松居 直、画:赤羽末吉『だいくとおにろく』福音館書店

 

流れのはやい川に橋を架けるよう村人に頼まれた大工――

川のほとりにやってきた彼は、水の流れを眺めながらどうしたものかと思案します。

その時、ぶくぶくと泡がたちはじめた流れの中からいきなり現れたのは、大きな鬼でした。

目玉と引き換えに橋を架けてやってもいいと言う鬼と、迷う大工。

二人の軽妙なやりとりがおもしろい。

 

さまざまな絵本挿絵で知られる赤羽末吉の軽快な筆遣いと目に彩な色彩。

日本の伝統的な絵画技法の流れを受け継ぐ見事な挿絵が、昔話の面白みを引き立てています。

作:デイビッド・リッチフィールド、訳:俵万智『クマと森のピアノ』ポプラ社

作:デイビッド・リッチフィールド、訳:俵万智『クマと森のピアノ』ポプラ社

 

ある日、こぐまのブラウンは、森の中で「へんなもの」に出会います。

美しい音の出るそれは、一台のピアノでした。

 

この音の出るものに心惹かれたブラウンは、来る日も来る日も鍵盤を鳴らしにやってきました。

そうしてだんだんとこのピアノに親しんでいったブラウンは、いつの間にか、素敵なメロディを奏でられるようになっていました。彼の紡ぎ出す美しい音楽は、森の仲間たちをも惹きつけます。ブラウンのピアノの旋律はみんなを幸せにしました。

 

そんな時、この森にやってきた人間の親子が偶然にもブラウンのピアノを耳にします。ブラウンは女の子に誘われて、音楽の溢れる町にでてたくさんの観客を前にピアノを弾いてみようと、森を出る決心をしますーー

 

ピアノのある美しい森の情景が印象深い一冊です。

作・絵 みやこしあきこ『ピアノはっぴょうかい』ブロンズ新社

作・絵:みやこしあきこ『ピアノはっぴょうかい』ブロンズ新社

 

 

はじめてのピアノの発表会をむかえたももちゃん。むねがどきどきします。

「だいじょうぶ だいじょうぶ」と心の中で繰り返すももちゃん。

そのとき足もとで、「だいじょうぶ だいじょうぶ」とささやく小さな声が聞こえてきました。

そこにいたのはこねずみでした。こねずみもまた、はじめての歌の発表会をむかえようとしていました。こねずみについていったももちゃんはーー

 

ピアノを習い始めた頃、同じようにどきどきした経験のある人は多いと思います。

演奏前や演奏中の緊張と、演奏後の爽快感と後悔が入り混じったような感覚、そしてほっとし安堵感。

みやこしあきこの繊細なモノクロームの鉛筆画が、遠い日の記憶を蘇らせます。

 

 

 

 

作:マリー・ホール・エッツ&アウロラ・ラバスティダ、画:マリー・ホール・エッツ、訳:田辺五十鈴『セシのポサダの日 クリスマスまであと九日』冨山房

作:マリー・ホール・エッツ&アウロラ・ラバスティダ、画:マリー・ホール・エッツ『セシのポサダの日 クリスマスまであと九日』冨山房

 

 

クリスマスが近づいてきました。

 

メキシコでは、クリスマス前の九日間、毎晩どこかの家で「ポサダ」と呼ばれるパーティーが開かれるそうです。そこでは、ピニャタという、中に粘土でできた壺の入った動物や星のかたちのハリコがロープに吊るされます。そこには、色とりどりのお菓子が入っていて、ポサダにやってきた子どもたちは、目隠しをしてこのハリコの入れ物を割って遊ぶのです。

 

この絵本では、幼稚園に通い出した女の子セシが、はじめて自分のポサダを開いてもらうことになった時のおはなしが語られています。彼女は、はじめて出かけたクリスマスマーケットで、星のかたちをしたピニャタに出会いました。

待ちに待ったセシのポサダの晩――、彼女はピニャタが割られてしまうのが悲しくてたまりません。セシのピニャタの星はどうなってしまうのでしょうか。

 

ポサダを楽しみにするかわいらしいセシの様子が、鮮やかな色彩がところどころリズミカルに配された鉛筆画で描き出されています。クリスマスの賑わいを前にした小さな女の子のワクワクす気もちが伝わります。お母さんとクリスマスマーケットに向かう時のうれしそうな後ろ姿、ピニャタの星が割られてしまうことを悲しがる様子、そして、大事にしているお人形のガビナとともに空の星を見あげる一生懸命な表情など、小さな女の子セシがなんとも愛らしく微笑ましい。

文:ルース・クラウス、絵:マーク・シーモント、訳:きじまはじめ『はなをくんくん』福音館書店

文:ルース・クラウス、絵:マーク・シーモント、訳:きじまはじめ『はなをくんくん』福音館書店

 

今日の弘前、岩木山の麓のほうでは、もう雪が地面を白くし始めました。

 

 

白い雪がしんしんと降り積もる森の中では、動物たちがそれぞれに冬眠をしています。

のねずみも、くまも、かたつむりも、りすも、そしてやまねずみも・・・。

やわらかなタッチのモノクロームの鉛筆画が、動物たちの息づかいを伝えます。

 

 

冬がすすみ、やがて動物たちは目を覚まし、鼻をくんくんさせはじめます。

彼らが気づいた匂いの先にあるものは――

 

白く静かな森の描写がやさしい本です。

手島圭三郎『しまふくろうとふゆのつき』絵本塾出版

手島圭三郎『しまふくろうとふゆのつき』絵本塾出版

 

 

月に照らされた雪原としまふくろうの勇壮な姿――

凍てついた大地とそこにすむ動物たちの生き様が、短くも雄弁な言葉で語られていきます。

つがいのしまふくろうの後ろ姿があたたかな余韻を残します。

 

ダイナミックでありながら精緻な版画であらわされた雄大な雪原の風景が、凍てつく大地の上で繰り広げられる生命のいとなみを圧倒的な力をもってうったえかけてきます。

作・絵:こうのあおい『ふゆ』アノニマ・スタジオ

作・絵:こうのあおい『ふゆ』アノニマ・スタジオ

 

今年もひらひらと雪が舞い降りてくる季節になりました。

 

静かに雪が降り積もっていく森の様子がシンプルでスマートな色とフォルムで描かれています。

葉っぱの落ちた木、雪に残る動物の足跡・・・単純でありながら魅力的な形に溢れています。

最後のページが、白とグレーの世界になれた目を驚かせます。

 

スタイリッシュな「ふゆ」の森の情景が広がります。

poco a poco アートのたまご これからの予定

12月の「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」にたくさんのお申し込みありがとうございました。
また、お電話でのお問合せに対応できなかった皆さまにはご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。

2月にも、盛りだくさんの催しを予定しています。
絵本と絵画の鑑賞会お申込の開始は1月の予定です。
コンサートは、登録受付中です。

 

絵本と絵画の鑑賞会+墨絵ワークショップ
2020年2月8日(土)
10:00-16:00 (途中退出可)
弘前市民文化センター(中央公民館)3階 工作実習室

絵本と絵画の鑑賞会+筆ペン画に挑戦!(ワークショップ)
2020年2月29日(土)

(午前の回)10:00-12:00
(午後の回)13:30-16:00 (いずれも途中退出可)
ヒロロ3階 多世代交流室1

 

(プレイベント)0歳から大人まで みんなのミニコンサート
2020年2月1日(土)14:15頃~ (30分程度、申込等不要)

ヒロロ3階 イベントスペース

0歳から大人まで みんなのコンサート  
2020年2月13日(木)11:00-12:00 (途中入退場可)

ヒロロ4階 弘前市民文化交流館ホール

★すべて、参加無料です。

本事業は、弘前市による市民参加型まちづくり1%システムの助成を受けて実施いたします。

絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ(12月15日) 参加受付中です!

※午前の部、午後の部ともに定員に達しましたので、申込を締め切らせて頂きます。たくさんのお申込をありがとうございます。

poco a poco アートのたまご 企画第一弾(「弘前市市民参加型まちづくり1%活用システム」対象事業です。)

「絵本と絵画の鑑賞会+ワークショップ」(12月15日 ヒロロ3階「多世代交流室1」)の参加受付が11月17日(日)12:00に始まります。

「ゆき」をテーマにしたおはなしと、いろいろな紙を切りはりしたコラージュによる挿絵の世界を楽しみます。コラージュの作品づくりに挑戦するワークショップもあります!ワークショップは保護者の方も参加できます。

 

おはなし会&鑑賞会のあとは、

 〇絵本を読んだり挿絵を見たり

 〇ワークショップに参加して作品づくりを楽しんだり

どちらの楽しみ方でもOKです!

 

・午前の部 10:00-12:00(対象:幼稚園・保育園および小学校低学年のお子さまと保護者の方)

・午後の部 13:30-16:00(対象:小学生全般と保護者の方)

※参加時間帯と対象年齢の組み合わせについてはご相談に応じますので、お気軽にお問合せください。

 

ワークショップの途中退場可能です。

参加無料です。

 

ぜひお気軽にご参加ください!

 

 

絵・文:クリス・ヴァン・オールズバーグ、訳:村上春樹『急行「北極号」』あすなろ書房

絵・文:クリス・ヴァン・オールズバーグ、訳:村上春樹『急行「北極号」』あすなろ書房

 

クリスマス・イブの夜中、少年はベッドのなかで、サンタのそりの鈴の音が聞こえてくるのをじっと待っていました。ところが、夜が更けて聞こえてきたのは、しゅうっという蒸気の音と金属のきしむ音だったのです。少年の家の前には汽車ととまっていました。それは、急行『北極号』でした。少年は車掌にひっぱりあげられて汽車に乗り込みます。

北極号が目指していたのは森と山を越えた世界のてっぺんにぽつりとある「北極点」でした。そこは大きな街で、たくさんの工場があります。すべてのクリスマスのおもちゃはこの工場で作られているのです。街のまん中にはこびとたちが集まっていました。なんとそこでは、クリスマスプレゼントの第一号をサンタが子どもたちのうちの一人に手渡すことになっていました。――この後、少年を待ち構えていたのはどんな出来事でしょうか。

 

壮大な雪の景色、クリスマスのイルミネーションが灯る北極点の街、そしてクリスマスの朝のツリーの下での出来事――クリスマス・イブの夜に少年の身に起きたスリリングでファンタジックな出来事がクリス・ヴァン・オールズバーグの繊細な筆によって展開されていきます。

 

子どものころクリスマスに抱いていた夢が詰まった一冊です。大人には聞こえない鈴の音のエピソードの余韻が止まない。

 

1986年 コルデコット賞受賞