文:大川悦生、絵:赤羽末吉『きんいろのきつね』ポプラ社

文:大川悦生、絵:赤羽末吉『きんいろのきつね』ポプラ社

 

狐にまつわるお話にもいろいろなタイプがありますがースケールの大きな化けぎつねのお話です。
平安時代の末頃、みかどにお仕えする女たちのなかに、「たまものまえ」というきれいな姫さまがいました。とてもきれいなので、みかどにたいそう可愛がられていました。ところが、この姫さまに会うたびにみかどは体の調子が悪くなるのです。都で一番の占い師あべのやすなりが調べてみると、なんとこの姫さまの正体は、猛々しい「きんいろのきつね」でした。

この狐、はるか昔、天と地が分かれたばかりの頃に生まれた女狐で、らんらんと照り輝く目、ふっさりと長い金色の毛、九つにさけた長い尾をもち、子牛くらいの大きさで、怪しげな術を使うことができるのでした。

地上で人間の国が栄えるようになると、美しいお妃になりすましたり、お妃の一人に取り憑いたりして、なんと古代中国の殷や周の国を滅亡へと至らしめます。インドの摩掲陀国では、王子の妃になりすまして、子どもをさらっては食べてしまっていました。
そんな狐が、今度は海を渡って 日本にやってきたのです。

さて、正体が判明されてしまった「きんいろのきつね」は東国の那須野が原に逃げ延びます。そののち、そこでは農民たちが何人も姿をくらましていきました。これがあの狐の仕業であるこてがわかり・・・この後、広大な那須野が原で繰り広げられるなすの八郎率いる東国の強者たちと狐の戦いは、壮大で圧巻です。

那須野が原の殺生石にまつわるお話です。

 

数々の日本の民話に見応えある挿絵を描いてきた赤羽末吉の筆による絵画。

繊細な墨線が迷いなく引かれた輪郭線。大胆で美しい色彩。広大な構図。ページをめくるごとに完成された絵画が現れます。物語と絵画のスケールが見事に調和しています。

 

※この投稿の画像は出版社から掲載の許諾を得ているものです。