数値の科学的表記

科学技術に関する文書においては、数値を表示する際に、桁数と数字を分離した -1.602×10-19 のような記法が頻繁に用いられます。これを、科学的表記(Scientific Notation)とか科学的記法とか科学的記数法とか指数表示などと呼んだりしますが、本記事では科学的表記で統一します。

ルール

簡単に書くと A × 10N という形になりますが、Nは常に整数です。そして通常は、Aの絶対値が1以上10未満になるようにNを定めます。このとき、Aを仮数と呼ぶことがあります。これで、0以外の有限値は一意に表現することができます。

特定の目的がある場合には、Aがその範囲外の値をとる表示をすることもありますが(81×10-6のように)、Nを非整数で表すことは一切ないと考えていいでしょう。

効果

なぜこのような表記を使うのでしょうか。科学的表記を使うと、次の2つの効果があります。

学生実験の指導書では下記2の効果だけが語られがちですが、1も重要な観点です。

1.大きな値や小さな値を簡潔に表示できる

科学技術分野では、0.3とか20とかに比べて(絶対値の)大きな値や小さな値が頻繁に出てきます。数値を科学的表記で表示しておくと、10の指数を見るだけでどの程度の大きさなのかを把握することができます。
例えば指数を使わずに 1770000000 などと表示すると、何桁の数なのかがわかりにくいですね(これと 7100000000 はどちらが大きいか一目でわかるでしょうか?)。これを 1.77×109 と表記しておけば、どの程度の大きさなのかが一目でわかりますし、7.1×109との比較も容易にできます。

2.数値の有効数字を適切に表現できる

そして、特に測定値を表す場合に、その数値の有効数字(不確かさがどの桁の程度か、ということ)をわかりやすく表現することができます。

例えば「有効数字3桁の3200」という数値を単に3200と表記すると、下2桁の0が意味のある0なのか、単に位取りのための0なのかを識別することができません(「有効数字2桁の3200」や「有効数字4桁の3200」と区別がつきません)。その数値を 3.20×103と表記することで、十の位の0までが有効数字である(数十程度の不確かさを持つ)ということをスマートに表現できます。

科学的表記を使わなくてよい場合

逆に言うと、前節で述べた2つの効果がいずれも見込めない場合には、わざわざ科学的表記を使う必要がありません。
例えば 280.0 という表示は、それ自身で数値の大きさや有効数字を適切に表現できています。科学的表記を用いて 2.800×102 と表示しても特段わかりやすくなったとは感じられません(ただし、何桁だと大きさがわかりにくいかという感覚には個人差があります)。このような場合には、科学的表記を使う必要はありません。

関数電卓で科学的表記を使う

学生実験においてほぼ必須の関数電卓ですが、当然ながら科学的表記による入出力に対応しています。その方法を紹介したいのですが、これは別の記事(近日公開)で熱く語ることにします。