作:方軼羣、画:村山知義『しんせつなともだち』福音館書店

作:方軼羣、訳:君島久子、画:村山知義『しんせつなともだち』福音館書店

 

あたり一面が雪でまっ白な中、食べ物を探して外にでたこうさぎは、かぶを二つみつけます。

こうさぎはかぶを一つ食べ、もう一つはお腹を空かせているにちがいないろばさんにあげようと、友達のろばさんのもとに向かいます。ところがろばさんは外出中。こうさぎはろばさんの家にかぶを置いて帰りました。さてこのかぶは、友達から友達へと贈られていき・・・「しんせつなともだち」たちの思いやりが、暖かい読後感をもたらしてくれます。

 

挿絵はコラージュによるものではありませんが、この挿絵を担当した村山知義は1922年にドイツに滞在し、当時ヨーロッパ美術を牽引していたさまざまな運動の一つであるドイツ表現主義に接触しました。その折に、廃物などによるコラージュ作品(「メルツ絵画」)を手がけていた美術家クルト・シュヴィッタースに出会い、自身もいくつかのコラージュ作品を残しています。帰国後は前衛芸術家としてとくに演劇方面で活躍したほか、子供向け冊子の挿絵を手がけたりもしました。繊細なタッチで仕上げられた水彩による挿絵ながら、雪をかぶった野原や木々、そしてこうさぎのコートなどに見られるやや単純化されたフォルムの扱いのうちに、あるいはまた鮮やかな色調の対比のうちに、20世紀前半のモダニズムアートの雰囲気が漂います。