遅ればせながら、今年は子年ということで――
風の子フーとひめねずみのお話です。
暗い冬の空のもと、風の子フーは「さむさむさむ・・・・・・」と震えています。なにかあたたかくなるものはないかな、と探していたところ、目にとまったのは家の窓からチラッとのぞいたオレンジ色の炎でした。ストーブです。次の日、「くまストーブ店」にやってきたフーは、たくさんのストーブの中から、ガラスでできた美しいストーブを選んで買いました。そのストーブは、もようのついたあついガラスでできていて、ともされた火が外がわからわずかに見えるようになっています。
フーはストーブをぶらさげて、暗い森の中に入ると、黄色い油をストーブに入れて、マッチをすりました。その火はストーブにぼあっとうつりました。フーはしずかに燃えるストーブにあたりながら眠ってしまいます。
すると、カサリ!という音がして、風の子ははっと目をさましました。ストーブの向こうにいたのは、小さくて足の短いひめねずみでした。ひめねずみも寒かったのです。「さむいんなら、少しあたっていってもいいよ」とフーはひめねずみにすすめます。二人は話し出しました。するとひめねずみは、ストーブにやかんをかければお茶がのめること、そしておなべをかければごちそうが作れることを提案します。やっと友達ができたフー。それから、フーとひめねずみはいっしょに暮らしはじめました。
いく日かすぎた頃、お客さんが空からやってきます。それはオーロラという名前の風の子でした。彼女は遠い日のくれない国からやってきたと言います。オーロラの話を聞きながら、「日のくれない国」に好奇心を抱いていくフー。
フーとひめねずみの暮らしに変化の時がやってきます。
フーは長い旅の果てにふたたび森に戻ります。すっかり大人になったフー。森のストーブとひめねずみはどのようになっていたのでしょうか。――大人になることが少し切なくなる、静かに染みていくお話です。
降矢ななによる挿絵が、物語の包み込むようなあたたかさと、そして一抹の寂しさとを、美しく繊細に描き出しています。はっとするような美しい色彩が、ページ毎に目の前に広がります。
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