絵・文:クリス・ヴァン・オールズバーグ、訳:村上春樹『急行「北極号」』あすなろ書房

絵・文:クリス・ヴァン・オールズバーグ、訳:村上春樹『急行「北極号」』あすなろ書房

 

クリスマス・イブの夜中、少年はベッドのなかで、サンタのそりの鈴の音が聞こえてくるのをじっと待っていました。ところが、夜が更けて聞こえてきたのは、しゅうっという蒸気の音と金属のきしむ音だったのです。少年の家の前には汽車ととまっていました。それは、急行『北極号』でした。少年は車掌にひっぱりあげられて汽車に乗り込みます。

北極号が目指していたのは森と山を越えた世界のてっぺんにぽつりとある「北極点」でした。そこは大きな街で、たくさんの工場があります。すべてのクリスマスのおもちゃはこの工場で作られているのです。街のまん中にはこびとたちが集まっていました。なんとそこでは、クリスマスプレゼントの第一号をサンタが子どもたちのうちの一人に手渡すことになっていました。――この後、少年を待ち構えていたのはどんな出来事でしょうか。

 

壮大な雪の景色、クリスマスのイルミネーションが灯る北極点の街、そしてクリスマスの朝のツリーの下での出来事――クリスマス・イブの夜に少年の身に起きたスリリングでファンタジックな出来事がクリス・ヴァン・オールズバーグの繊細な筆によって展開されていきます。

 

子どものころクリスマスに抱いていた夢が詰まった一冊です。大人には聞こえない鈴の音のエピソードの余韻が止まない。

 

1986年 コルデコット賞受賞