はやく大きくなりたかった「もみの木」は、次々ときりたおされては持って行かれる仲間のもみの木たちがうらやましくてたまりません。もう大分大きくなった頃、「もみの木」は仲間たちの行方をすずめに尋ねます。するとすずめは、部屋の中で金のリンゴやおもちゃやろうそくで飾られているもみの木の様子を教えてくれました。それを聞いた「もみの木」は、広い森のなかにいる幸せを説いて聞かせるおひさまの言うことも耳に入らず、自分にもそんなことが起きないかなぁ、とうらやましがります。
その年の冬、「もみの木」はついに切られることになりました。
そうして、りっぱなクリスマスツリーになった「もみの木」ですが・・・。
「もみの木」の立場からとらえた本当の幸せとは何か――クリスマスの賑わいをよそに、他者の存在について問いかける、重厚な物語です。
せなけいこのあたたかな色調の切り絵と紙のやわらかな質感が、切なくもやさしい余韻を伝えます。