「みんなのコンサート」第9回 プログラムと曲目解説

 

2022年11月21日(月)10:30開演(10:00開場)
弘前市民文化交流館ホール(ヒロロ4階)

出演:工藤千尋(フルート)、宮本香織(ピアノ)
近代フランスの音楽

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1.J. S. バッハ(1685-1750)=グノー(1818-1893):《アヴェ・マリア》(1859)

 バッハの《平均律クラヴィーア曲集》第1巻第1番に、フランス人のグノーがラテン語の祈りの言葉「アヴェ・マリア」の歌詞と旋律をつけました。しかし実は、バッハの原曲より1小節増えています。バッハの斬新なコード進行を、音楽理論上の「誤り」だと誤解した19世紀の理論家シュヴェンケが、23小節目に「正しい」和音を挿入して出版したのでした。グノーはその楽譜を元に作曲しました。

2.シュテックメスト:『華麗なる幻想曲』作品17(1875頃)より
《メンデルスゾーン〈歌の翼に〉による幻想曲》

 作曲家ヘンリー・シュテックメストの生涯や創作については、あまり研究が進んでいないため、詳しいことが分かっていません。
 『華麗なる幻想曲』には、同時代の作曲家の歌曲をフルートとピアノの二重奏のために編曲した作品が5つ、納められています。特に、その第1曲《メンデルスゾーン〈歌の翼に〉》は、楽器の特性を余すところなく引き出す作品として、フルート奏者には欠かせないレパートリーとなっています。なお、「幻想曲」とは、原曲から自由かつ大胆に発想・変奏する、というほどの意味合いです。

3.ビゼー(1838-1875):《アルルの女》第2組曲(1879)より第3曲〈メヌエット〉

 ビゼーは19世紀後半のフランスの劇音楽の作曲家です。「アルルの女」は恋に身を滅ぼす男の物語で、ビゼーは戯曲の上演のために27の曲を作りました。「組曲」とは、その中からコンサート用にまとめたものです。ただし、第2組曲はビゼー自身ではなく、作曲家の死後に別の音楽家が抜粋・編曲しました。そしてこの〈メヌエット〉は、《アルルの女》ではなくビゼーの《美しいパースの娘》というまったく別のオペラの中の一曲でした。
 現在では、原作や原曲とはまったく独立したフルートの名曲として広く知られています。

4.J. ドンジョン(1839-1912):『4つのキャラクター・ピースより』
《ナイチンゲール》作品8(1879頃)

 作曲家ヨアンネス・ドンジョンは、19世紀半ばのフランスのフルート奏者です。パリのオペラ座と音楽院のオーケストラに所属し、名手として活躍しました。
 ナイチンゲールは、日本にはいませんが、ヨーロッパに生息するスズメの一種です。日暮れ以降も鳴く習性があり、「ナイチンゲール」という言葉は「夜に鳴く者」を意味します。その鳴き方は多様で、カッコウのような決まったパターンはありません。また、声のよい人、歌のうまい人、などの代名詞という点で、日本語の「ウグイス」と同じような意味合いを持っています。

5.ドビュッシー(1862-1918):《子どもの領分》(1908)より 
第6曲〈ゴリウォーグのケークウォーク〉 ※ピアノ独奏

 ドビュッシーは、19世紀後半のフランス音楽に新たな道を拓いた作曲家。《子どもの領分》は生まれたばかりの一人娘シュシュに献呈された曲集です。
「ゴリウォーグ」は、イギリスの児童文学に登場する黒人のこども。ケークウォークはアメリカの黒人音楽のダンスの一種で、のちにジャズに結びつきます。つまり、当時に流行していたキャラクターが軽快に踊る様子がこの曲のテーマとなっています。
 中間で雰囲気が変わる部分では、ヴァーグナー《トリスタンとイゾルデ》の冒頭が引用されています。ドビュッシーは若い頃にヴァーグナーに熱狂しましたが、のちにその音楽の影響を免れ、まったく違う響きに向かいます。この曲でそうした自身の過去を振り返っているのかも知れません。

6.ドビュッシー:《子どもの領分》(1908)より 第5曲〈小さな羊飼い〉

 ドイツ人のヴァーグナーが活躍した頃からクラシック音楽は多様化し、とくにフランスでは従来のコード進行を敢えて避け、古い時代の音階やヨーロッパ外の音楽も参照して、新しい響きが模索されました。(その背景には、普仏戦争でドイツに敗れ、フランスのナショナリズムが高まったこともあります。)
〈小さな羊飼い〉は半音階を多用し、不安定で転がり続ける主題が特徴です。オリジナルはピアノ曲ですが、フルートで演奏すると、羊飼いの葦笛のイメージにぴったりです。

7.ドビュッシー:《夢》(1890)

 作曲家の若い頃の作品。オリジナルはピアノ曲ですが、フルートやハープなどさまざまな楽器用に編曲され親しまれています。
〈小さな羊飼い〉とは異なり、半音階がほとんど出てきません。主題は1オクターブの中で5つの音だけを使っています(ねぷた囃子など日本の民謡の音階とも少し共通点があります)。

8.シャミナーデ(1857-1944):コンチェルティーノ 作品107(1902)

 性別を理由にパリ音楽院への入学を許されなかったシャミナーデは、音楽院の教授たちに個人的にレッスンを受けて研鑽を積み、作曲家、ピアニストとして活躍しました。そして1902年、35歳のとき、ついに音楽院から作品を依頼され、《フルートのためのコンチェルティーノ》を発表します。さらに1913年には女性の作曲家として初めてレジオン・ドヌール勲章を授与されました。彼女の才能は、たとえ音楽院の入学規程がどうであれ、明らかだったのです。
 この《コンチェルティーノ》は8分ほどの小品ですが、主題が少しずつ姿を変え、素朴で優しい旋律が最後は雄大さを感じさせるまでに展開します。また主題前半は不協和音を生じない5つの音から成り、フランスの作曲家たちが模索した近代的な響きがこの作品にも活かされています。

皆様のご来場をお待ちしています!

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