文:日野十成、絵:斎藤隆夫『かえるの天神さん』福音館書店

文:日野十成、絵:斎藤隆夫『かえるの天神さん』福音館書店

 

学問の神様として有名な菅原道真の生涯とその死後の怨霊譚を、カエルの「ミチザネさん」の絵物語として語る絵本!

挿絵は平安時代以来の日本の絵巻物に特徴的な「吹き抜き屋台」の構図で俯瞰的に室内を描いたり、雲のような「すやり霞」を導入して時間と空間の隔たりを示したりするなど、まさしく伝統的な手法で描かれています。鎌倉時代に遡ると考えられる《北野天神縁起絵巻》の世界が目の前に広がります。

とはいえ、人をカエルに置き換えることで、本来は都から筑紫の国に流された悲しい生涯や、死の直前に天神となった道真の怨霊に引き起こした恐ろしい祟りの顚末が、なんともコミカルな様相を呈しているさまは、「さすがに21世紀の絵本!」と、思わず笑いがこみあげてきます。

 

昔ながらの絵巻物の描写法に触れつつ、道真の生涯を楽しく追うことのできる絵本です。

最後、北野天満宮に咲き誇る梅の花の描写が美しく、春に向かうこの季節の華やぎを伝えます。

 

※この投稿の画像は、出版社が一般に掲載を許可している範囲内のものです。無断転載はご遠慮ください。