秒の定義
国際単位系における時間の単位である「秒」の定義については,例えば Wikipedia 等を参照されたい。
国際単位系における秒の定義を受けて,日本の計量単位令(平成四年政令第三百五十七号)では,別表第一(第二条関係)の三に秒の定義として「セシウム百三十三の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の九十一億九千二百六十三万千七百七十倍に等しい時間」とある。
大事な点は,セシウム原子時計であるとかストロンチウム光格子時計であるとか,いろいろあるにせよ,ある特定の光(電磁波)の周期の定数倍を1秒として定義していることである。
光の周期は振動数に反比例する。したがって,1秒とは特定の光の振動数の逆数を定数倍したもの,と言える。
我々が採用する時間の進みの定義
我々は,特殊および一般相対論的状況において,時間の進み方の定義として以下を採用することにする。
4元速度 \(\boldsymbol{u}\) の観測者が測定する時間間隔 \(\varDelta \tau\) (座標時間間隔 $\varDelta t$ と区別するため,固有時間 $\tau$ を使い,$\varDelta \tau$ を観測者が測定する「固有」時間間隔とする)は,4元ベクトル \(\boldsymbol{k}\) で表される特定の光(電磁波)の振動数 \(\omega\) に反比例する。
$$ \varDelta \tau \propto \frac{1}{\omega}, \quad \omega \equiv – \boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{u}$$
特殊相対論における大域的慣性系の構築
別ページにて示したように,特殊相対論においては,4元速度の成分が \(u^{\mu} = (1, 0, 0, 0)\) である静止観測者が観測する光の振動数 \(\omega\) は常に一定である。
したがって,光の振動数に反比例すると定義した時計の進みも,すべての静止した時計で全く同一である。全空間を伸び縮みしない完全剛体の物差しを格子状に貼り,その講師展の各点に,全く同じように進むこのような時計を設置することによって,全時空を覆う大域的慣性系を構築することができる。
空間座標の各格子点に固定された時計は,全く同じ進み方をすることは,振動数 \(\omega\) が場所によらず一定であることによって保証される。
重力場中の時間の進み方の違いの予感
「重力赤方偏移」のページで書いたように,静止観測者が測定する光の振動数は,重力場中ではもはや一定ではなくなり,場所に依存するようになってしまう。そうすると,特定の光の振動数に反比例するとして定義された時間の進みも,場所によって異なることになってしまう予感が…