Return to 参考:ニュートン力学における万有引力の2体問題

補足:楕円とは

楕円の定義

「楕円とは,2定点からの距離の和が一定となるような平面上の点の軌跡である。」この定点のことを(笑点ではなく)焦点という。

この定義から,楕円の方程式が以下のように表されることを示しておく。

楕円の中心を原点としたデカルト座標で表した楕円の方程式の標準形

楕円の中心を原点としたデカルト座標 \(X, Y\) では以下のように表されることを示す。

$$\frac{X^2}{a^2} + \frac{Y^2}{b^2} = 1$$

まず,2つの焦点を \(X\) 軸上におき,\(F(c, 0), \ F'(-c, 0)\) とする。(\(c > 0\))点 \(P\) の座標を \((X, Y)\) とすると,題意から

\begin{eqnarray}
PF + PF’ &=& \mbox{const.} \equiv 2 a \\
\sqrt{(X-c)^2 + Y^2} + \sqrt{(X+c)^2 + Y^2} &=& 2a \\
(X+c)^2 + Y^2 &=& \left\{2 a –  \sqrt{(X+c)^2 + Y^2}\right\}^2\\
&=& 4a^2 – 4a\sqrt{(X+c)^2 + Y^2} + (X+c)^2 + Y^2\\
\therefore\ \ \sqrt{(X-c)^2 + Y^2} &=& a – \frac{c}{a} X \\
(X-c)^2 + Y^2 &=& a^2 – 2 c X + \frac{c^2}{a^2} X^2\\
\left(1 – \frac{c^2}{a^2} \right) X^2 + Y^2 &=& a^2 – c^2\\
\therefore\ \ \frac{X^2}{a^2} + \frac{Y^2}{a^2 – c^2} &=& 1
\end{eqnarray}

ここで,\(b^2 \equiv a^2 – c^2\) とおけば

$$\frac{X^2}{a^2} + \frac{Y^2}{b^2} = 1$$

なお,\(a > c\) であることを仮定して \(b^2 \equiv a^2 – c^2\)  とおいたが,この状況で導かれた楕円の方程式の標準形から以下のことがわかる。

$$ -a \leq X \leq a, \quad -b \leq Y \leq b$$

つまり,\(a > c\) すなわち \(0 \leq e < 1\) という仮定は,運動が有界であること,言い換えれば運動が束縛状態にあることを仮定していることになっている。

$$\sqrt{(X-c)^2 + Y^2} + \sqrt{(X+c)^2 + Y^2} = 2a$$が\(X = 0\) のとき,\(Y \neq 0\) であるという条件から

\begin{eqnarray}
2 \sqrt{c^2 + Y^2} &=& 2 a \\
\therefore\ \ c < a
\end{eqnarray}

\( a > b\) の場合に \(a\) を長半径,\(b\) を短半径という。

また,焦点の座標にあらわれる定数 \(c\) を中心から(長半径との比で)どの程度ずれているかを表す離心率 \(e\) を定義して以下のように書く。

$$c = a e, \quad 0 \leq e < 1$$

すると,短半径 \(b\) は

$$b = \sqrt{a^2 – c^2} = a \sqrt{1 – e^2}$$のようにも書ける。

楕円の焦点の1つを原点とした極座標で表した楕円の方程式

ケプラーの第1法則にいみじくも表されているように,天文学で出てくる楕円の式といえば,こっち。

楕円の焦点 \(F\) を原点とした極座標を \(r, \phi\) とすると,

\begin{eqnarray}
X &=& c + r \cos\phi = a e + r \cos\phi \\
Y &=& r \sin\phi
\end{eqnarray}

これを楕円の方程式の標準形に代入して

\begin{eqnarray}
\frac{(ae+r\cos\phi)^2}{a^2} + \frac{(r \sin\phi)^2}{a^2 (1 – e^2)} &=& 1
\end{eqnarray}

展開すると \(r\) について2次方程式となり,因数分解できて

\begin{eqnarray}
\left\{ (1+e\cos\phi) r – a(1-e^2)\right\} \left\{ (1-e\cos\phi) r + a(1-e^2)\right\} &=& 0
\end{eqnarray}

\(r > 0\) であるから解は

$$r = \frac{a(1-e^2)}{1+e\cos\phi}$$

なので,今後はこの式を見たら,あっこれは長半径 \(a\),離心率 \(e\) の楕円だ!と脊髄反射するように。

別解

なお,学生さんの解答をみていると,\(r\) の2次方程式にする上記のやり方だと因数分解ができなかったり,解の公式を使おうとして計算ミスをしてしまうケースも多々見かける。別解として三角形 \(FPF’\) に対する余弦定理を使う例。

焦点 \(F\) を原点とした極座標を \(r, \phi\) としているので,\(FP = r\),\(FF’ = 2 ae\)。また,\(PF’ = r’\) とすると,余弦定理と楕円の定義から

\begin{eqnarray}
(r’)^2 &=& r^2 + (2ae)^2 – 2 r \times (2ae) \times \cos\left( \pi – \phi\right)\\
r’ + r &=& 2 a \\
\therefore\ \ (2a)^2 – 4 a r + r^2 &=& r^2 + (2ae)^2 + 2 r \times (2ae) \times \cos \phi \\
r \left(1 + e \cos\phi \right) &=& a (1 – e^2)
\end{eqnarray}

となり,$$r = \frac{a(1-e^2)}{1+e\cos\phi}$$