前回に続き、第2回では数物科学科の「基礎物理学実験」を取り上げます。この科目は前期にI、後期にIIが行われています。
従来(対面授業)の実施形態
- 15題目を実施。
- 各受講者は、半期で6~8題目の実験を行う(2題目セットで1題目扱いのものがあるが、以下ではそれに触れない)。
- 1題目を2週で行う。
- 実験レポートは2週目の授業時間内に提出する。その際には、TAと教員による2段階のチェックを受ける。
- TAチェックでは、レポートの書式や測定データの妥当性などを中心にチェックする。
- 教員チェックでは、主に考察の内容について議論を行う。
- 技術職員も、(待ち行列の状況により)TAチェックを分担することがある。
2020年度前期(メディア授業)の実施形態
前回も述べたように、本学では前期は原則として全ての科目をメディア授業(オンライン授業)として行うことになりました。早々にメディア授業として実施する対応が行われ、大学としての授業開始第1週に科目ガイダンスを行うことができました。
- 7題目を実施。うち2題目をセットにしているので、見かけ上は6題目を実施する。
- 1題目を2週で行う。全受講者が共通の題目を行う。
- 第1週は、実験内容の説明や演示実験を収録した動画を視聴する。さらに、そこで得た実験ノート等を参照して、測定値の処理を行う。
- 演示実験や動画の作成(撮影・出演・編集)は、TAが担当する。これは、原則としてその題目を行う2週前(受講者が前の題目の第1週を受講している時間)に行う。
- 実験データを実験ノートの形で見せる。これは、実験ノートの使い方の見本とする意図もある。
- それらの本編とは別に、より深い考察を求める学生に向けて、技術職員が独自にコンテンツを提供することもある。
- 第2週は、従来と同様に、TAと教員による2段階のチェックを受ける。
2020年度後期(対面授業+メディア授業)の実施形態
後期については対面授業としてスタートしましたが、結果的にメディア授業とのハイブリッドという形になりました。
対面授業
本科目も対面授業として実施するということで、従来の形態でスタートしました。前期に行わなかった8題目をローテーションで行います。
感染症対策として以下の措置をとりました。
- 実験室入り口の扉や窓を開放し、換気を行う。
- 秋~冬季ということで外気との換気を行うと室温が下がるため、例年より暖房を強めにする対応を行ったつもり。
- 可能な限り実験装置を減らして、受講者間の間隔を確保する。
- 特に「検糖計」「スペクトル」については、最大2人の割り当てとする(光学系の実験題目は暗室で行うため、換気が不十分になる可能性があることに加えて、メディア授業用の教材を提供しにくいという理由で後期に集中的に行うことになり密集が生じやすい状況であった)。
- レポートチェックの際に待ち行列ができないようにTeams上で並び順を管理し、チェックを受ける受講者は順番が来た時点で初めてチェック担当者のところに行くようにする。
メディア授業
弘前市周辺における感染症の広がり(またはその予防)のために、メディア授業で行うことになった期間がありました。
それぞれ総合型選抜入学試験と大学入学共通テストを控えていた期間ということもあってのメディア授業対応だったのでしょう。これらの期間については、以下のような対応を行いました。
- 期間1については、2週目に行うレポートチェックを前期と同様のオンラインで行った。残りの2回は休講とした(1月後半の予備日で補充した)。
- 期間2については、1月に入ってから行う予定であった実験の第1週を、12月に行う予定であったレポートチェックの回と交換した(12月末時点では第1週だけ行った題目が2つあり、期間2の2回でそれぞれの第2週を実施した、ということ)。
ということで、都合3回分のレポートチェックをオンラインで行うことになりました。ただし前期とは違って受講者によって題目が異なるので、チェックを行うTAとしては大変だったかもしれません(前期は全受講者共通の題目を行っているので、各回毎に1つの題目だけを把握しておけば対応できた)。
所感
メディア授業
動画コンテンツの作成はTAがほとんど全ての作業を行いましたが、特に編集のクオリティは高かったと思います。イマドキの大学院生にはこういうスキルを備えている人がゴロゴロいるのでしょうか、と感心しました。
初回の「重力加速度」の際に、ノギスで測った値の単位を誤って記録するというトラブルがありました。私は以下の理由から、あえてそのままにしておくのがいいのではないかと考えました。
- その値を用いると、重力加速度として想定される値から大きく外れた値が得られ、何らかの「誤り」があったことが明確である。
- 他の長さとのバランスから、この測定値が不自然であることが明確にわかる。
- メディア授業として行う実質的な初回にあたって、動画を漫然と視聴していては見落とす可能性があるという注意喚起の効果がある。(このような学生実験において観察力を養うことは、実験操作や測定結果の処理を身につけるのと同様に重要なことである、という考えに私は染まりつつあります。)
ただ、何かのタイミングで教員にその誤りがある旨を伝えたら、「これは訂正した方がいい」ということになりました。う~ん、私がイヂワルな人のようになってしまいましたね。
対面授業
他科目の動向も踏まえて、装置台数を間引きできるものはそのようにして、受講者間の間隔を確保することにしましたが、それがやりにくい題目もあり、そういうものは従来通りの配置をしていました。そのまま何も言わずにいると、受講者が密集しがちな傾向が見られました。前期に会えなかった分、接触に飢えていたのでしょうか。社会的距離の確保については、その都度促す必要がありました。
別の科目では終了後に使用した装置の消毒などを行っていましたが、本科目では特にそのような作業は行っていません。通常のカレンダーではこの科目を水曜日に行った後は翌週までこの部屋での授業がないので、それで問題ないと考えることもできるのでしょうか。