【昔話】微動計測中に地震が発生した(1)

私は地球環境(防災)学科「応用物理学実験」の題目「微動計測」の指導補助業務を担当しています.常時微動を学内(たまに学外?)の何カ所かで測定し,場所による違いを見る(そしてその違いが生じる原因を考察する),というものです.この業務を担当して10年以上になりますが,この実験中に常時微動とは言えない地震を観測したことが少なくとも2回あります.その1回目の事例を報告します.

2011年8月23日

それは2011年のことでした.この年は東日本大震災の影響で授業開始が5月だったため,こんな時期にも授業があったのでした.1号館109室あたりのトイレ前での測定において,それは見られました.ちなみに当時は感熱紙に直接印刷するタイプの記録計を使っていました(写真撮影のクオリティが低いのはご容赦下さい).

常時微動と初期微動

3本の信号線は振動の方向(紙の上から上下動,北南動,東西動),縦軸は地動速度に対応していますが,左半分と右半分で振動の様子がまるっきり異なっています.左半分が常時微動で,右半分は地震の初期微動に対応するものと考えられます.

主要動

続いてその後の主要動の波形です.スケールは初期微動のときと同じですが,振幅が大きく,周期が長くなっています.これらの波形を見たときに,地震が起こったのではないかと気がつきました(そういえば,近くを通りかかった同僚職員から地震があったという話を聞いた記憶があります).

このときの震度分布は次のようになっていました(気象庁の震度データベース検索より引用).

震度分布

青森県内でも震度1に達しているのは八戸周辺や下北半島ぐらいですので,弘前では無感地震だったと言っていいでしょう.そういう地震でも地震計はキャッチするというのは当たり前なのですが,その事実を目で確かめること,そして無感地震と常時微動の振幅の違いを実感することができたという点では,貴重な機会だったと思います.