関数電卓fx-JP500CWの指数表示入力でハマった

今秋(2023年9月)に発売されたCASIOの関数電卓 fx-JP500CW の指数表示入力には落とし穴があるので気をつけましょう。

それではさっそく計算してみましょう。
この挙動はCASIO謹製のエミュレータであるClassicWizClassWiz Calcアプリで確認したものです。実機で確認していないことを不満に思う読者もいらっしゃるかもしれませんが、実機の挙動を評価するのも評価版としてのエミュレータの一つの役割ではあります。

[3]→[×10]→[4]→[■2]→[=] と入力した結果です。
他の多くの機種(CASIOの従来機であるfx-JP500を含む)では,3×104 を2乗して 9×108 という値を返します。しかしfx-JP500CWでは、2乗が指数表示された値全体にかからず、4だけにかかっています。演算の優先順位が従来機から変わっているということですね。数学的には自然に見えるかもしれませんが、すでに関数電卓に馴染んだ人にとってはこの出力にビックリするでしょう。
これは簡単な計算なのですぐに気が付きますが、計算がもう少し複雑になると気が付かないうちに意図しない計算をしていた、ということも出てきそうです。

今回発売されたfx-JP500CWを含む3機種はCWシリーズと位置づけられており、Approchableをコンセプトとした、初めて使う人にとっての障壁を下げることを目指したシリーズになっています。
型番的にも従来機を置き換えるもののようで、大学生協の店舗などでもfx-JP500CWを販売するところが増えているようです(弘前大学生協の購買店でもそうでした)。学生実験などの指導者サイドの人々にとっては思わぬところでこの仕様変更に直面することになるかもしれませんので、注意が必要です。
CWシリーズは従来機とは別のラインナップとして発売して欲しかったなぁ…

参考

fx-JP500CWのレビューとして、関数電卓マニアの部屋を挙げます。私の感想も同サイト(遠藤教授)のレビューと一致します。理工系大学での教育に関係している人はおおよそ同じような感想を抱くのではないでしょうか。

→【2026年4月追記】「関数電卓マニアの部屋」のページが消滅してしまった(東海大学が受けたランサムウェア攻撃が関係していると推測します)ので、アーカイブから引用しておきます。

更に,これが決定的に問題なのだが,[x10x]の乗算記号の優先順位が掛け算と同じになった.数学的に厳密なことを言えば正しいのだろうが,関数電卓の表記としては「間違い」と言ってよい.
【中略】
私は,このルールを関数電卓の標準にしようと考えるCASIOの目論見を強く危惧する.

関数電卓の[x10x]は「10のn乗」ではなく,浮動小数点表記の仮数と指数を区切る記号で,これらは最も強い結合でなくてはならないというのが私の主張だ.CASIOの古い機種,SHARPの現行機種ではこの区切りは「E」と表記されるが,これが正しい.

まとめよう.大学で物理,化学,工学を学ぶ学生にこの電卓は勧めない.少なくとも,自分が指導する学生には,もっと強く「買うべきでない」と言うだろう.

蛇足

これは別の記事をリライトした記事になります。もとの記事は意見をもう少し強めに表明していたのですが、変なアクセスが増えたため非公開としました。